中性子星は、巨大な宇宙のナッツ入りチョコレート菓子みたいなもの

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  • author ByIsaac Schultz - Gizmodo US
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  • 佐藤信彦/Word Connection JAPAN
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中性子星は、巨大な宇宙のナッツ入りチョコレート菓子みたいなもの
比較的重い中性子星(左)と比較的軽い中性子星(右)の内部をお菓子のプラリネで表現したイメージ図 Image: Peter Kiefer & Luciano Rezzolla

宇宙物理学者が中性子星の内部をモデル化して研究したところ、この極めて小さな天体の内部構造は質量によって異なると判明しました。その内部構造は、あるお菓子にたとえられるのだそうです。ただし、似ているのは構造だけで、現時点ではそれ以上わかりません。

中性子星は、巨大な恒星が崩壊して作られる極めて密度の高い残骸で、宇宙においてブラックホールに次ぐ高密度の天体です。その内部では、原子の周囲を回っていた電子が重力の影響で原子核の陽子に押し込まれ、構成物質のほとんどが中性子になっているため、中性子星と呼ばれます。

重力が極めて強く、観察しようと近づいた人間の身体など、原子レベルに分解されてしまいます。あまりに重力場が強力なため、表面に「山」があったとしても、標高は1mmにもならないでしょう。

中性子星の内部がどのようなっているか観測したくても、とても困難です。理論的に研究するしかありません。そこで、先ごろある研究チームは、膨大な種類の中性子モデルを作って調査しました。

「ヘーゼルナッツを柔らかいチョコレートで包んだプラリネ」のよう

宇宙物理学に関する国際的な学術誌「The Astrophysical Journal Letters」の掲載論文によると、質量が太陽の約1.7倍以下という比較的軽い中性子星は、固いコアを柔らかいマントルが包む構造だとわかりました。そして、重い中性子星の内部構造は、その反対になっているそうです。

ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学フランクフルト・アム・マインの宇宙物理学者で、この研究を主導したLuciano Rezzolla氏は、この研究成果を発表したゲーテ大学の文書で次のように述べています。

「軽い中性子星は、ヘーゼルナッツを柔らかいチョコレートで包んだプラリネに似ています。一方、重い中性子星はもっとチョコレート菓子らしいと考えられ、柔らかい中身がチョコレートで固くコーティングされています」

モデルを使ったシミュレーションの結果

研究チームは、中性子星の想定可能な質量や圧力、体積、温度といったパラメーターと、実際の観測データを組み合わせ、膨大な数のモデルを作って中性子星の生成過程をシミュレーションしました。

中性子星が生成されるほど高密度の物理現象を再現できる実験施設は、世界にも欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)SLAC国立加速器研究所のMatter in Extreme Conditions(MEC)という2つしかありません。そこで、モデルを使うシミュレーションが中性子星の研究において重要な手段なのです。

天体の粘度を知るには、音が天体内部をどの程度の速度で伝わるかモデルを使って計算します。音波は、火星探査機のInSightが火星の内部構造を解明したように、天体の内部構造を調べることにも利用できます。

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Image: NASAのゴダード宇宙飛行センターとConceptual Image Lab
このような多層構造をとると考えられる中性子星のイメージ図

Gizmodoの問い合わせに対し、ゲーテ大学の宇宙物理学者Christian Ecker氏はメールで「(音速を計算するために)膨大な数の状態モデル方程式を作って調べたところ、質量が最大級の中性子星では、コアの音速が外部の層より遅くなるとわかりました」と返答してくれました。

「このことから、コアでは物質が何らかの変化を起こしていると考えられます。たとえば、バリオンからクォークへ変わるといったような変化です」(Ecker氏)

質量とは無関係に直径が決まってくる?

さらに研究チームは、中性子星の直径は質量と無関係に、例外なく7.46マイル(約12km)程度になると考えています。これは、標準的な中性子星の直径を約13.6マイル(約22km)とした、2020年の推定値の半分ほどです。大きさは違っても、中性子星の平均質量は地球50万個分ほどあり、とにかく密度が高い天体です。

まだまだ謎は多い

中性子星の粘度が多彩だということは、ある程度わかりました。しかし、物質の状態や、それらがどのように組み合わさっているかは、調べられていません(もちろん、中性子星はチョコレートでできていません)。中性子星をどんなに掘っていっても中性子しか出てこない、と考える研究者もいます。中性子星の中心部では、想像もできない奇妙な未知の粒子が作られている、という異論もあります。

謎に包まれた超高密度の天体ですが、中性子星は実際に存在していて、さまざまな装置で観測データを集めようとしています。中性子星と中性子星や、中性子星とブラックホールの合体といった激しい衝突が起きれば、内部の物質が白日の下に晒されて、中性子星の性質も明かされるでしょう

たとえば、物理学者はNASAの中性子星観測装置NICER(Neutron Star Interior Composition Explorer)、研究グループのNANOGrav (North American Nanohertz Observatory for Gravitational Waves)、CHIME電波望遠鏡、共同研究活動のLIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)やVirgoなどを通じ、中性子星の大きさと構造を調べています。

観測データが増えれば、それを利用して中性子星モデルの精度を向上できます。Ecker氏によると、太陽2つ分の質量を野球場に押し込めたような、極めて質量の大きな中性子星を調べると、こうした極端な性質の天体がどんな物理的特性を示すか高精度で予測できるそうです。

うまくいけば、宇宙の巨大なプラリネの中身について、割とすぐ詳しい情報が得られるかもしれません。大きさによって中身がどう違うのかなども、判明する可能性があります。

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