化学難燃剤は、燃えにくいことで火災が広がるスピードを緩めてくれます。が、炎的には安全でも健康面の懸念があり、全方位的に安全とはいえず。なんかうまいことできないかなーと、米農務省の農業研究実業団が研究を重ねたところ、できちゃいました。自己消火する綿の誕生です。
Gregory N. Thyssen氏率いる研究チームは、既存の栽培品種の対立遺伝を用いて、新たに10種の綿花品種の開発に成功。それぞれの綿花から生地を作り、燃焼テストを行なったところ、うち4種の綿生地が完全自己消火機能を持つことがわかりました。
健康被害も低減
詳細はPLOS ONEに論文が掲載されていますが、かんたーんにいうとこういうこと。
既存の綿花品種のゲノム解析を行ない、いくつかの遺伝子が難燃作用に関係することを発見。これらの遺伝子は、難燃作用のレベルに等しい表現型を構成することがわかりました(論文では「熱放出力」とされ、これが低いほど難燃作用は高まる)。研究チームのJohnie Jenkins氏とJack McCarty氏が、11の非難燃綿花品種から、熱放出力が異なる10の新種を開発。これに論文執筆を担当したBrian Condon氏のチームが燃焼テストを実施。45度の角度で生地を燃やし、熱放出力が低い4種が自己消火機能に優れていると結論づけました。
Gif: Thyssen et al., 2023, PLOS ONE, CC0米農務省のリリースにて、Condon氏はこう語っています。
商業品種の開発は、綿製品の安全性を高めると共に、科学難燃剤による経済的、観光的影響を軽減させます。この手の開発は、栽培者、生産者、消費者にとって大きな利益となります。
難燃綿花の品種は、生地業界にとってゲームチェンジャーとなります。難燃機能のある生地は、1970年代から開発されていますが、今のところ化学物質を使用して実現しているもの。結果、成分が人体や動物の体内で生物濃縮され、内分泌かく乱作用や生殖障害、発ガン性などのリスクが考えられています。つまり、燃えないけど有害リスクありということ。今回の研究による綿の品種改良で燃えない、かつ安全な生地に1歩近づいたということです。
品種改良ってすごいね。