NASAは商用航空における燃料消費量とCO2排出量を減らすため、遷音速トラス支持翼デザインの実証機を開発するBoeing(ボーイング)社に4億2500万ドル(約550億円)を出資すると発表しました。
先日行なわれた記者会見によると、NASAはこの航空機の飛行テストを2028年に予定しているとのこと。NASAのビル・ネルソン長官はリリースに以下のコメントを寄せていました。
「NASAとBoeingとのパートナーシップで原寸大の実証機を生み出して検証することによって、低燃費な未来の商用旅客機へとつながり、環境・商用航空業界・そして世界中の乗客に恩恵をもたらすというのが我々のゴールです」
「もしうまくいけば、2030年代に皆さんが乗る飛行機にこのようなテクノロジーが導入されているかもしれません」
同航空機のデザインは一見したところ、従来の商用ジェットのように見えます。しかし、主翼は機体の総重量を軽くする長くて薄い形状となっていて、この薄い主翼を下から支柱で支えるトラス構造を採用。また、このデザインは機体の空気抵抗も減らすそう。
このようなイノベーションとその他諸々を含め、NASAいわく今ある最も燃費のよい単通路機と比べても、燃料消費とCO2排出量を30%ほど削減できるとのこと。

Photo: NASA / Joel Kowsky
次世代型旅客機につながる
Boeingは、NASAのSustainable Flight National Partnership(持続可能なフライトの国家的なパートナーシップ、SFNP)を通して遷音速トラス支持翼構造を開発しているところです。SFNPは2050年時点でのネットゼロ達成に向けて、環境に優しい航空機を作るサステナブルな航空技術の開発に注力しているイニシアティブです。
現在も試運転が実施されているEasyJetの水素を動力源とするエンジンも、ジェット燃料を丸ごと取り除くことでこの目標に対処しようとしています。
NASAは他の新技術にも取り組んでいます。同局の「X-57 Maxwell(マクスウェル)」は、初の飛行テストを控える電動航空機。14個のプロペラを搭載したX-57は、Tecnam(テクナム) P2006Tを改良したコックピットに積載されたリチウムイオン電池で動きます。
2021年4月には、火星ヘリコプター「インジェニュイティ」が地球以外の惑星で動力制御飛行を行なった最初の航空機となったばかりですが、電動航空機技術の研究はNASAの地球外でのゴールへも恩恵をもたらしそうです。
遷音速トラス支持翼コンセプトの実証機及びそのCO2排出削減の能力の立証に、 今後7年間でNASAは4億2500万ドルを投資し、Boeingとその業界パートナーが7億2500万ドル(約940億円)を拠出します。 2028年の飛行テストがうまくいけば、2030年代には次世代型の旅客機が運航している可能性もあります。
Source: NASA