驚きの研究結果。グリーンランドで200万年前のDNAが発見される。記録を100万年更新

  • author Isaac Schultz - Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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驚きの研究結果。グリーンランドで200万年前のDNAが発見される。記録を100万年更新
Illustration: Beth Zaiken

200万年前の世界がわかるってやっぱ科学すごい。

Natureに掲載された研究結果で、グリーンランドの最北端に広がる永久凍土から見つかった環境DNAの断片を解析したところ、200万年前のものであることが判明しました。これまでで最も古いとされた100万年を大きく上回る驚きの新発見です。

グリーンランドの堆積物から200万年前のDNAが!

太古の環境DNAは、グリーンランド北部のピアリーランドに位置するカップ・クブンハウン(Kap København)累層の5カ所で採取した堆積物試料41点から見つかりました。現在はジャコウネコと地衣類しか生息していない極地砂漠ですが、太古の昔は温帯林や北方林が混在していたそうです。研究チームの分析によると、200万年前には多くの動物が生息しており、こんな北にはいないはずのマストドンまで存在したのだとか。

ケンブリッジ大学の進化遺伝学者で、研究の共著者であるEske Willerslev氏は、記者会見でこう述べています。

DNAのおかげでこれまで考えられていたのとは本当にまったく違う生態系を垣間見ることができたのは、超刺激的でした。

これまでは、Wrangel Islandに生息した100万年前のマンモスの歯から発見されたDNAが最も古いとされてきました。100万年更新したことで、鮮新世から更新世に移り変わった直後のグリーンランドにおける生態系を解明するきっかけをつかんだそうです。今は存在しない生態系を知ることができるなんてすごいことですよね。

環境DNAには時代をさかのぼる可能性が満載

通常、DNAは古代生物の骨や歯などから抽出されるケースがほとんどなんですけど、この研究では環境中(今回は永久凍土)から採取した試料を用いて抽出されたため、「環境DNA」と呼ばれています。環境DNAには、体毛や鼻水、排せつ物など、特定地域に生息した多くの生物の遺伝物質が残されているそうです。

鳥や虫から菌類まで、さまざまな有機物を解明するための手がかりになる環境DNAのすごさは、化石に頼らなくても太古の動物の存在を明らかにできること。古生物学以外の分野では、絶滅の危機にひんしている動物や、希少種のザリガニやフクロネコのように見つけるのが難しい動物を調査する際に特に有効とのことです。

でも、環境DNAも万能じゃないんです。多くの遺伝情報を持っていますが、繊細すぎるため長期間環境中に残ることはできません。基本的に、環境DNAは湿った暖かい地域よりも、乾燥した寒い地域の方が残存しやすいと言われています。

マストドンがいるくらい温暖だった200万年前のグリーンランド

200万年前のグリーンランド北端は、その名の通り緑豊かで生命に満ちていました。そして、海岸沿いに生い茂る森林から河口に流れ込んで沈殿した土壌が寒冷化によって凍結し、土壌中に残された環境DNAが粘土や石英などの鉱物に付着することで、有機分子の保存を手助けしたんじゃないかと考えられています。

太古の森の情報を記したメッセージが海に流れ、200万年におよぶ気候変動や地質学的な変化を経て研究チームに拾い上げられ、日の目を見たって感じですね。スケールの大きさに鳥肌が立ちます。

環境DNAによってさらに多くの種の存在を確認できたと話すWillerslev氏。化石によって木が存在したことは知っていたので、森林の痕跡が見つかっても驚かなかったそうですが、マストドンまでいたことにはさすがにびっくりしたのだとか。

‘Mind-Blowing’2-Million-Year-Old DNA Reveals Ancient Ecosystem in Greenland_02
Image: Svend Funder

殺伐とした砂漠が広がるカップ・クブンハウンに遺伝子レベルで受け継がれる太古の記憶。乾燥した木々の枝は太古の森林の名残であり、永久凍土が解ければそこから200万年前のコケが放出されます。

コペンハーゲン大学の地質学者、Kurt H. Kjær氏は、ケンブリッジ大学のプレスリリースで次のように述べています。

2万年かけて形成された堆積物の奥深くから発見された太古のDNAサンプルは、氷や永久凍土に守られたおかげで、200万年もの間ずっと人間に邪魔されることなくそこに残っていたんです。

今回解析された環境DNAは、2006年、2012年、そして2016年に5カ所で採取した堆積物試料41点から抽出されました。そして、環境DNAの塩基配列をデータベースの参照ゲノム配列と比較して、グリーンランド北端にどんな動物や植物が生息していたのかを分析しました。

研究チームによると、北方林が広がる環境だったことを示唆する動物と植物のDNAが見つかったことから、カップ・クブンハウンは現在よりもずっと温暖だったと考えられるそうです。

Willerslev氏は、200万年前のグリーンランドの気候は、これから地球温暖化によって私たちが直面するであろう気候と似ていると言います。カップ・クブンハウンの過去を知れば、現存する種が急速に温暖化する世界にどう適応できるのかについて何らかの手がかりをつかめるかもしれないとのこと。

気候データによると、この地域の平均気温は今よりも11~19度高かったそう。そのために動植物が繁栄し、北極圏と温帯の生物が混在していました。この研究で、ポプラや白樺、スギなどの樹木や、マストドンやトナカイ、げっ歯類、ガンなどの動物が確認されています。

前回の記録を作った研究チームもあっぱれ

今回の研究には関わっていない、スウェーデン自然史博物館の進化遺伝学者で、昨年マンモスの臼歯から100万年前のDNAを発見したチームの一員だったLove Dalén氏は、米Gizmodoにメールでこう話してくれました。

今回の研究は、ハッキリ言って画期的で素晴らしいと思います。おまけに研究結果は最高にクールです! そして、堆積物から抽出できるDNAの年代に関する概念を根底から覆したのは間違いありません。

これまでに堆積物から発見された最古のDNAは25万年前のヒト科のものなので、175万年も記録を更新したことになりますね。一気に8倍ですよ、8倍! そりゃ概念ひっくり返りまくりだわ。

‘Mind-Blowing’2-Million-Year-Old DNA Reveals Ancient Ecosystem in Greenland_03
Image: Kurt H. Kjær

興味深いのは、河口で採取されたサンプルからカブトガニやサンゴ、藻類のDNAも見つかったこと。これは、陸地の生物のDNAを含んだ土が河口に流れ着いたあと、海洋生物のDNAがさまざまな環境DNAと混ざり合って、その後永久凍土になったために遺伝子が長期間保存されたことを示しています。

でも、環境DNAが特定の地域に存在した種を完全に反映しているとは言えないそうですよ。今回、肉食動物は見つからなかったらしいのですが、これはあり得ない状況なんですって。

研究チームは、おそらくマストドンやトナカイを捕食していたであろう肉食動物の占める割合が小さすぎて見つかりにくいのではないかと推察しているそうです。

広がる太古の歴史を知る可能性

今後、バクテリアや菌類など、さらに多くの生物種が特定される予定なのだとか。また、今回解析されたDNAが石英の結晶や粘土に付着して長期間残存した可能性があることから、条件さえ整えば研究技術を使って、アフリカの遺跡などかなり南の方でも太古の環境DNAを見つけられるかもしれないそう。

今回の研究によって、もっと古い時代の遺伝子が見つかるかもと期待が高まりますが、いったいどこまでさかのぼれるんでしょうね? Willerslev氏は、保証はできないとしつつ、400万年前のものが発見されても驚かないと言います。

研究チームはこのあと、深海の環境DNA採取を計画しているそうです。今回の研究で用いられた技術を応用できれば、北極圏からはるか遠く離れた古環境や、そこに生息した生物の全貌が明らかになる日がくるかもしれませんね。

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