25億人を掌握するデータブローカー、AcxiomのCEOにインタビュー

  • author Thomas Germain - Gizmodo US
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25億人を掌握するデータブローカー、AcxiomのCEOにインタビュー
Acxiomのチャド・エンゲルガウCEO


データブローカー(データ仲介者)。一般の人にはなじみのないお仕事で、その存在すら知らない人が少なくありません。

注目を受けやすいIT業界の中で、最もひっそりしていると言っても過言ではデータブローカー業界。法的規制の対象となることも少なく、メディアのスポットライトが当たることもあまりありません。いち消費者がデータブローカー企業と直接関わることはほぼ皆無な一方で、データブローカー業界はあなたの生活と密接な関係にあります。

Acxiomはそんなデータ仲介を行う企業。ユーザーのアイデンティティ、あなたがどんな人かを定義するお仕事。どんな人で、何が好きで、何にお金を使う傾向にあるのか、顧客である企業があなたを理解するのを手助けするお仕事。

企業が5万人の顧客リストを持つといえば、リストの人々がどんな人かより深く知っているのがAcxiom。企業が次の広告企画に適したターゲットを探りたいといえば、破産経験がある人からヘルスケアにお金を使うラテン系家族まで、どこにどんな人がいるかを知っているのがAcxiom。62カ国で25億人以上のデータを持つと言われているAcxiomには、あなたの個人的な情報もサーバにデータとして記憶されているかもしれません。

AcxiomのCEOであるチャド・エンゲルガウ氏に、米Gizmodoがインタビューを行いました


米Gizmodo編集部(以下米Giz):Acxiomのデータがどこから来るのか、これを普通の人にどう説明しますか?

チャド・エンゲルガウ氏(以下CE):アメリカの話になりますが、誰でもアクセスできるパブリックドメインにあるデータがあります。例えば選挙記録や資産台帳、そのほか政府情報などがこれにあたります。これで基本的な情報は提供されます。

さらに、消費者は生活の中で、無料または低価格で提供されているさまざまなものを利用しており、その代わりとして自分たちについての情報を共有しています。何かしらのフォームに記載したり、プレゼント企画に応募したりですね。そのデータは、GoogleやFacebookのようなウォールドガーデンで管理されることもあれば、より広いエコシステムの中で共有されることもあります。

米Giz:物々交換のように、つまり私のデータと引き換えに無料でサービスを使えているということですね。中にはそれを嫌がる人もいると思いますが、自分のデータをデータブローカー業界に渡さないなんてことはできるものなのですか?

CE:現代生活において、これはもう一般的な事実ですよね。数十年ほど、業界基準以外の規制はないに等しい状況で、私たちは大量のデータにアクセスすることが可能です。市民のデータを公開しているので、そもそもは政府が元ですからね。データは膨大な価値を生みます。ゆえにデータの流れを規制することは、経済成長に大きな影響を与えます。

これはすでに欧州のGDPR(一般データ保護規制)で明らかになっており、意図していなかった影響もあることがわかりました。(規制から)5年後には、多くの中小企業が倒産する一方、GoogleやMetaはより強大な存在になりました。Acxiomのような企業は、ビジネス手法を転換せざるをえなくなりました。つまり、その質問は重要なテーマではあるのですが、簡単に答えられることではないのです。

米Giz:Acxiomがデータをどのように扱っているのか、一般の人でも理解できるように解説をお願いします。

CE:私たちのデータは、個人のグループの理解を深めるために、主に広告主に利用されています。ライフステージや、興味、子どもの有無、購入傾向などですね。私たちの収益の2割は、サードパーティーデータとインサイトによって、顧客が持つデータをより強化することで得ています。

最も大きく、かつさらに成長しているビジネスは、企業のデータを処理することです。何百というデータストリームを集約し、標準化させる技術やインフラを提供しています。オーバーラップ分析やターゲット層の割り出し、マーケティングキャンペーンの調査や解析に利用されています。例えばある会社の買収を考えていたとして、この会社の顧客数はどれくらいで、どういう層の人たちなのかを知りたいと思いますよね。そのときに私たちが提供するサービスが、その顧客それぞれのアイデンティティや家庭、ひいてはビジネスや居住地などを知る手助けになるわけです。

米Giz:みんな最も気になっていると思うのですが、プライバシーについてはどう考えますか? プラットフォーム、アプリ、インターネット全体は、今やインフラだという議論があります。自分のデータを差し出すことにもはや選択権はないように思いますが。法的問題はさておき、個人の同意についてはどう思いますか?

CE:これについては、ここ3年ほど私も訴えかけているのですが、アメリカも欧州のGDPRと似たプライバシー法を制定すべきでしょう。

GDPRで最も重要なことは、データエコシステムは運用に2つのことが必要だということ。消費者から実際に直接データを取る人たち=管理者は、消費者からの同意とデータの使い方を透明化する必要があります。一方で、データのエコシステムにはそのデータを処理する人も必要です。前述しましたが、Axciomのメインビジネスはこちら、他の人のデータを処理することなんです。

同意について常に改善されるべきというのは賛成ですが、そもそも何をもって同意を構成すべきかは明確にはされていません。同意というプロセス自体が明確に定義されていないのです。同意に必要な工程は? 真の透明化とは? これを試すリトマス紙が常に問われ、評価され続けている状態だと思います。

米Giz:昨年Gizmodoは、最高裁の中絶に関する判決をきっかけに、妊娠中の人のリストを販売していた32のデータブローカー企業を特定しました。Acxiomはその中に入っていませんでしたが、これをデータ収集における意図せぬ影響の最たる例だとは思いませんか? このようなリストは悪用されるリスクが高いと思いますが…。Acxiomのような企業によって、一部の人がリスクに晒されてしまうという議論はどう考えますか?

CE:人々に危害を加える可能性があるデータについては提供しないよう、非常に厳格なプロセスを用いています。一般公開されている当社の全データセットリストを見てもらえればわかると思うのですが、私たちが収集し、作成するデータが法律の範疇を超えることはありません。例えば18歳未満の人のデータを管理、作成することはありません。

倫理的観点から、顧客のビジネスや興味に良いとは考えていないので、モバイル端末の位置情報も扱っていません。すべてのケースにおいてこのデータ利用が適切かつ平等なものであるか、また消費者にとってもそうであるか、これによって生じるリスクに見合う価値があるのかどうかを、社内やクライアントと議論しています。高い業界基準を持ち、うちいくつかについては法規制することで、あなたのいうところの意図せぬ影響は多分に回避できると考えています。

米Giz:ちょっと話はそれますが、今、TikTokへの懸念が高まっていますよね。中国共産党にデータ流れちゃうんじゃないかっていう。他のデータエコシステムはその話題の影に隠れていますが、Acxiomはどうなのでしょう? 中国政府関連組織にデータを提供したことはありますか?

CE:私の知る限りではありません。中国はサードパーティーデータが認められていません。中国でのビジネスはありますが、取り扱っているのはファーストパーティデータ(自社収集データ)で、これらのデータを中国国内の既存広告エコシステムと紐づけています。

米Giz:Acxiomが中国顧客向けにファーストデータを補足・強化することはないと?

CE:その通りです。しませんし、そもそも中国政府がそれを許可していません。中国では国民に対してサードパーティーデータを作ることが許されていませんから。

米Giz:メタバースに関心があると聞いています。メタバースは、テック企業がテクノロジーを開発、構築するだけでなく、ブランドがそのプラットフォームを利用するという非常にお金のかかるプロジェクトだと思います。Acxiomのような企業は、投資リターンを補償するため、顧客にどうアドバイスしているのでしょうか。

CE:私たちにとっても、まだまだ初期段階ですが、2つのキー要素があると思います。1つはアイデンティティ。メタバースプラットフォームに参加している個人について、顧客が持つデータ以上に詳しい情報を提供できると思います。メールアドレスでプロットフォームに登録してもらえれば、SNSやモバイルネットワークなどの他のパートナーと連携してユーザーメンバーの理解を深めることができます。

もう1つは、メタバースのプラットフォームは、すべてウォールドガーデンになっていくだろうということ。今現在、我々には18から24の管理報告システムがありますが、パブリッシャーやプラットフォーム側はそのデータを外部で共有することを許可していません。そういうプラットフォームと連携を取ることで、パブリッシャーからは生のデータを、ブランドからはコンバージョンデータを提供してもらいます。私たちはそれを使って、1対1のユーザーエンゲージメントレポートを作成できるのです。

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