いろいろとマニアックな楽しみ方があるワンボードマイコンのArduinoと、そこから生まれたクレジットカードサイズのレトロゲーム機Arduboyのことは、ギズモードで今までも紹介してきました。そのArduboyが、オリジナル開発者の手によって、さらに半分のサイズになっちゃったというのですから驚きです。
コンパクトな携帯ゲーム機を追求
テレビゲームを小型化する限界に挑戦するかのような携帯型ゲーム機が、いくか登場してきました。クレジットカードサイズのゲーム機、初代Arduboyもそのひとつです。そのArduboyの生みの親が、さらに小型化を極め、しかも十分に遊べる新モデルを引っさげて帰ってきました。ゲームファンにもハードウェアのハッキングをちょっとかじってもらおう、その可能性を広げてもらおうという狙いがあります。
今から8年前の2014年に、厚さわずか1.6ミリというカスタムメイドの電子名刺で世間を沸かせたのが、Kevin Batesさんです。Arduinoボードを分解して作ったもので、実際にシンプルな「テトリス」を名刺の上でプレイできました。自身のハードウェアハッキングのスキルをさりげなく誇示して、そこから仕事にありつこうという意図でしたが、はからずもBatesさんはまったく違う道を歩むことになります。カスタムメイドの作品を、「Arduboy」というオープンソースプロジェクトにしたところ、クレジットカードなみに薄い8ビットハンドヘルドというアイデアが、ゲーム開発者や熱烈なレトロゲームファンに歓迎されたのです。
初代のArduboyを最終的に受け継いだのがArduboy FXです。ボード上の保存容量を増やして、200以上のArduboyゲームを収録できました(各ゲームの容量はドット絵なので極小)。ところが、今度はほかならぬBatesさんも参戦。ハードウェアを完全に設計し直し、なんと初代の半分ほどのサイズにまで小型化しました。
新モデルであるArduboy Miniはさらに小型だけど…

新しく出たモデルはArduboy Miniといい、初代との間で完全な後方互換性を確保しています。それでいて、ストレージはArduboy FXより増えていて、最初から、300を超えるゲームタイトルがプレインストールされています。これまでに開発されてきたゲームを、かなりの程度まで収録しました。Arduboy Miniが初代と違うのは、必要な最小限の要素まで絞り込まれていることです。むき出しの回路基板で、128×64ピクセルのOLED画面、6つのボタン、USB-Cポート1基を搭載しています。
スピーカーもバッテリーも搭載していない!
スピーカーや充電池はArduboy Miniのどこに隠されているのか、と疑問に思うかもしれませんが、探してみても実は見つかりません。初期状態では、どちらも内蔵していないからです。Arduboy Miniの小さい本体を、USB-Cケーブルで電源に接続しないとゲームはできません。不便に感じるかもしれませんが、実はこれこそArduboy Miniが開発された大きな理由のひとつなのです。

初代のArduboyは、ゲーム機であるだけでなく、ArduboyのWebサイトにある豊富なリソースと活発な開発者コミュニティを通じてプログラムを学んでもらうツールでもありました。Arduboy Miniはさらに、ハードウェアのハッキングをちょっとかじってもらうということまで狙っており、本体の裏には、スピーカーとバッテリーを取り付ける端子こそあるものの、USB-Cポートを介してバッテリーを充電するには、回路が必要です。
そこを“ハック”する学習ツール

Batesさんは、Arduboy Miniを何よりもまず授業で使える学習ツールと位置づけています。ただし、ローンチ時にはまずKickstarterのクラウドファンディングキャンペーンとして公開しているので、通常版なら29ドル、Graffiti Editionは34ドルのプレッジで誰でも手にすることができます。配送は来年6月の予定です。教育用に10個セットのプレッジもあり、こちらは240ドルと若干の割引が付いています。
クラウドファンディング、特に電子ガジェットの支援となると、各種部品をめぐるサプライチェーンの問題が解消していないことまで考えると、リスクは付きものです。しかし、Batesさんの場合は初代ArduboyをKickstarterで成功させたという実績があり、こうしたデバイスを消費者に届けるときの課題にも慣れきっています。なので、今度のArduboy Miniに対する支援もリスクはほとんどありませんが、クラファン製品は常に「買い手の責任」であることは、忘れないでおきましょう。