宇宙塵を分析したら、アメリカ中西部の土壌浸食が進みすぎてると判明。原因は…

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  • author John McCracken, Grist - Earther Gizmodo US
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  • Kenji P. Miyajima
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宇宙塵を分析したら、アメリカ中西部の土壌浸食が進みすぎてると判明。原因は…
Image: Shutterstock

足元を見つめるのはすごく大事。

アメリカ中西部の土壌が、驚異的な速さで浸食されていることが新たな研究結果で明らかになりました。

マサチューセッツ大学の研究チームが発表した論文によると、近代農業が始まる前と比較して、米中西部における土壌浸食が10~1,000倍の速さで進んでいるそうです。最大1,000倍! また、近代農業開始以前は、アメリカ農務省(USDA)が定める現在の容認基準よりも、はるかに浸食が少なかったことがこの研究で判明しています。

驚異的な速さで進む米中西部の土壌浸食

マサチューセッツ大学の地球科学教授で論文の共著者でもあるIsaac Larsen氏は、Gristに「中西部のほとんどの場所で、形成される約100倍の速度で土壌が失われています」と話しました。

農業が盛んなアイオワ州出身のLarsen氏は土壌浸食について、食料生産から地下水脈汚染まで、あらゆる面で懸念材料になっていると言います。中西部が誇る豊かな土壌は、肥料や農薬などの合成化学物質に取って代られてきたのだそうです。

2020年初めにLarsen氏が発表した別の研究結果によると、過去160年間で中西部は年平均2mmの土壌を失ったそうです。これはUSDAの許容範囲の2倍にあたります。

調査の決め手は宇宙塵に含まれるベリリウム10

研究チームは、遠くにある星々が爆発した後に地表に降ってくる宇宙塵に含まれるベリリウム10という希少元素の量を調べることで、近代農業が導入される以前と比べてどれくらい土壌が浸食されたかをデータ化しました。

その結果、中西部に存在する手つかずの畑や草原の土壌が、ベリリウム10を豊富に含んでいることが判明しました。一方で、トウモロコシや大豆を生産しているアイオワ、ミネソタ、サウスダコタ、ネブラスカ、カンザスなど中西部州の畑では、ベリリウム10の濃度がかなり低かったそうです。

求められる農法の変化

Larsen氏によると、中西部は他の地域よりも自然浸食の速度は遅いのに、農業による浸食が大幅に加速しているとのこと。でも、もしも農業による浸食を長期的にスローダウンさせる農法を見つけられれば、肥厚した有機成分の多い豊かな土壌を保つことができるそうです。

気候変動に強い農業への転換を求める声が大きくなる中で、近年は民間企業や非営利団体から数億円単位の資金が投入されています。また、バイデン政権は9月に「気候スマート」な農法を推進するために220億ドル(3兆円)を拠出しています。ニュースサイクルに乗らないけど、地味にいいことしてるバイデン大統領。

一般的に、土壌の浸食を防ぐための方法として、主作物の休閑期に収穫を目的としない有機作物で地表が覆われるように茂らせる「被覆作物(カバークロップ)」と、作付けや収穫の際にできる限り土壌を耕さずに栄養分を地中に閉じ込める「不耕起栽培」のふたつが見られるようになってきました。

これらの農法は、アメリカの農業界が温暖化に適応していく中で、多年生作物への移行などと併せて取り入れられています。中西部でも被覆作物を取り入れる農家は増えていますが、その効果を疑問視する声は小さくないようです。農業団体はそういう状況を変えるために、より浸食の少ない農法を用いるよう、引き続き農家に働きかけています。

持続可能な農法を促進する生産者による提唱団体National Sustainable Agriculture Coalition (全米持続可能農業連合)で気候政策コーディネーターを務めるCathy Day博士は、森林農業の発展から無肥料栽培に至るまで、気候変動への適応状況や土壌の健全性は地域によって異なるものの、農家が土壌浸食を防ぐ方法を学んで取り入れるためには多くの資金が必要といいます。そのためには連邦法の整備が最優先事項と考えており、土壌の健全性確保と、気候変動の緩和と適応に優先的に取り組むよう求めているそうです。


食の大切さ、特にそれを支える土壌の重要性って、わかっているようで見落とされがちですよね。農家にも環境にも気候にも配慮した農業のあり方が問われているんでしょうね。

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