すぐにドラマ化されそう。
小説を書き、相談相手となり、質問に答え、ちょっとしたジョークを飛ばしてきたAIですが、いよいよ人間の世界で次なるステップへ進むときが来たようです。人の善悪を決める場所、法廷にAIが出廷します。
スピード違反の裁判をサポート
AI企業のDoNotPayの人工知能が、近日中にアメリカの裁判所で行なわれる裁判に「出廷」することが明らかになりました。争うのはスピード違反のチケットです。
AI弁護士が法廷に立つ話の前に、ちょっと1回整理すると、アメリカではスピード違反の切符を切られた際、決められた期日に裁判所に出廷し、不服申し立てを行うことができます。その内容によっては、ドライバーが無罪放免となったり、罰金が緩和されることも。
で、出廷する人の法律的サポートを行なうのが、法律関連のチャットサービスを手がけるDoNotPayのAI弁護士です。
AI弁護士を雇った人が出廷する裁判が開かれるのは2月のどこか。依頼人のプライバシー保護と現場の混乱を避けるため、詳しい日時やどの裁判がそれに当たるかは明かされていません。
というか、AI弁護士が出廷するのは法の抜け道を使ってのことなので、事前にわかると怒られちゃう&禁止されちゃう恐れがあります。米国のほとんどの裁判所では、電話やインターネットへの接続が禁じられています。DoNotPayは、これをAppleのAirPodsを使うことで回避。裁判の行方を音で拾い、イヤホン越しに音声で指示する作戦です。
弁護は無理せずおとなしめ
米GizmodoがDoNotPay創設者兼CEOのJoshua Browder氏に電話取材を行なったところ、実はDoNotPayはこの他にもう1件、スピード違反切符の裁判を抱えていることを教えてくれました。詳細は同じく明かせないものの、そちらはZoom裁判が予定されているとのこと。
対Zoom作戦も検討されていますが、Browder氏いわく、無理はしないことが大前提なんだとか。理由は、なんだかんだ所詮は交通違反切符に過ぎないから。AI弁護士の存在で依頼者に不利があっては、元も子もないですからね。
また、この2件に関しては実験的試みであることから、裁判結果の罰金は全額DoNotPay持ちで、依頼者のリスクを回避するつもりだそう。また、Browder氏は裁判での宣誓に違わぬよう、AIには嘘をつかないこと、提示された事実から逸れないことに注力したトレーニングを行なっているとも語ってくれました。
DoNotPayは2015年設立のAI企業。主に対お役所関連の法律相談をチャット(テンプレ会話)で受け付けています。なかなか人気と成果を出しており、DoNotPayいわく設立以来200万件の訴訟を治めており、ニューヨークとロンドンではたった2年で駐車違反切符16万枚で勝訴。
そして、話題のChatGPTが出たことで仕事の幅をさらに拡大。昨年は、ChatGPTを活用したシステムで、ユーザーのネット利用料を安くすることに成功して注目を集めました。Browder氏いわく、将来的にはAI弁護士がリアル弁護士の代わりとなるのが目標だそうですが、今のところは料金交渉のような対企業案件が最も向いていると考えているそうで、すでに罰金軽減や保険の交渉に使える文章を作成するツールをサービスとして提供しています。