小さいけど、後に大きな被害が出てくるプラスチックゴミ。
去年から、フランスの海岸に謎のプラスチックが大量に流れ付くようになりました。「人魚の涙」とも呼ばれていますが、現実はそんな美しいものではなく、これは工業用のプラスチックペレット。私たちが毎日使うプラスチック製品の元となるもので、これを溶かして製品を作っているんです。そのプラスチックがフランスの海岸に何千万と流れてくるので、フランスの環境大臣も困り果てて「環境的には悪夢としか言いようがありません」と声明を出しています。
元の持ち主は誰?
今のところ、どこから流れてきているのかは不明です。フランスの海岸には「人魚の涙」以外にもヘンテコなものが流れ着いたことが以前にもいくつかあって、その1つが大量の「ガーフィールド電話」。
このときは80年代に漂着していたガーフィールド電話のコンテナが、時間をかけて壊れて流れ出したという結果でした。なので、今回のプラスチックペレットも、おそらくペレットを大量に積んだコンテナが破損して中身が流れ出てきているのでは?と予想されています。
ガーフィールド電話と違って、プラスチックペレットはどこにでもある製品。なので、フランス政府は製造元、輸送業者などを見つけ出すのは難しいだろうと述べています。とはいえ、こんなにたくさんのプラスチックが流れ着いた地域の人たちはたまったもんじゃありません。持ち主がわからないまま、流れ着いたいくつかの海岸の町の市長たちが公式に苦情を申請。それに対しフランス政府は、影響を受けている地域にできるだけのサポートをすると返答しています。
なんとかせねば、と非営利の環境団体「サーフライダー ファウンデーション ヨーロッパ」がお掃除イベントを企画。90人のボランティアが参加して6万個以上のプラスチックペレットを回収したそうです。6万個!と思いますが、この超大量の細かいペレットを考えると、バケツいっぱいの水のほんの一滴くらいの量です。ボランティアのひとりは「全部を回収したいけれど、多すぎて無理。無限にありますから」と答えています。
環境には悪いことだらけ
人間とプラスチックペレットの戦いは今回が初めてではありません。2021年の5月、スリランカの沖合でプラスチックペレットのコンテナを87個積んでいた船が沈みました。この事故について国連は「前代未聞の海での惨事」と報告しています。
この小さなプラスチックペレットは海洋生物が食べてしまったり、とにかく海にダメージしか与えないひどいもの。例えばプラスチックペレットを食べた魚を人間が食べたら、人間の体にまで入ってきてしまいます。人間の体内にプラスチックが入ってしまうのは、かなり危険です。大腸系の疾患、糖尿病、ガンを引き起こす要因とされています。
プラスチックペレットは海洋生物や人間だけでなく、もちろん海自体にも悪い影響があります。プラスチックは毒素を含んでいるので、海に毒素を放出してしまうのです。また、危険な病原体を蓄積・媒介もしてしまうそうで、海に漂流しているうちにどんどん小さくなって、さらに海洋生物が口に入れやすい大きさとなって、毒素だけでなく病原体も運んでいるプラスチックを食べる危険性があるのです。
明らかに良くないことばかりなのに、プラスチックゴミを作り続ける企業が多く、しかも医療のためならまだしも、1回使ってゴミ箱行きのプラスチックでなくてもいいものの方が多いのが現状です。今、こうして海に放出されたプラスチックペレットのために、今後何年も大変な思いをしてコストがかかる結果になるのなら、逆に今コストをかけてゴミを減らすほうが賢明じゃないでしょうか。考えさせられる「人魚の涙」事件ですね。