恐竜は哺乳類を食べていた!胃に哺乳類の足の化石発見

  • author Isaac Schultz – Gizmodo US
  • [原文]
  • 門脇恵実/Word Connection JAPAN
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恐竜は哺乳類を食べていた!胃に哺乳類の足の化石発見
哺乳類の足を捕食する、ミクロラプトルの想像図 Image: Ralph Attanasia

1億年前に生息した小型羽毛恐竜 「ミクロラプトル」の胃に、なんと「最後の晩餐」の化石が残っていました。

それは、すぐには信じられない光景でした。小型四翼恐竜の胃の中に、哺乳類の足の化石があったのです!

調査チームによれば、恐竜が哺乳類を食べていた証拠が初めて認められたとのこと。この恐竜の学名は「とても小さい泥棒」を意味するミクロラプトル・ザオイアヌス(Microraptor zhaoianus、以下、ミクロラプトル)と言い、これまでに鳥、魚、トカゲを捕食していたことを示す化石が発見されています。

今回の化石から、ミクロラプトルがタンパク質補給源として哺乳類を狩る勇猛なハンターだったことが明らかになりました。化石を再精査した研究チームの調査結果は、2022年12月20日付けの学術雑誌the Journal of Vertebrate Paleontology(古脊椎動物学雑誌)に掲載されています

ミクロラプトルは雑食だった

米Gizmodoの取材に対し、この論文の筆頭著者である、カナダのマギル大学の古生物学者、Hans Larsson氏は、メールで次のように説明しています。

「小型恐竜ミクロラプトルが、えり好みせずあらゆる餌を食べていたことが実証されたのです。哺乳類が胃にあったことから、ミクロラプトルは餌を限定せず何でも食べていた(特殊な食性を持たない)ことがわかりました。」

ミクロラプトルは白亜紀前期に生息し、樹上で生活していました。その化石は現在の中国北東部一帯で発掘されています。

この一帯は熱河層群と呼ばれる有数の化石産地ですが、化石の保存状態が良いため、恐竜の解剖学的知見を深めたり、さまざまな動物種が生きていくために不可欠な環境範囲(生態的地位)を考えたりするうえで、重要な情報源となっています。

ミクロラプトルは樹木の中で生活し、白亜紀の森林を滑空して枝や地上の獲物を狙って捕食していたと考えられています。

今回調査された標本は、発見された恐竜を新種として証明し、学名を付ける際の基準となる「ホロタイプ(正基準標本)」です。この化石は2000年に発見され、このほど再調査された収蔵品で、哺乳類の足が含まれていたおそらく初の例です。

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ミクロラプトルの化石の中に見つかった哺乳類の足(中央) Photo: Hans Larsson

調査チームは哺乳類の種を特定できませんでしたが、ミクロラプトル内に保存されていた足の発見という幸運から、その哺乳類の生態的地位や捕食動物が明らかになりました。

米テネシー大学の古生物学者、Stephanie Drumheller-Horton氏は今回の論文執筆者ではありませんが、米Gizmodoの取材に対し、メールで次のように返答してくれました。

「胃の内容物は、恐竜が日常食べていたものをはからずも教えてくれます。しかし化石化した恐竜の胃に捕食物が残っている例はまれなため、恐竜が『最後の晩餐』で飲み下したものは常食なのか、たまたま初めて食べたものがラッキーにも化石となったのか、判別しづらいこともあります。」

ドラムヘラー・ホートン氏は説明を続けます。

「一方、ミクロラプトルはさまざまな『最後の食事』が胃に残った美しい化石標本状態で保存されているため、例外として非常に興味深い存在になっています。以上から、ミクロラプトルはえり好みせず、環境内のあらゆる種類の小型動物を食べていたことを、今回の論文は説得力を持って主張していると言えます」

食べられた哺乳類の分析

今回の哺乳類の足の化石は、人類の遠い祖先と同属ではないようです。

調査チームによれば、形態学上ではほぼオポッサムや齧歯類動物のような外観の、初期哺乳類の太古種であるシノデルフィス、ヤノコノドン、エオマイアなどに類似しているとのことです。

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獲物をくわえたミクロラプトルの想像図 Image: Hans Larsson

この哺乳類の大きさは、ネズミほどでした。 この生き物は、木に登ることができなかった可能性があり、これは、ミクロラプトルが時折地上に急降下して餌を捕獲していた可能性があると調査チームは分析しています。

「ミクロラプトルの胸郭にあった『足』は完全に原形をとどめたまま、丸飲みされたようです。全身の何割ほどが飲まれたのかは不明ですが、足の周囲に未確認の骨が散在していたため、足以外に食べられた部位もあったと思います。」

とラーソン氏。

ミクロラプトルがこの哺乳類を生きたまま捕獲したのか、すでに死骸だったものをあさったのか、調査チームは判別できませんでした。

これまでも熱河層群から幸運がもたらされたことを思うと、獲物が胃に残った化石の調査が進み、白亜紀の食事事情がもっと明らかになるのも時間の問題でしょう。

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https://www.gizmodo.jp/2023/01/titanosaur-nests-eggs-fossils-found-india.html