宇宙に取り残された歴史的&科学的に重要な衛星・探査機+α

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
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宇宙に取り残された歴史的&科学的に重要な衛星・探査機+α
2018年2月6日、打ち上げ直後のイーロン・マスクのテスラ・ロードスターとマネキン人形のStarman
Photo: SpaceX

人類は宇宙開発を進める過程で、数多の人工衛星や探査機などを打ち上げてきました。その中にはミッションの成功や失敗に関係なく、役目を終えた後はポツンと宇宙空間に取り残されたものもあります。それらは軌道上を漂い、惑星や衛星の地表に佇み、星間空間を飛んでいく宇宙探査の置き土産と化すのです。

このような置き土産は、現状のテクノロジーでは回収が不可能なものがほとんどですが、達成したマイルストーンや歴史的な意義、科学的な観点などから見て、価値のある人工衛星や探査機も存在します。

そこで宇宙開発の歴史を振り返りつつ、天文学者のJonathan McDowell氏の意見を交えながら、今まで打ち上げられてきたそういった意味で重要な人工衛星や探査機+αをまとめました。

ヴァンガード1号

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Photo: NASA

1958年3月17日に打ち上げられたヴァンガード1号は、NASAいわく現在も地球の軌道上に残る最古の衛星です。球形で重量は3.21ポンド(約1.46kg)。内蔵バッテリーは打ち上げの数カ月後に寿命を迎えましたが、投入されたのは406×2466マイル(約654×3969km)の楕円軌道なので、衛星自体はあと175年ほど軌道に留まると見込まれています。

アメリカ国防総省は3段式ロケットの実験と宇宙が衛星に与える影響の分析を、ヴァンガード1号で行ないました(米国が打ち上げた衛星としてはまだ2基目だったのです)。太陽電池パネルを利用した最初の衛星でもありました。未だに地球の周りを回っているなんて感慨深いですね。

タイロス1号

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タイロス1号衛星での作業を行なっている技術者たち
Photo: NASA

テレビカメラ搭載赤外線観測衛星タイロス1号は、宇宙に打ち上げられた史上初の気象衛星で、NASAによると「地球の研究において衛星が役立つかどうかを判断する(NASAの)初の実験的なステップ」だったとか。

そういうわけで、気象衛星へ現在の依存度を考えると、途方もない歴史的な価値を持っているのです。このミッションは天気予報に使われる宇宙ベースの気象データをもたらし、(運用期間はたった78日間だったにもかかわらず)大成功しました。タイロス1号は1960年4月1日に地球低軌道へと打ち上げられ、現在も留まっています。

ルナ1号

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アーティストによるルナ2号のイラスト
Image: NASA

ソ連が開発・運用したルナ1号は、初めて月を通過した探査機です。5本のアンテナを備えるも推進システムのない同探査機は、1959年1月2日に打ち上げられました。

月にぶつけることを意図していましたが、月面から3725マイル(5995km)地点を通過。その後は太陽を中心として周回する軌道、その名も太陽周回軌道に突入し、地球と火星の軌道の間のどこかにいるそう。後続ミッションであるルナ2号は月面への衝突に成功し、他の天体の表面に到達した最初の人工物となったのでした。

パイオニア4号

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打ち上げ前に円錐型のパイオニア4号を点検する科学者ジェームズ・ヴァン・アレン
Photo: NASA / JPL

1959年3月3日に打ち上げられたNASAのパイオニア4号は、月面から3万7000マイル(約6万km)の距離を通過。重量13ポンド(約6.08kg)の探査機は月を撮影する計画には失敗しましたが、アメリカの探査機として初めて地球の重力圏を脱して太陽周回軌道に突入し、現在もそこにいます。

テルスター1号

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Photo: NASA / Bell Labs

NASAが1962年7月10日に打ち上げたテルスターは、初の民間出資による宇宙ミッションで、宇宙空間に到達した最初の商業衛星でもあります。以下、NASAがその重要性を説明しています。

数カ月しか運用できず、中継したのは短期間のテレビ信号だったにも関わらず、テルスターはすぐさま世界中の関心を得ました。テルスターによる最初の放送は、ジョン・F. ケネディ大統領やフランスの歌手イヴ・モンタンをはじめ、そよ風の中ではためく星条旗の映像やラシュモア山の静止画などで、今やほとんど当たり前と思われている地球規模の通信の先駆けだったのです。

Video: thebencharz / YouTube

テルスターは曲名にもなっていて、ザ・ベンチャーズが「Telstar」という曲を出しています。同衛星は現在、中軌道を周回しているとのこと。技術的な貢献も文化への影響も非常に大きかったようですね。

インテルサット1号、通称「アーリーバード」

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インテルサット1号のレンダリング画像
Illustration: NASA

インテルサット1号は対地同期軌道へと送られた初の商業通信衛星で、1965年4月6日に打ち上げられています。あだ名は「アーリーバード」で、Hughes Aircraft Company(現Boeing Satellite Systems)が、世界的な通信衛星会社Communications Satellite Corporation(COMSAT:コムサット)のために開発しました。

NASAの説明によると、「ヨーロッパと北米との間に、直接的かつほぼ瞬時の通信接続を初めて提供した」という点で歴史的意義があるようです。予定されていた18カ月間を超えて運用されていた76ポンド(約34.5kg)のアーリーバードは、いったん停止されたものの、アポロ11ミッションの間に再び作動。今は稼働していませんが、現在も赤道上空2万2300マイル(3万5890km)あたりにいます。

マリナー4号

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マリナー4号がエンジン燃焼を行なっているイラスト
Image: NASA / JPL-Caltech

太陽を周回する軌道に放置されているNASAのマリナー4号は、1965年7月15日に火星フライバイを実施し、史上初めて他の惑星のクローズアップ写真を撮った探査機です。

計画では火星最接近までの8カ月間の運用とされていましたが、その後も太陽軌道上で3年間活躍。NASAは、「太陽風の環境の長期的な研究を続け、1967年に金星へと打ち上げられた姉妹探査機マリナー5号と共同で測定を行なっていた」と説明しています。

アポロ8~12号で使われたサターンV 型ロケットの第3段

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分離直後のアポロ8号のS-IVB
Photo: NASA

アポロ計画の間に使われていたサターンV型ロケットの第3段5つも、宇宙で行方不明になっています。第3段の正式名称はS-IVB(読み方はエス・フォー・ビー)で、有人司令船をそれぞれのミッションへと送り出すため月軌道へと乗せていました。アポロ8~12号で使われたS-IVBは現在宇宙を漂っていますが、後継(アポロ13~17号)は科学的な目的のためにわざと月面に激突させられたのでした。

2002年、天文学者がアポロ12号のものと思われるS-IVBを発見。J002E3と命名されました。地球近傍天体研究センター(CNEOS)によると、この物体は小惑星サーベイで容易に検出でき、アマチュア天文学者が観測できるほど明るかったとか。ほかのS-IVBと同じようにJ002E3も太陽周回軌道にいたものの、2002年4月に地球の重力に捉えられたようで、厳密に言えば今や人工惑星なのです。

アポロ11号の黄金のオリーブの枝

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アポロ11号ミッション時に月面に託してきた黄金のオリーブのレプリカ
Photo: NASA

1969年7月のアポロ11号ミッションの最中、NASAの宇宙飛行士ニール・アームストロングとバズ・オルドリンは、平和の象徴である小さな黄金のオリーブの枝を月面に残してきました。これはとてつもなく歴史的に重要な記念品で、オリーブの枝が持つ意味は新たな宇宙開発競争へと進んでいく中で肝に銘じておくべきことです。

月着陸船「イーグル」号の上昇段

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司令船「コロンビア」号に合流する前の「イーグル」号の上昇段
Photo: NASA

アポロ11号ミッションのイーグル号の上昇段がその後どうなったのかは不明ですが、2021年の研究では現在も投棄された月周回軌道上に留まっていると示唆しています。この上昇段は月着陸船「イーグル」号及び初の有人月着陸の重要なコンポーネントとして、思い入れの強い置き土産といえるでしょう。

ベネラ7号

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ベネラ7号探査機
Photo: NASA

地球の邪悪な双子ともいわれる金星に初めて着陸したソ連の探査機ベネラ7号は、金星の地表に横たわって50年以上になるので、原形を留めているかどうか…。力尽きる前に約23分間にわたって信号を送っており、1970年12月にパラシュートの助けを借りて無事に地面に到達したことはわかっています。同探査機のセンサーは摂氏475度という高温を示していたので、今ではどんな姿なのか想像するほかありません。

ゴルフボール2個と即席ゴルフクラブ

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月面に投棄された即席ゴルフクラブと2個あるゴルフボールのうち1個
Photo: NASA

NASAは月面に残されていった人工物のリストを管理しているんですが、それが引くほど長いんです(とはいえ、2012年以降更新されていないので、衝突したベレシート探査機チャンドラヤーン2号の残骸など欠けている品目もあります)。NASAのリストにはレンズキャップ、ハンマー、三脚、爪切りに耳栓など幅広いアイテムが掲載されています。

Video: NASA Video / YouTube

掲載品の中でも特に面白いのは、NASAの宇宙飛行士アラン・シェパードが1971年のアポロ14号の際に月に持ち込んだ2個のゴルフボールと即席ゴルフクラブ(スコップの柄を改良)でしょう。シェパードは2個目を打った後、重力が小さいことから「何マイルも何マイルも」飛んで行ったと発言。このときのボールとジャベリンは、宇宙空間で最も有名なスポーツグッズです。

宇宙のウンチ

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アポロ11号ミッションで置き去りにされたゴミ袋と梱包材
Photo: NASA

アポロ計画の着陸地はすべてそのままにして保護地区として扱うべきだと強い意見もありますが、宇宙飛行士たちが残していった排泄物のゴミ袋も含め回収すべき科学的な価値のあるアイテムもあるかと。

それらの袋の中身である糞尿には、科学者たちがぜひとも研究したいと思うような生物学的な物質が含まれています。これらのゴミの中に生息していたバクテリアなどの微生物はとっくに死んでいるはずですが、惑星間の微生物汚染の話も出ているので、生物学者たちは確認したいようです。

サーベイヤー3号

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サーベイヤー3号を訪れるアポロ12号の宇宙飛行士
Photo: NASA

NASAのサーベイヤー3号は、他の天体の地表で人間に訪問された最初にして唯一の探査機です。1966年から1968年にかけて、NASAはアポロ計画に先立ってサーベイヤー3号と共に複数の着陸探査機を月に送りました。7機あるサーベイヤーのうち5機が軟着陸に成功しましたが、人間が訪れたのはサーベイヤー3号だけ。アポロ12号の宇宙飛行士による功績です。

探査車「ルノホート1号」

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Image: NASA / GSFC / Arizona State University

1970年11月17日、月面に初めて車輪付きローバーが着陸しました。ソビエト連邦の8輪ローバールノホート1号は停止するまでの間、月のレゴリス(土壌)の組成や現地の地形に関する貴重な情報を送信していたのです。現在は雨の海で塵を被っていますが、頭上を通る衛星からはその姿が見えています。

アポロ15~17号のムーンバギー

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アポロ15ミッションの月面車
Photo: NASA

アポロ計画の宇宙飛行士たちは3台の月面車、LRVを残していきました。これらは地球以外の天体で運転された初の車両です。この偉業には未だに圧倒されてしまいます。高い信頼性を誇り「ムーンバギー」の愛称で親しまれ、アポロ15〜17ミッションでは宇宙飛行士や貨物を何マイルにもわたって運んでいました。

パイオニア10号

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星間空間へ向かうパイオニア10号のイラスト
Illustration: NASA / Ames

1972年3月2日に打ち上げられたパイオニア10号は、外惑星を訪れた初のミッションで、1973年12月4日に木星に最接近しました。この探査機はそれ以前のどの宇宙機よりも遠い距離を旅する過程で、土星と海王星の軌道を横断。

パイオニア10号の最後の信号は2003年1月に受信され、現在は赤星アルデバランの方向で太陽系を脱する軌道に乗っています。同探査機は、宇宙人へのメッセージを盛り込んだ金属板を搭載していることでも有名です。

バイキング1号

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火星でバイキング1号のランダーが掘った溝
Photo: NASA

NASAのバイキング1号のランダーは1976年7月20日に火星に着陸し、塵が積もり石だらけな地表の写真を撮影。定置型の同探査機はクリュセ平原西部の傾斜地で、火星の土壌に関する重要な化学データを収集しました。バイキング1号は火星への着陸に成功した初のランダーで、スミソニアン国立航空宇宙博物館がその所有権を主張してます。

スピッツァー宇宙望遠鏡とケプラー宇宙望遠鏡

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アーティストによるスピッツァー宇宙望遠鏡のイラスト
Image: NASA / JPL-Caltech

スピッツァーとケプラーは、共に役目を終えたNASAの宇宙望遠鏡です。赤外線宇宙望遠鏡であるスピッツァーは2003年から2020年まで運用され、さまざまな天文現象の中でも星のゆりかご、ホット・ジュピターや遠方の星々の天文学的なデータを収集。

2009年から2018年まで運用されたケプラーは勇敢な惑星ハンターで、2600個以上の太陽系外惑星の発見に貢献しました。どちらも宇宙に留まっていてスピッツァーは地球を追いかける軌道、ケプラーは太陽を周回する軌道に乗っているようです。

ソジャーナ

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火星で仕事に勤しむ「ソジャーナ」ローバー
Image: NASA

ソジャーナは重量25ポンド(約11.5kg)のNASAの火星ローバーで、他の惑星の地表を運転した最初の車輪付き探査車でもあります。1997年のマーズ・パスファインダー計画の重要なコンポーネントとして、ソジャーナは83日間を写真撮影や化学&大気データの収集と、赤い惑星の探査に費やしました。現在もクリュセ平原にいるそうですが、火星の塵の層に覆われていることでしょう。

ホイヘンス

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アーティストによるタイタンでのホイヘンス・プローブのイラスト
Image: ESA

欧州宇宙機関(ESA)の小型探査機ホイヘンスは、土星の衛星タイタンの油の海に飲み込まれていなければ、その地表のどこかに横たわっているはず。同探査機は2時間27分間に及ぶパラシュートを使った降下を経て、2005年1月14日によどんだ衛星に降り立ちました。観測は72分間しかできなかったものの、この着陸は太陽系外縁部での最初にして唯一の成功した事例となったのでした。

イーロン・マスクのテスラ・ロードスター

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打ち上げ直後の赤いテスラ・ロードスターとマネキン人形「Starman」
Photo: SpaceX

イーロン・マスクのテスラ・ロードスターは今や火星の軌道を超えて、太陽周回軌道に乗っているんですよね。宇宙空間を漂う赤いロードスターという絵面の強さよ…。SpaceX(スペースX)のCEOは2018年2月6日、この車両を積んでファルコン・ヘビー・ロケットの初打ち上げを敢行していました。ロードスターに乗車しているのはStarmanという名のマネキン人形です。


約40年前のNASA観測衛星、ベーリング海上空に落下

40年前に打ち上げられた地球放射収支衛星(ERBS)が役割を終えてベーリング海に落下。地球のエネルギー収支観測に貢献。

https://www.gizmodo.jp/2023/01/erbs-fell-into-the-bering-sea.html

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