ターゲット広告の終わりの始まり。EUが「SNSにおける個人情報の半強制的な収集」を禁止へ

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  • author Thomas Germain - Gizmodo US
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ターゲット広告の終わりの始まり。EUが「SNSにおける個人情報の半強制的な収集」を禁止へ
Image: Sergei Elagin (Shutterstock)

EUの規制当局が、Metaの強制的な個人情報収集を禁止する決定を下しました。

私たちは、SNSなどでネットやアプリを利用するとき、パーソナライズされたターゲット広告という利便性を理由に個人情報が収集されることを、なかば当たり前のように思っています。でも、よく考えれば、そんな条件を押し付けられるいわれはないのかもしれません。また、ターゲット広告という形態そのものが、この時代には限界に来ているとも言えそうです。


Metaが運営するソーシャルネットワークFacebookInstagramでは、いわばターゲット広告と引き換えに個人情報を差し出すことが参加の条件になっています。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルロイターの報道によると、個人情報の保護をめぐる欧州連合(EU)の規制当局は、Metaがそのような条件を指定することはできないという決定を下したとのことです。この決定は、ソーシャルメディア最大手であるMetaのビジネスモデルを根こそぎにする可能性があり、インターネットを支える財政基盤すら覆しかねません。

EUのGDPR違反

FacebookやInstagramにサインインするときは、プライバシーポリシーを確認したうえで、各SNSが広告を目的としてデジタル情報を監視することに同意する必要があります。同意しない限り、アカウントは作成できません。しかし、欧州各国の規制当局で構成される欧州データ保護会議(EDPB)が12/5に発表した一連の決定では、こうした強制的な同意が一般データ保護規則(GDPR)、つまりEUの全域に及ぶ個人情報保護法に違反していると結論されたということです。

FacebookやInstagram、WhatsAppにおけるデータ収集の合法性について、拘束力のある決定に至ったと、EDPBはプレスリリースで発表しました。その決定の内容までは公開されませんでしたが、翌12/6には詳細が報道機関には漏れ伝わっています。

SNS企業だけでなく広告会社にも影響

この決定の影響を受けるのは、ソーシャルメディアの巨人Metaだけではありません。ターゲット広告を提供する企業はどれも、同じような仕組みを利用しているからです。インターネットの別の場所から取得されるデータがSNS上の広告に利用されるのをオプトアウトできる、つまり拒否できる場合は今でもあります。しかし、今回の決定は、各社自身のネットワーク上で収集されたデータを使うことまで制限しようとしています。オンラインでのプライバシーの扱い方を大きく変えるものになりそうです。

「EU規制当局によるこの決定は、もし承認されれば、欧州におけるMetaの収益に大打撃を与える。同社がターゲット広告を販売するたるめに同社プラットフォーム上のユーザーの活動に関する情報を利用している仕組みも、掣肘を受けることになる。一方、Metaとしてもビジネスを守るために断固とした対応に出ると予測される。実際に何らかの影響が見られるまでに、数年とは言わないまでも、数か月はかかるだろう

Insider Intelligenceの主任アナリスト、Debra Aho Williamson氏はこう分析しています。

Metaは上訴する?

今回の決定に関して、Metaからのコメントは届いていません。

今回の決定によってMetaが今すぐ対応の変更を迫られるわけではありません。この決定を受けて、アイルランドのデータ保護委員会が1か月以内に特別命令を出すことになっており、そこには相当額の罰金も含まれそうだとロイターは報じています。一方のMetaも今回の決定について上訴すると見られており、その争いが続く間は、現状が維持されそうです。

とはいえ、今回の決定のなりゆき次第で、Metaとその子会社はユーザーの適切な同意を得てからでないと、個人情報をまるまる収集したうえで広告という形にするという業態はとれなくなるかもしれません。そのときいったいどうなるのか、今はまだ不明です。

オンラインのトラッキングを許可する(そのうえでサイトやアプリを使用する)かどうかという選択肢を示されたら、人はノーと言うものです。Appleは2021年に、アプリでユーザーをトラッキングする場合は事前に許可を求めることを義務づけるというプライバシー設定を発表しました。「Appにトラッキングしないように要求」と表示される機能です。大多数のユーザーはそのオプションを選ぶ、つまりトラッキングを許可しないので、その影響でMetaのビジネスは急降下しました。Appleのプライバシー設定が変わったことだけで、100億ドルの損失があったとMetaは話しています。Metaに対抗するEUの決定はMetaの財政危機を招く可能性がありますが、同社の株価は今年に入ってすでに大幅に下落しているのです。報道があった7/6、Meta株の終値は6.79%下がりました。

ターゲット広告以外にいい収益方法がないテック業界

しかも、今回の決定の重大さは、Metaにとどまるものではありません。GoogleやTikTokなどの大手企業から、もっと小さい企業まで、多くは同じような法的モデルを採用しています。「ターゲット広告に同意せよ、同意できないならよそへ行け」です。EUの決定が、欧州でどのくらいの範囲まで適用されるかはわかっていませんが、オンラインビジネスの根幹的なモデルのひとつが崩壊することも考えられます。

テック業界には公然の秘密があります。無数の企業、アプリ、Webサイトが、データを集めてターゲット広告を打つ以外の収益方法をいまだに見いだしていないことです。個人情報を利用しなくても、「コンテキスト」広告、つまりユーザーが見ているコンテンツに基づく広告を示すことはできます(車についての記事を見ているときに表示されるホンダの広告などがそうです)。しかし、コンテキスト広告は、個人情報に基づいてカスタマイズされる広告より安いため、広告営業に頼る企業にとっては収益性が高くないのです。

EUの決定は、EU圏で事業を営んでいる企業に対して直接的な影響を及ぼすだけではありません。個人情報に関して、各国政府の意見を最終的に変えさせる可能性も秘めています。これまでにも、個人保護に関する法律はビジネス界にとってデータ処理が煩雑になる方向で可決される傾向にありましたが、ターゲット広告を縮小させる方策が、今回ほど大きな機関のレベルで決定されたのは初めてのことです。

そして、米国でも全世界でも、GDPRは個人情報保護法の見本になっています。今回のように厳格な法解釈が順調に進めば――誰にとって順調かはさておき──さらにプライバシーが守られる未来が待っているかもしれません。

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