12ビット is 正義。
テクノロジーの進化は、音楽スタイルの変容にダイレクトに影響します。特にサンプラーの進化はヒップホップに強く影響を及ぼしてきました。
現行サンプラーはほとんどがCDと同様に16ビットでデータ処理していますが、30年前の処理能力があまり高くなかったサンプラーは、8ビットや12ビットが主流でした。ビット数は音の解像度に影響するので、こうした低ビットサンプラーは出音がざらっとした質感になってしまいます。しかし、そのざらっと感がむしろ無骨で太いサウンドにつながり、いわゆるゴールデンエイジと呼ばれる1990年前後のヒップホップの音質的な特徴になっているのです。いわゆるローファイサウンドってやつです。当時のAKAI S900やS950、E-MU SP1200やE-MAXといった12ビットサンプラーは、今でも中古市場で人気があります。ただ、いかんせん古い機材なので、状態の良い中古を探すのはなかなか至難の業。
ところが12ビットモードを備えたサンプラーを新品で製造しているメーカーがあるんです。しかも日本に。2022年に。マジか?
90sヒップホップのあの音が
エフェクターやコンパクトシンセなど、ユニークなプロダクトを作っている新進楽器メーカーSONICWARE。同社は「シンセの次のまったく新しい楽器を作ること」を使命に掲げ、その流れで生まれたサンプラーが、このLIVEN Lofi-12です。
LIVEN Lofi-12は16ビット(12kHz/24kHz)に加え、12ビットモードを搭載。低ビットサンプラーならではのざらつき感がちゃんと再現できるんです。
サンプリングタイムは1サンプル最大4秒(24kHzサンプリングの場合は最大2秒)。短い! でも、それでいいんです。当時のトラックメーカーたちはこの短いサンプリングタイムを駆使するため、33回転のレコードを45回転に上げてサンプリング→速度を遅くして再生という技を使っていました。これによって音質はよりローファイになってカッコいいというわけです。もちろんサンプル加工もトリミングだけでなく、LFOやフィルターによるエディットができます。各トラックに独立したエフェクトも使えます。

サンプルは自動的にキーボードにアサインされ、簡単に音程を変えて演奏できます。4トラックのステップシーケンサーが内蔵されていて、4パートのトラック制作が本体だけで可能。サウンド・ロック機能を使えば、フレーズやノートごとにサンプルを切り替えることもできます。また80種のサンプルがプリセットされているので、自分でサンプリングしなくてもそれだけで曲制作が可能に。サンプルの再生をちょっとずらすレイドバック・ノブもユニークです。
この手のサンプラー機能を備えたグルーブボックスでは、かなりかっ飛んだモデルといえます。価格も2万4800円とリーズナブル。初回出荷の100台は早々に完売したそうで人気の高さが伺えますが、これだけキャラが立ってると確かに欲しくなりますよね。私も個人的に買ってしまいそうです。
Source: SONICWARE