昔の職人、技術力が高い!
コペンハーゲンに人魚姫の像があるように、西洋ではポピュラーな伝説の生物「人魚」。一方日本では、大昔に人魚のミイラを作っていたことが知られており、筆者も子供の頃はオカルト系の本などを読んでは、本物を見てみたいと思ったものでした。
人魚のミイラに科学のメスが入る
岡山県にある圓珠院にも、そんな人魚のミイラが保存されています。倉敷芸術科学大学では、2022年2月2日からそのミイラを科学的に分析するプロジェクト行われており、ついに最終報告が発表されました。
人魚ミイラの実態解明/圓珠院所蔵『人魚のミイラ』研究最終報告https://t.co/gPUmsh2jqvpic.twitter.com/o5v48PZmHO
— 倉敷芸術科学大学 入試広報部 (@kusa_nyushikoho) February 7, 2023
外側について
頭と眉と口の周りにはキューティクルのある哺乳類の体毛があり、両目は正面を向き、耳には外耳道と鼻には鼻孔が確認されました。両腕の指は5本で動物の角質を持つ爪がある点でも人間にソックリ。
歯は何らかの肉食性の魚類の顎で、下半身は背ビレ、腹ビレ、臀ビレ、尾ビレがあり、ウロコに覆われています。体表には、砂や炭の粉を糊状のもので溶いた塗料で塗られていることが解明されました。
X線とCT撮影で内側を調査
内部に木や金属の心材は無く、布、紙、綿などが使われているころが判明。腕と肩、首から頬までフグ科魚類の皮が貼られており、ヒレ類にはそれらを支える担鰭骨、尾部骨格が確認され、首の奥と下半身に金属製の針が見つかりました。
その他炭素14年代測定では、剥離したウロコの年代は1800年代後半の可能性が高く、蛍光X線分析では特別な防腐処理はない、そしてDNA分析では何も検出できなかった、とあります。

まとめにはこうあります。
ニベ科の魚類の皮で覆われ、上半身は、布、紙、綿などの詰め物と漆喰様の物質を土台として、積層した紙とフグの皮でできており、1800年台後半ごろのものと推測される
結局上半身は完全な人工物だったわけですが、反対に当時の職人レベルの高さが垣間見えるんじゃないかとも思います。
人魚のミイラの上半身には、猿が使われているなんて話を聞いた記憶がありますが、 圓珠院だけが違うのか? 他はどうなのか? それは今後の調査で判明すると良いですね。日本では他にも12体が存在しているというので、ぜひともコンプリートしてもらいたいところです。
ロマンが現実に引き戻される覚悟
ミイラ作りはエジプトが本場で、先日は100年以上前に見つかった少年のミイラがCTスキャンされたという話がありました。今は科学技術の発展でミイラの死因なども判明する代わりに、人魚のミイラが作り物だった事実に一抹の寂しさも覚えたりして…ロマンに対して忖度のない科学は非情ですね。