バリバリなのがCESの良さとはいえ。
毎年1月に米国で開催される電子機器見本市「CES」(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)。2023年は久々にフル日程でのリアル開催となり、コロナ前の(ちょっとやり過ぎってくらいの)にぎやかさを取り戻しました。テック企業が競うように派手なブースを構築、そぞろ歩く参加者をブースに引き込もうとあの手この手を繰り出し、SamsungやLGの巨大スクリーンやら無数のストロボライトやら、ぴかぴかキラキラな祭典の復活です。
そんなキラキラをほどよく織り込んだブースもある一方、中には目立つことに必死すぎて、どこからが飾りでどこからが本当に売り込みたい製品・技術なのかわからないとこもありました。といっても製品自体のインパクトが大きい場合、売り込み方が不格好でも逆にそれが伝説化したりするんですけどね。
今年のCESではそこまでのレジェンドは生まれてないかもしれませんが、ともあれ、あらぬ方向に頑張りすぎてしまった企業たちをまとめていきます。
1. 変な汗をかきそうなパフォーマンスを見せるBosch

モビリティなどを手がけるドイツのテック企業「Bosch」の「LikeABosch」キャンペーンは、好きな人は好きかもしれませんが、滑ったコメディアン感が否めません。機械学習するセンサー・BHI 380を反応させるべく手の「エクササイズ」を見せてますが、見てるほうが変な汗をかきそうな気もします。
2. 「郵便局に行くのやめよう」と書きたくもなる、米国郵便公社

米国郵便公社(USPS)もCESには長年参加していて、今回は2028年までに6万6000台が稼働予定という配達用巨大電気トラックを出してました。それはいいんですが、展示の中にゲームコーナーがあって、手紙をポストに時間内に届けようっていうゲームです。チープな作りで操作しにくく、みんなをイラっとさせるばかりでした。
さらに隣には配送会社のRolloがあったんですが、そこにも同じくらい大きなトラックが出展されてて、その側面には「郵便局に行くのやめよう」って書かれてました…。
3. 謎のバイクに乗れてしまう、ニコン

日本の光学機器メーカー「ニコン」の巨大ステージではエラい人が入れ替わり立ち替わりレンズにまつわるあれこれを語ってましたが、それだけじゃありません。参加者が乗れるダミーのオートバイがあって、それをロボットに取り付けられたカメラが複数アングルから撮影し、その映像を編集したものが大画面に映るんです。
大画面にカッコよく映ってみたい人は、このブースに興味を持ったかもしれません。でも実際のターゲットである映像制作する人たちの食指がこれで動いたかっていうと、正直わかりません。
4. なぜか滝でTVをアピールした、Hisense

中国の電器メーカー「Hisense」のブースには人工滝が設置されてたんですが、これがただの滝じゃなく、スマート滝なんです。いろんな色に照らされながら「ULED X」みたいな文字やら任意のパターンを表示させ、LEDTVブランドを売り込んでました。
5. 最悪のメタバース体験をさせてくれるVR企業

VR企業「Caliverse」は、小劇場みたいなスペースにVRヘッドセットをたくさん置いて、参加者が試せるようにしてました。
ヘッドセットを着けると彼ら流のメタバース「Caliverse Hyper-Realistic Metaverse」を体験できたんですが、Unreal Engineを使って描かれてたのは、なんでかオフィスビルやショッピングモール。そもそもメタバース全般がどうなんだっていう懐疑を抜きにしても、見ず知らずの人たちと一緒に展示会場に座って架空のモールに行くっていうのは、多分考えうる限り最悪の時間の使い方でした。
6. ホログラムと踊れるだけ、な技術デモ

ホログラム会社「HYPERVSN」は3Dアバター技術をデモしたかったみたいですが、そのためにナードな参加者を踊らせてたのはどうなんでしょうか?
この技術自体は楽しみなんですが、今できてるのは結局、ブレードが回転するタイプのホログラムであって、それだと使える場面がまだまだ限られてしまいます。夢のホログラムとは本当の意味での3Dコンテンツの実現であり、HYPERVSNもこの技術のクールな使い方を見せてはいたものの、現状はまだディテールには乏しいです。
7. ソニーはどうしちゃったの?

ソニーとホンダのEV「Afeela」のプロトタイプは注目こそされてますが、CESに出てきたのは大きくてつるっとした車で、フロントグリルにはスパイダーマンの広告が張り付いてました。
このバーには天気とか充電状態とかも表示されることになってますが、でもとにかくどうしちゃったの…?ってみんなもっと言ってあげたほうがいいです。ソニーはキーノートでもこの車をステージに登場させ、カメラとかセンサーとか、SnapdragonのチップとかUnreal Engineのグラフィックスとかてんこ盛りに貼り付けると言ってました。
8. 何のブースだかわかりにくすぎ

このロゴをカメラのフレームに収めるために、6メートルくらい後ろに下がらなきゃいけませんでした。まず文字が大きすぎて、文字だってことにも気づかないし、文字だってわかったあとも、会社名が「HOL」なのか「HOLO」なのか見極めようとしてるうちに、何のブースだったかも忘れちゃいそうです。
HOLONはLEDを貼ったハコ型の車を次なる自動運転EVとしてプッシュしてます。時速60マイル(約96km)ですが、完全自動運転車が公道を走れる日はまだまだ遠く、まして自動運転タクシーなんていつになるんでしょうね…。
9. コスプレしてたブランドコンサル会社。相談したく…なります?

Copilotはブランドコンサルティング会社なので、CES参加者で知ってる人はあまりいないと思われます。でもこの飛行機のコックピットを模したブースとパイロットのコスプレした人たちを見れば、あぁうちもブランドの相談しようかなーって…思うかなあ。
10. 巨大シャワーヘッドで作った噴水

水回り製品大手のKohlerが用意したのは、巨大シャワーヘッドの噴水でした。単純かもしれないけど、とりあえずここに入って遊びたくはなります。
11. なぜかメタルにアピールされるスマート枕

この壁の向こうに彼らのプロダクトがあるんですけど、外から見て何だかわかるでしょうか? アンプなのかギターなのか? でも入り口横の標識には「STOP SNORING(いびきを止めろ)」とあります。メタル風なお兄さんたちが持ってるギターは、よく見るとおもちゃの、ふくらますやつです。
彼らが売り込みたいものは、いびき対策用スマート枕。いびきを検知すると寝てる人の頭の向きを変えさせ、気道を確保するってものです。でもその枕に触ってみると、柔らかいフォームの中に硬いバーの感触があって、いびき以前に寝心地がどうなんだろう…と、ブースだけじゃなく製品そのものにも疑問を持ってしまうのでした。