海洋温暖化が気象災害を激化させている可能性

  • author Lauren Leffer - Earther Gizmodo US
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  • Kenji P. Miyajima
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海洋温暖化が気象災害を激化させている可能性
Image: Mario Tama / Getty Images

海もお風呂のように混ぜられたらいいのに。

カリフォルニアでは、年末から3週間ずっと異常気象が続いており、太平洋岸に「大気の川」が次々に押し寄せ、地域によっては降水量が平年の4倍から6倍に達しています。

集中豪雨による死者は少なくとも19人10万人近くに避難命令が出ました。停電情報を発信しているPowerOutage.usによると、停電は数十万世帯におよび、その後も数日にわたって数万世帯が電気のない生活を送ったそうです。

昨年の海は観測史上最も熱かった

どうしてこんなことになっているのかを説明してくれそうな研究結果が発表されました。Advances in Atmospheric Scienceに掲載された研究によると、2022年は海水温が観測史上最も高い年だったそうです。

この研究では、中国科学院とアメリカ海洋大気庁(NOAA)のデータを用いて世界の海面から深さ2000mまでの温度を分析しました。両機関の測定方法には若干の違いがあるものの、ともに2022年の海水温は過去最高を記録したとのこと。

海の温暖化は、地球全体の気候や異常気象、海の健康度に大きな影響を与えます。また、海水温が上昇すれば、嵐にさらなるエネルギーと水分が供給されます。アメリカ国立大気圏研究センター(NCAR)の気候科学者で論文の著者のひとりであるKevin Trenberth氏は、Washington Postに次のように話しています。

カリフォルニアの嵐は、海洋温暖化の影響だと私は考えます。このような豪雨は、海の異常な熱さが直接的な原因なんです。

海洋温暖化がもたらす気象災害と経済損失

カリフォルニアだけじゃありません。昨年だけを見ても、ケンタッキー州の集中豪雨、フロリダ州を直撃したハリケーン「イアン」、パキスタンを襲った洪水など、世界中で気候変動、特に海洋温暖化が影響したと思われる気象災害が相次ぎました。

1月上旬にNOAAが発表したデータによると、気候変動の影響を受けた気象災害がもたらしたアメリカの経済損失は1,650億ドル(約21兆円)にのぼります。これは、NOAAが統計を開始した1980年以来、2017年と2005年に次いで3番目に大きな損失額になりました。

嵐だけじゃなく、海洋温暖化によって海面上昇が加速し、海水の塩分や栄養バランスが変化すると、適応できない生物は絶滅への道をたどると研究チームは指摘します。

海洋温暖化は人間活動への警告

海を知ることは、陸地と地球全体の気候システムを知ることにもつながります。

2022年に海水温が観測史上最高を記録したのは、人類による温室効果ガス排出が地球にどれだけ深刻な影響を与えるかを示す強力で差し迫った警告です。水は空気や地表面よりも熱容量が大きい分、熱の吸収と放出の速度が遅くなります。

つまり、大気や陸地よりも海の方が温度の上昇と低下に時間がかかるというわけです。

研究チームは、気温よりも海水温の方が、より一貫性のある地球の熱循環パターンを測定できると主張しています。年ごとに変動がある気温や地表温度と比べて、海水温はそんなに変動しないんだそうです。

4年連続で海水温が観測史上を更新

2019年以降、海水温は4年連続で過去最高を更新しています。

ミネソタ州セント・トーマス大学勤務の気候学者で、研究の共著者でもあるJohn Abraham氏は、「記録を更新し続けるのは、針が飛び続ける壊れたレコードのようなものです」とWashington Postに語っています。

余剰熱の90%が海に蓄積

著者らは海洋貯熱量について、「人為的な温室効果ガス排出によって気候システムのエネルギー分布に不均衡が生じていることを示すための指標として特に重要」としています。

本来、地球に入ってくるエネルギーと放出されるエネルギーはバランスが取れるのですが、人為的な温室効果ガスが放出されるはずのエネルギーを閉じ込めてしまいます。すると、地球に残るエネルギーの方が大きくなることでバランスが崩れ、余分な熱(余剰熱)が発生します。

この余剰熱の約90%が海に蓄積されることが過去の研究で明らかになっています。海が熱を取り込んでくれていなかったら、気温はいったい何度上昇していたんだろう…

過去最高を記録した海水温と比較すると、2022年の地表温度は過去最高だった2016年よりも低かったものの、安心できるものではありません。EUによると、2022年を含む過去8年間の世界平均地表温度は観測史上最高だったそうです。

約3年間続いたラニーニャ現象のおかげで異常に涼しい地域もありましたが、全体として温暖化傾向は続いています。

昨年だけで20年分のエネルギーが海へ

1958年から2022年にかけて、地球の上層海域は年平均で5.4ゼタジュール(ZJと表記。1ZJ=10の21乗J。IPCC特別報告書によると、「海全体を1度昇温させるのに約5,500ZJ必要であり、144ZJで上層部100mを約1度上昇させる」とのこと)も温暖化しており、急加速しているそうです。

2022年は過去65年の平均の2倍近い約10ZJの熱を吸収しました。研究チームのニュースリリースによると、世界中で人類が1年間に消費するエネルギーは、0.5ZJに過ぎません。2022年は海の上層部分が20年分のエネルギーを吸収した計算になりますね…。

今回の研究に参加していない、スクリップス海洋学研究所の元研究員であるLinda Rasmussen氏はWashington Postに「研究が示す明確な海洋貯熱量の増加は、数十年にわたって著しい変化が続いていることを物語っています」と話します。

世界中すべての海域が同じペースで温暖化しているわけではありません。北太平洋、北大西洋、地中海、南極海の四海域では2022年に過去最高の海水温を記録するなど、海洋温暖化が急速に進んでいます。

このような傾向が、ヨーロッパの激しい熱波米北東部の温暖化のような、近年における気象や気温上昇に影響しているかもしれないそうです。

崩れる海のバランス

研究では、海洋循環のパターンが気温上昇とともに変化していることも確認されました。

暖水は冷水よりも密度が低いため、浮力が大きく、沈みにくいんです。海洋温暖化によって表層の海水が沈みにくくなると、上層部と下層部の海水がうまく混ざりあわなくなります。そうなると、深海に重要な栄養分と酸素が届かなくなります。

また、海水は温度が上昇するほど栄養素や酸素を蓄える能力が低下するため、上層部でも栄養と酸素が不足します。海洋生物は、海水温上昇だけなく、栄養素と酸素の欠乏という何重もの脅威に直面していることになります。海水温が上昇すると、表層海水が熱膨張を起こして海面上昇につながるのもよく知られています。

海洋温暖化は、海水の塩分濃度にも影響します。表層海水の温度が上昇すると、水分の蒸発量が増え、塩分濃度が高くなります。その一方で、一部地域では降水量の増加によって塩分濃度が下がっています。

全体的にみると、人為的気候変動と海洋温暖化によって、塩分が高くなり続ける地域と低くなり続ける地域に分かれてしまうようです。

今後75年続く海洋温暖化

今のところ、気候変動も海洋温暖化も止まりそうにありません。ペンシルベニア大学の大気科学者で研究の共著者でもあるMichael Mann氏は、ニュースリリースの中で「ネットゼロを達成するまで、海洋貯熱量の記録更新は続くだろう」と述べています。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人類が気候変動による最悪の事態を避けるために必要かつ大胆な気候変動対策を講じたとしても、今後75年間にわたって海洋温暖化が続く可能性が高いとしています。

海洋温暖化とその影響は、新たな「深刻化する非日常的な日常」となって、人類と生態系を苦しめているのです。

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https://www.gizmodo.jp/2022/12/researchers-want-to-try-harvesting-fresh-water-from-oce.html

Reference: The Guardian, 環境省