AMD Ryzen 7000の無印65Wは安くて省エネで性能よし

  • 15,967

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …
AMD Ryzen 7000の無印65Wは安くて省エネで性能よし
Photo: Damien Gula - Gizmodo US

自作PC好きにはたまらない時代。

CPUはむちゃくちゃ進化していて、秋にはAMDIntelが最新シリコンの発表をぶつけて対決色をむき出しにしています。どっちのプラットフォームにするかで悩んでるシステムビルダーも多いんじゃないでしょうか。

編集部が行なったテストでは、Ryzen 7000も第13世代Intelも性能バツグンでしたけど、ちょっと電気食いで加熱が問題。まあ、両社ともヘビー級をまず登板させて処理性能の上限を見せてから、「そこまで要らないわ」という人たちに対応するライト級をいろいろ出していくのは毎度の戦略ではありますけどね。

Lisa Su博士がCES 2023基調講演で述べたように、 Ryzen 7000シリーズも種類は着々と増えています。ここでは65W版の無印CPUに触ってみた感想をまとめてみました!

…あれ? 3D V-Cacheテクノロジー採用の7800X3D。7900X3D、7950X3Dじゃねーのかよって? そうなんですよね…自分も「X」が付くやつ早く見たいけど、もっとライト級で安いXじゃないほうのレビューです。いや、これ読んだら、意外といいじゃんって驚くかもしれませんよ⁉

AMD Ryzen 7000 non-X CPUシリーズ

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_s
Photo: Damien Gula - Gizmodo US
20230115Ryzen7000Non-X_CPU_stars

これは何?

AMDの65W版Zen 4デスクトッププロセッサー

価格

Ryzen 5 7600:229ドル(国内参考価格 3万7500円)

Ryzen 7 7700:329ドル(国内参考価格 5万3800円)

Ryzen 9 7900:429ドル(国内参考価格 6万9800円)

好きなところ

低ワット数、熱くならない、小型ビルドに最適、空冷可能(クーラー込み)、オーバークロッキング対応

好きじゃないところ

マルチスレッドの処理性能はまずまずだけど、コンテンツクリエーター用のNo.1チョイスと呼ぶには今一歩。オーバークロッキングで比べると費用対効果に優れない


性能、パワー、効率性のすべてがある

「Ryzen 7000シリーズは熱、ワット数、価格が高すぎて手が届かない!(これはIntel第13世代コアCPUシリーズも同じだけど)」という人にとって、non-Xはまさに救世主です。 X並みのコア数とキャッシュサイズを保持しながら、TDP(熱設計電力)のワット数をかなり軽減しました(特にハイエンドモデル)。

使う電力が少ないとベースのクロックスピードはどうしても下がっちゃうけど、下がるといってもnon-X CPUのブーストクロック数は7000Xより200MHz少ないだけなので、さほど大きな犠牲ではありません。エコな人、電気代下げたい人にはうれしいオプションといえます(詳しくは後述)。

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_a
Photo: Damien Gula - Gizmodo US

比較的小型なPCビルドを希望する人や、冷却は空冷オンリーというこだわりの人のためにデザインされたのがnon-Xで、空冷CPUクーラーには純正Wraithクーラーが入っています(Ryzen 5 7600はWraith Stealthで、Ryzen 7 7700とRyzen 9 7900はWraith Prism)。AM5プラットフォームの機能(AMD EXPO、PCIe 5.0、DDR5など)は完全網羅…とまあ良いことづくめなのですが、気になるのは実際使ってみてどうなのか?ですよね。

Ryzen Non-X CPUのスペック

スペック的にはRyzen 5 7600、7 7700、9 7900も、Xが付くシリーズと大差ありません

まずAMD最新最安CPUのRyzen 5 7600を例にとると、6コア・12スレッド(6C/12T) で、ベースクロック(3.8GHz)は7600X(4.7GHz)より5600X(3.7GHz)に近い値。最大ブーストスピードではXとの開きはさらに縮まっていて、7600(5.1GHz)と7600X(5.3GHz)の差はわずか0.2GHz。TDPが5600Xに近い65Wなことを考えると、決して悪くない数字です。

続いてRyzen 7 7700は8コア・16スレッド(8C/16T)、ベースクロックスピードは3.8GHz、最大ブーストは5.3GHzとなっています。同世代の7700Xは4.5GHz~5.4GHzでTDPは105W。前の5700X(3.4GHz~4.6GHz)と比べると、同等のTDP(65W)でありながら、全体的な処理スピードは7700の勝ち。

上位モデルのRyzen 7900は12コア24スレッド(12C/32T)のパワービーストです。ベースクロックは3.7GHz、ブーストクロックスピードは5.4GHzで、最新のXとは1GHzも差が付いてます。ただ、XのつくRyzen 7900X(4.7GHz~5.6GHz)はTDPが170Wで、Xの付かない7900は65W。その差なんと105W。このことを忘れちゃなりません。

比較条件

前にRyzen 7000シリーズや第13世代Intelコアを調べたときと条件は極力そろえました。前のテスト後にマザーボードを交換していたので、比べる前にRyzen 7000シリーズも同じ条件で再度テストし直したりして。

以下のチャートにあるのは、箱から取り出してそのままの状態で出た数字です。オーバークロッキングや設定変更はしていません。いじったのは、Smart Access MemoryとAMD EXPOプロファイルを有効にしたことぐらいですね(メモリレイテンシを下げてスピードアップするため)。以下、言及されるIntelの数値も、類似の条件で行なったテスト結果です。

比較対象はAMD Zen 4とCore i9-13900K、Core i5-13600K。Intelも65W版のRaptor Lake CPUを発表していますが、それとは比べていません。Ryzen 5950Xは編集部が過去テストしたものがあったので、そのデータを盛り込みました。実測データは環境と使用機器によって違ってくるので、皆さまのテスト結果と同じじゃないことも考えられます。念のため。

使ったメモリーボードはX670E AORUS Master、GPUはNVIDIA RTX 3090 Foundersエディション、RAMは32 GBのG.Skill Trident Z5 NEOシリーズDDR5-6000 、SSDは1TBのWD_Black SN770 M.2 NVMe、PSUはNZXT C1000 Gold 1000W、冷却装置は120mmサイズ冷却ファン3基搭載のNZXT Kraken Z73 360mmオールインワン水冷CPUクーラー1、ケースは140mmサイズ冷却ファン4基搭載のNZXT H7 EliteミドルタワーPCケース。Xとnon-Xとで同じものにしました。

それではいよいよ結果発表しましょう!

ベンチマーク結果

まずは、さまざまな負荷で比べた性能差からどうぞ。

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_bench_1
スコアが伸びるほどいい
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US

これはWeb閲覧、PDFレンダリング、テキストの圧縮など日々のタスクをこなしながら、Geekbench 5でシングルスレッドの処理を比べてみた結果です。ご覧のように、Ryzen 5 7600は7600Xとの差が5%未満で、Intel Core i5-13600Kとは2.85%の開きがありますが、7では7700と7700Xとで2.72%差、7700と7600Xとで1.5%差に縮まって、Ryzen 9では7900と7900Xとで2.5%差、Core i9-13900Kとで1.4%の差となっており、上位モデルになるほど差が狭まっているのがわかります。

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_bench_2
スコアが伸びるほどいい
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US

一方マルチコアの処理ではそうはいかなくて、7600は7600Xと6%差、7700は7700Xと4.6%差であるのに対し、7900と7900Xは11%も差が付いています。

7900はCore i5-13600Kには勝っているものの、7950XがCore i9-13900Kのマルチコア、マルチスレッドの処理パワーには比べるべくもない感じ。

もっとも少し大局で眺めると、Ryzen 7 7700が前のフラッグシップCPUであるRyzen 9 5950Xにかなり近いのがわかります。これは次のテストでも同じでした。

動画エンコードのテストでは、4K動画ファイルを1080p30に変換する処理速度を計測しました。7600は遅くて、ほかのに付いていくのがやっとですが、7700は前世代の5950Xとほぼ対等です。

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_bench_handbrake
処理にかかる秒数。短いほどいい
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US
20230115Ryzen7000Non-X_CPU_blender
処理にかかる秒数。短いほどいい
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US

上記はBlenderのテスト結果です。まぶしい赤のBMWの写真をレンダリングしてマルチコア、マルチスレッドの処理性能を比べてみました。7600と7600Xの差はあまり目立たないけど、7700は7700と8秒の差を付けられていて、5950Xとは38秒の大差。一方7900は7700X、7900Xのちょうど真ん中ぐらいになっています。

ゲームのベンチマーク結果

GPUにはなるべく頼りたくなかったので、ゲームのテストは1080pで比較しました。上から順に5、7、9のチャートになっているんですけど、あまり差がなくて驚きますよね。

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_1080p
オレンジがnon-X、茶がX
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US
20230115Ryzen7000Non-X_CPU_1080p_ryzen7
オレンジがnon-X、茶がX
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US
20230115Ryzen7000Non-X_CPU_1080p_ryzen9
濃いオレンジがnon-X、茶がX(薄いオレンジは7950X)
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US

特に7と9の濃いオレンジを見比べると、7700と7900はすごく近いのがわかります。Zen 4はどの価格のものを買ってもパワフルってことですね。non-XのCPUを見て、改めてそのパワフルさを思い知った気がします。もちろん7600も忘れちゃいけなくて、65W版でも7600Xにピターッとつけています。

電力性能と熱効率

もっとも、それだけじゃないのがCPUです。AMDがZen 4で目指しているのは、電力効率と性能で業界をリードすること。シングルスレッドおよびマルチスレッドタスクの処理性能はともかく、気になるのは消費電力、熱。新しいプラットフォームに乗り換えて生まれる代償です。

Ryzen 7000シリーズのnon-X製品群では、全体のTDPを下げて下位のRyzen 5000シリーズにそろえていることになっています。実際どうなのか比べたのが以下のチャートです。

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_bench_3
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US
20230115Ryzen7000Non-X_CPU_bench_4
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US

電力消費については、ソケット電力で比べたので、表示されているTDPよりは少し高い値になっていますが、AMD公示のCPUソケット電力最大値とは一致しています。non-XのRyzen 7000 CPUが面白いのは、オーバークロックしたいときにはできることですね。オーバークロッキングをアンロックした状態で出荷しているのがAMDの自慢でもあります。もっとも、ここでは初期状態で比べたかったので、オーバークロッキングの評価はまたの機会に。

ゲームのテストでは、non-Xも一部の状況ではXと大差ない電力消費量と性能が示されましたが、性能が衰えることなく24Wの差がつくこともありました(これが起こるのはゲームのシングルスレッドの処理のときだけですが)。%!(EXTRA string= )

マルチスレッドの一部業務タスク(電力の最大値は88W前後)ではさらに差がついて、100Wもの開きがつくことも! もちろん「省電=高性能」というわけでないですけどね(後述)。

熱とくれば、気になるのは冷却です。テストはNZXTのZ73 360mmオールインワン水冷CPUクーラーで実施しました。ポンプのモーターはパフォーマンスモードの設定にしましたが、ケースのファンはすべてサイレントモードにしました。つまり最初は70%のキャパになっていて、CPUの温度が55℃を超えると100%まで上がっていく設定ですね(65℃までは40%、85℃までは70%、90℃になると下がるまで100%の全開キャパ)。

以下が測定結果です。

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_bench_6
Graphic: Damien Gula - Gizmodo US

Zen 4は熱を下げる設計になっていますが、non-X版はそもそも熱を出さない構造になっています。 Ryzen 7000XシリーズのCPU群は排熱温度がMAXになることもありますが、non-X版はその心配がありません。Ryzen 5 7600は上がっても、せいぜい室温より55℃高くなって終わりです。日常業務やゲームで楽しむ分には、30℃後半~40℃前半ほど高熱になる程度です。

目ざとい人は、オールインワンの水冷なんか使って比べても…と思うかもしれませんけどね。

テストではさらにAMDから送られてきた純正のWraithクーラーも使用しています。Wraith PrismをRyzen 9 7900に入れて、それをまたファン付きの小型PCケースに収納。その上で何時間かCinebench R23をシングルコアとマルチコアでプレイしながら温度を確かめたんですが、 7900は何秒か68℃まで上がってから65℃で落ち着きました。65℃というと室温+44.7℃ですね。ほかの冷却クーラーでも試してみましたが(NZXTのT120 RGB)、結果はだいたい一緒で、差と言っても1℃下がる程度でした。

20230115Ryzen7000Non-X_CPU_b
Photo: Damien Gula - Gizmodo US

省電イコール低性能…ではない!

AMDのnon-X Ryzen 7000シリーズで得するのは、パーツと運用のコストを下げたい人全員ですかね。CPUごとに空冷が付いてくるのが大きなプラスだし、Ryzen 5 7600は発売時200ドル近い安値というのも魅力です。この2つだけでも格安ビルドに推奨できそうです。

しかも電力消費量と熱効率の面でも、 Ryzen 7000シリーズのnon-X版CPUは遜色ありません。

Web閲覧やゲームといったシングルコア、シングルスレッドのタスクでつく差は微々たるものですが、マルチコア、マルチスレッドのタスクでは発熱と電力消費量の差が歴然と出ました。これだけ電気がかからなくて熱も出ないなら、エコな人も財布の紐が固い人も満足でしょう。

本来であれば、ここでもうこのCPUでPCを組み立てるアドバイスに移るところですが、なにせRyzen 7000X3Dシリーズの発売が控えているので、そっちの価格と性能を見るまではアドバイスもお預けということになります。

それにしてもZen 4はパワフルなプラットフォームですよね。成長するごとにユーザータイプ別のオプションも続々登場しています。そろうのはいいことだけど、何から手をつけていいのか、ちょっとわかんない!って人もいそう。

製品同士を見比べると余計に頭がこんがらがるかもしれません。書いてても何回も行き来しましたもん。コア数とスレッド数は大きいに越したことないし、上位モデルの方がXとの整合性もある印象ですが、上位モデルほど価格に差がない割に性能に開きが出てくるので、消費電力のことだけ考えてnon-Xにしていいものやらどうやら…と悩みそうです。ゲーム性能が安く手に入ればいいだけなら、最安のRyzen 5 7600で十分ですし。

もっともシリーズ全般を見回すと、これまでのところ人気が出そうなのはRyzen 7 7700Xだとは個人的に思います。もう少しお金に余裕があって、コンテンツ制作でエキストラな処理性能が欲しいならRyzen 9 7900でしょう。省電設計でありながら、7700Xよりコアとスレッドは50%多く搭載されています。

65W版Ryzen 7000シリーズのCPUは「使う人と共に成長していけるプロセッサー」です。電力を湯水のごとく使わなくてもいいし、箱から取り出した状態のまま、同じファミリーの残りのパーツと組み合わせて使えます。電力を気にしない人はオーバークロッキングも可能(まあ、それをやるなら冷却周りのアップスケールが要るだろうし、そうなるとXの付いてるCPUの方がむしろ安上がりかもしれませんけどね)。

オーバークロッキング抜きでも十分パワフルなCPUです。「AM5のプラットフォームに乗り換えを考えている、でも1円も無駄にしたくない」…そんな人はnon-X Ryzen 7000シリーズのCPUにしておけば、それほど性能差は感じなくて済みそうです。

Ryzen 7000 シリーズ ほしい?

  • 0
  • 0
AMD

シェアする