1つのマシンを使い続ける思想、着々と実践。
2021年に登場したモジュール式ノートPC「Framework」。2022年にはそのコンセプト通り、第12世代Intel CPUモジュールでのアップグレードも果たしました。第13世代もそろそろというこのタイミングで、米GizmodoのRachael Phillips記者が第12世代搭載Frameworkをレビューしてます。以下どうぞ!
テクノロジーのゴミってほんとに問題です。多くのテック企業が次なる最薄、最速、最強ノートPCを生み出そうと躍起になる中、Frameworkはちょっと違う方向を打ち出してます。サンフランシスコを拠点とするFrameworkは、我々が慣れきってしまった使い捨て文化を否定し、ユーザーが自分でアップグレードや修理、カスタマイズできるノートPCをリリースしました。それでいて超ポータブルで、価格も手ごろなんです。
FrameworkのノートPCは2021年に発売されたんですが、2022年には初めて、新しいチップでアップグレードされました。第13世代Intel Coreシリーズ搭載機ももうじきリリースされるはずなので、このへんで第12世代を振り返っておきたいです。
レビューしたのは第12世代Intel Core CPU搭載の「プロフェッショナル」モデルで、ストレージは1TB、RAMはDDR4 32GBです。
第12世代Intel Core搭載 Framework
モジュール式でユーザー自身での修理・アップグレードが可能なように設計されたノートPC。すっきりしたデザインで動作も快適。モデルは3タイプあり、自分でオプションを選んで理想のマシンを作り出せます。

これは何?:FrameworkノートPC(第12世代 Intel Core)Professional
価格:1,013ドル(約13万円)から。レビュー機は2,013ドル(約27万円)
好きなところ:軽量、修理やアップグレード可能、パワフルな性能、リサイクル素材で作られている
好きじゃないところ:Frameworkの会社がなくなったら困る、オーディオ品質が平均以下
約1,000ドルから、3モデルあり
FrameworkのWebサイトに行くと、オプションが2つあります。出来合い構成のモデルと、自分で好きな構成を最初から作れるDIYモデルです。
簡単なのが好きな人は出来合いから選んでOKで、その中にも「ベース」「パフォーマンス」「プロフェッショナル」の3タイプがあります。ちなみに上の価格はUSB-C拡張カード4つだけを搭載した初期設定のものなので、もしUSB-AとかmicroSDとかのカードを追加すると、その分お値段が上がります。
「ベース」モデルは1,013ドル(約13万円)からで、中身はCPUがIntel Core i5-1240P、ストレージが256GB、RAMがDDR4 8GB、OSがWindows 11 Homeです。
「パフォーマンス」モデルは真ん中のオプションで、価格は1,413ドル(約19万円)から。CPUはIntel Core i7-1260P、ストレージが512GB、RAMがDDR4 16GB、OSはWindows 11 Homeです。
「プロフェッショナル」モデルは2,013ドル(約27万円)から、CPUはIntel Core i7-1280P、ストレージが1TB、RAMがDDR4 32GB、OSがWindows 11 Proです。

どのモデルにも、2Wのステレオスピーカー、プライバシースイッチの付いたMEMSデュアルマイク、3.5mmコンボヘッドホンジャック搭載です。
モデルを選んだら次はカスタマイズで、キーボードレイアウトや拡張カードを選びます。拡張カード用スロットは4つあり、USB-A、USB-C、DisplayPort、MicroSD、HDMI、イーサネットから選択できます。ストレージも250GBから1TBまで選択肢があります。
それで完了なので、普通のノートPC購入プロセスとだいたい同じです。ただ違うのはFrameworkの場合、何か問題があったとき、またはノートPC全体を買うんじゃなくアップグレードだけしたいときは、Frameworkのマーケットプレイスに行って必要なパーツを自分で買えることです。
この第12世代Intel Core 搭載機のレビューはタイミング的には遅いんですが、例えば第13世代のメインボードが発売されたらそれを買って、この第12世代マシンに差し込んでアップグレードすることもできるんです。
拡張カードはいろいろ提供されていて、自分で簡単に変更できました。取り付けはただ差し込むだけ、取り外しはボタンを押すだけです。USB-Aを外してHDMIに切り替え、モニターをつないだりできるのはすごく楽しいです。
一見普通、でもやってることがすごい
FrameworkノートPCの見た目には何も面白いものはありません。一見よくある、カフェに行けば誰かしらが開いてる、薄いアルミの筐体です。でも、Frameworkのデザインには特別なことがあります。持続可能性への努力を一歩進めて、筐体のアルミ部分には50%、プラスチックには30%、リサイクルされた原料を使ってます。しかも頑丈でプレミアム感もあります。筐体も修理・アップグレード可能なので、落としたりしたときにも助かります。
Frameworkはとても軽くすっきりしていて、重量は1.3kg、サイズは11.7×9×0.63インチ(29.7×22.9×1.6cm)です。モジュール式っていうとかさばりそうだけど、すごく薄いです。スクリーンは片手でも簡単に開けて、180度開けてフラットになります。
ベース部分には5つネジがあり、取り外すと中のパーツにアクセスできますが、ネジが小さくて外すのはちょっと大変でした。でも、各種パーツにはちゃんとラベリングされてるので、名前や数の確認は簡単です。ネジに合ったドライバーも付属してきます。

画面は13.5インチ、アスペクト比は3:2で、黒いベゼルはサイドが細く、上下はやや太め。ベゼルにはWebカムやマイクのキルスイッチが入ってるので、太くていいんです。この部分だけちょっと頼りなく、プラスチック感があります。特にスイッチはちゃんとできてるのかな?ってくらいです。ベゼルはマグネット式で、好きな色に交換できます。
快適なキーボードにトラックパッド
キーボード周りにはクールな機能があります。まずキーボード右側に指紋リーダーがあり、ログインとかGoogle Payなどのサービス利用が楽になります。Functionキーの列にはフライトモードキーがあるので、飛行機によく乗る人なら30秒くらい時短になります。
キーボードはバックライト内蔵で、Caps Lockのインジケーターもあります。全体にタイプしやすくて、キートラベルが1.5mmで素早くパンチがあり、音も程良いです。スペースはたっぷりあって、すぐに慣れることができ、早い動作でも間違ったキーを押したりはしませんでした。
タッチパッドも4.5×3インチ(約11.4×7.6cm)あって気持ちよく使えます。Windowsのジェスチャーがみんなきちんとできて、タップやスワイプ、クリックの反応も良いです。
画面はキレイ、音は…うーん
Frameworkはどのモデルも画面は13.5インチで、解像度2,256×1,504、最大輝度は400ニトで、ほとんどの場面でパーフェクトです。有機ELじゃないので、映画を見ると「あ、違う」とすぐにわかりますが、色がきれいじゃないってことじゃありません。
色のレンジが広い映画ってことで『アベンジャーズ:エンドゲーム』を見たんですが、黒が若干浅くグレーっぽかった程度で、色はくっきり鮮やかでした。それに画面の視野角が広くて、いろんな明るさと角度で見てみましたが、グレアはそんなにありませんでした。

ただ映画やTV視聴用にもガンガン使えるかっていうと、アスペクト比が3:2なのでちょっと違うかなと思います。でも、一般的なノートPCより縦に長い分、文書作成にはぴったりです。なのでFrameworkは、クリエイティブな作業や娯楽じゃなくて、仕事向きのノートPCといっていいと思います。
きらびやかな有機ELディスプレイとか深みのある音質を押し出すノートPCも多い中、Frameworkは作業をきっちりできるマシンです。ライターにとってもいろんな書類仕事の人にとっても、これ以上のものはありません。
スピーカーといえば、ジェニファー・ロペスが『Let's get loud』をリリースしたとき、Frameworkのことを言ってたんだと思います。要するに音がでかいです。テスト中にうっかりフル音量にしてしまい、スマートウォッチから「耳に悪いですよ」って通知が来たくらいです。
90年代ソング、Backstreet Boysの『Everybody』を聴いてみたら、近所の人にも聴こえるくらい音量だけはありましたが、低音が抜けててクリアさもまあまあ欠けてました。でも、犯罪ノンフィクションのポッドキャストを聴いてたときは、セリフの部分はすごくクリアでした。
満足度高いWebカムとマイク
FrameworkのWebカムの解像度は1080pで、動画クオリティはすごく高く、Teamsで会議をしてみたところ、色褪せたりピクセルが目立ったりもしませんでした。マイクもちゃんと声をクリアに拾ってました。
最近他のPCで見るようになった背景音を消すオプションは内蔵されてませんが、それはいろんなソフトウェアでも可能なので、Frameworkとして入ってなくても大丈夫ですね。上にも書きましたが、カメラとマイクにはプライバシーカバーがあり、見聞きされたくないときは物理的に遮断できます。
安定したパフォーマンス
Frameworkは見た目MacBookみたいかもしれませんが、ターゲットはどっちかというとコンテンツクリエイターというより、日常タスクをこなせる安定したウルトラポータブル機を求める人です。とはいえ、動作は本当に速いです。チップがIntel 第12世代Core i7-1280Pで、同じサイズの他のノートPCに多いUモデルより少しパワフルだから、かもしれません。
私が試したモデルは出来合いのFrameworkで、RAMは32GB、ストレージは1TBでした。このRAMのおかげで、マルチタスクしてもラグや遅れがありませんでした。私はタブ開きすぎ、書類開きすぎの常習犯なので、Frameworkの動作には良い意味で驚きました。最高にとっちらかった状態でも動作が遅れたり、止まったりすることは一度もなかったんです。ちなみに私の2020年モデルのMacBook Proだと、まだ苦戦することが多いんです。
Frameworkは文書作成やコーディング向きのマシンと書きましたが、Adobe Photoshopでの動作も一応試してみました。これも良い意味のサプライズで、複数の画像を編集しててもラグはなく、グルグルアイコンが出てきがちなエクスポート作業でも大丈夫でした。もちろんこれはモデルによって違うかもしれないんですが、とにかくi7-1280Pと32GB RAM搭載のレビュー機はちゃんと動きました。限界まで負荷をかけても熱くならず、ファンの音が異様に大きくなったりもしませんでした。

ベンチマークテストでは、FrameworkのGeekbench 5スコアはシングルコアが1,233、マルチコアが7,365でした。Cinebench R23ではさらに良い結果で、シングルコアスコアが1,742、マルチコアが10,448と、Dell XPS 13とそんなに変わりません。あとはBlenderのテストもしました。BMWのモデルをレンダリングするBlenderのテストもしてみたら、Frameworkでかかった時間は約4.1分と、かなり速くこなせました。
ゲーミングに関しては、Frameworkは全然向いてないですが、『Far Cry 5』と『Shadow of the Tomb Raider』を、できる限り最高の設定で試してみました。『Far Cry 5』はちょっと遅い18fps、『Shadow of the Tomb Raider』は多少ベターは34bpsという結果でした。ゲームプレイは遅めでかなりガタつきもあるので、熱心なゲーマーはターゲットじゃないってことでしょう。
ウルトラポータブルマシンの場合、一番犠牲になりがちなのはバッテリーライフです。Framework公式のバッテリー保持時間は見つけられなかったんですが、やっぱりバッテリーは心許ないです。画面輝度を200ニトに設定して動画を連続再生するテストをしてみたところ、持ち時間は5時間30分でした。仕事時間が8時間とすると、それをフルにカバーできないのは残念ですね。でも、Frameworkは常に進化しているし、バッテリーが劣化したら交換もできます。なので将来的には、もっと大容量のバッテリーに替えられるかもしれません。
Intel第12世代搭載Framework、買うべき?

ノートPCでこんなにワクワクできたのは、すごく久しぶりです。Frameworkのコンセプトを初めて知ったときから、試してみるのが楽しみでした。私にとっては期待通りです。これはビジネスのためのノートPCで、ゲーミングやクリエイティブ作業のためのものじゃありません。シリアスな日々の仕事のためのノートPCとして、ユーザーと共に熟成していくんです。
モジュールを交換できるってことは、その日に必要な機能をすぐ入れられるってことでもあります。ただ欠点は、Frameworkのエコシステムが存在し続けなければ、いつか使えなくなってしまうことです。もちろんFrameworkという会社が明日なくなったとしても、マシンそのものは普通に使えるはずですが、「自分で簡単にアップグレード・修理できる」という魅力は幻と消えてしまう、はずです。
でも、今のところは、私だったらFrameworkを買っちゃいます。ターゲット層が求めるものが全部そろっていて、それ以上のものもあります。超軽量で動作が速いだけじゃなく、テクノロジーのゴミを(他のマシンほどには)出さなくて済むんですから。