再エネ移行に必要な鉱物の半分以上が先住民の土地にあるらしい

  • 10,429

  • author Molly Taft - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …
再エネ移行に必要な鉱物の半分以上が先住民の土地にあるらしい
ペルーのアヤビリで鉱山労働者の労働環境に抗議する人たち。彼らも先住民族である
Image: Paulo de Abreu / Shutterstock.com

そしてまた歴史は繰り返される…のか?

リチウム、コバルト、ニッケル。脱化石燃料を果たすべくクリーンエネルギーへの移行が加速する中、これらの鉱物が今後ますます必要になるのは火を見るより明らかです。リチウムの価格が2022年に123%上昇するなど、鉱業の収益性は飛躍的に高まっています。でも、何も考えずにむやみやたらと採掘してしまうと、世界で最も弱い立場にある人々が、リスクを背負わされる恐れがあるそうです。

エネ転換に必要な資源の半分以上が先住民の土地に

Nature Sustainabilityに掲載された新しい研究結果によって、エネルギー転換に不可欠な天然資源の半分以上が、先住民の暮らす土地もしくはその近隣に存在していることが判明しました。分析結果は、天然資源の採掘がいかに先住民や農民の生活を脅かし、彼らが抱える問題を悪化させるかを示す重要な事例になっています。先住民が守ってきた土地は気、候変動対策においても重要な役割を果たしているのに、その環境と先住民の生活を壊してしまったら意味がありませんよね。

今回の研究では、エネルギー転換に必要な鉱物の採掘パターンに焦点を当て、電気自動車用バッテリーや太陽光パネルなどの製品に使用されている約30種類の鉱物と原材料をリスト化しました。そして、5,000以上の現在進行中または計画中の採掘事業のデータセットを作り、先住民や農民の居住地または何らかの形で管理している地域と照らし合わせました。どれくらいの鉱物採掘事業が先住民や農民の影響力がある地域で行なわれているのかを分析したわけですね。

その結果、該当する採掘事業5,097件のうち、54%が先住民居住区またはその周辺で実施・計画されていることがわかりました。このうちの30%は先住民が直接管理保全している土地にあったそうです。先住民の土地に最も多く存在する物質はリチウムで、進行中および計画中のリチウム採掘事業の85%が、先住民が居住または管理する地域、もしくはその周辺に位置していることが明らかになっています。これ、先住民地域を狙ってないですか?

先住民が気候変動対策で果たす役割は大きい

先住民は、世界中の環境危機に直面している地域においてとても高い影響力を持っていて、気候変動との戦いでもリーダー的役割を果たしています。ある分析によれば、先住民は未開発の辺境地域を含む地球上の土地の30%を何らかの形で所有・管理しているそうです。そして、先住民の自然との関わり方は、気候変動に良い影響を与えるという研究結果も増えています。国連は、地球上に残された生物多様性の80%が先住民コミュニティーに委ねられていると推定しています。先住民は、世界で最も貴重な炭素吸収源と天然資源を保護する上でも不可欠な存在です。

資源採掘のために迫害される先住民

残念ながら、先住民地域では鉱業を含め行き過ぎた産業化が進み、彼らの生活は深刻な打撃を受け、土地の管理権すら奪われてしまっています。例を挙げると、アマゾンでの金や銅などの採掘のために広大な森林が破壊され、その影響は彼らの水や食べ物の汚染被害につながっています。採掘は、先住民と採掘業者や軍との対立を激化させる要因にもなっています。Global Witnessが10月に発表した報告書によると、2011年以降、週に3人が土地を守ろうとして殺害されており、そのほとんどが先住民なんだそうです。そして、殺害された人の4分の1は鉱業が原因。産業の中で最も多く殺人事件と関連していたのは、鉱業でした。

気候変動を止めるために対立ではなく協働を

世界がエネルギー転換を加速させる中で、児童労働や天然資源の破壊など、鉱業にまつわるさまざま問題が表面化しはじめています。先住民採掘業者の間では、争いがいくつも発生しています。悲しいことに、一部の環境テック推進派や急進的な気候変動対策を求める人々によって、これらの問題は気候変動時代のビジネスに必要な代償として軽く扱われがちなのだそう。気候変動の原因になる事業活動でも、気候変動対策のための事業活動でも犠牲にされてしまうなんて…。

気候変動による最悪の事態を避けるためには、世界の鉱物資源を活用して脱化石燃料を果たすほかないのは確かです。でも、今回のような研究結果は、広大な大地を産業化することで先住民をさらに置き去りにしてしまうことがないよう、時間をかけて慎重に判断を下す必要があることを示唆しています。論文の著者はEartherに対し、政策立案者がエネルギー転換をめぐる議論に、先住民の権利と土地管理を積極的に取り入れる一助になることを願っていると語っています。

論文では以下のように述べられています。

地域の事情や受けている圧力などが深く理解されない限り、気候変動対策の名の下に土地の産業化は加速度を増し、既存の問題をさらに深刻化させる危険性があります。エネルギー転換を進めるためにより多くの天然資源を採掘すれば、鉱業が社会と環境の持続可能性にとって大きな脅威になってしまいます。


先住民をはじめ、社会的弱者に気候変動や環境汚染の影響が偏る環境正義問題では、政策決定過程に当事者が加わって、その声が反映されるように時間をかけて話し合うことが重要なんですよね。気候変動が止まった社会でこれまでと同じ人たちが傷つくようなことになるのは避けなければいけません。

未来はまだ決まっちゃいない。IPCCの気候報告書「人類にとっての警戒警報」

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第6次報告書を発表。異常気象に対するアクションを起こすのには待ったなし。

https://www.gizmodo.jp/2021/08/now-is-the-time-to-take-action-against-extreme-weather-events.html