次世代ってこういうことなのかな。
マイクロソフトが「AI熱」にかかったもようです。その唯一の治療法が、ChatGPTのような大規模言語モデルをすべてのエンドユーザ向けプログラムに搭載することなのかもしれません。
金曜日、The Vergeから気になる記事が出ました。ある情報筋によると、マイクロソフトはOpenAIの技術をOfficeアプリに統合する計画の詳細を発表予定なんだとか。
同プランにはWordやPowerPoint、Outlookといった主要ソフトも含まれるようです。同社がAIベースの検索システムをいち早く公開したスピード感を思えば、今回の新システムのデモを見られる日もそう遠くないかもしれません。
Office+ChatGPT、どうなる?
先月にはテクノロジー系ニュースサイトのThe Informationも「マイクロソフトがOfficeアプリにOpenAIのシステムを組み込む方向で議論している」と報じていますし、少なくとも何かが進行中とみて間違いなさそう。
ちなみに、この報道はマイクロソフトがOpenAIと数十億ドル規模のパートナーシップ更新を正式発表する前のもの。
当時、同社は1年以上にわたってAI技術によるメールや文書作成に取り組んでいましたが、多くの顧客はそもそもマイクロソフトの文書作成ソフトを使っているので、その作業の邪魔にならないか気にする必要がありました。
The Vergeの報道によると、3月中にはその概要が明らかになりそうです。先週、マイクロソフトはAIを搭載した“Viva Sales”のデモを公開しているので、すでに同社の大規模言語モデル「プロメテウス」がOutlookでどんな感じになるのか知ることは可能です。
同社はデモを通じ、“Azure Open AI”が「ユーザが要求する回答の種類に基づき、原稿を生成することができる」とコメントしています。
新しいBingには、チャットと文書生成タブの2システムが組み込まれていますが、WordやOutlookと連携するとしたら後者が近いのではないかと思われます。
また、マイクロソフトはPowerPointに使える図表も生成したい考えで、スライドショー方式を残しつつ、重めの作業はほとんどAIにやらせたいようです。
ちなみに今回はExcelには触れられていませんが、AIは事実や数字を誤る恐れがあるので、Excelとの統合は諸刃の剣だと言えるでしょう。Googleが先日初披露したAI検索の様子を見ても、これはわかります。
使い物になるかは正直不安
確かに、技術面での進歩は目覚ましく、OpenAIのサム・アルトマンCEOは先日自らのテクノロジーについて「できることは非常に制限されていますが、優れていると誤解を招くような印象を与えるのには十分です」だと話しています。
多くの人(私を含め)がChatGPTを活用してメールを書いてみましたが、その結果は正直イマイチ。Business Insiderは、ChatGPTを使ったら本文中でメールの著者と件名がごっちゃになってしまった、と紹介しています。
先日はコンピュータ雑誌PCWorldは「様々な民族のニックネームを教えて」とBing AIに頼んだところ、少数民族を中傷する内容の文書を生成し始めたと詳細に伝えています。
このような事態が起きた理由をPCWorldがマイクロソフト側に尋ねたところ、「当社では速やかに対応し、この問題に対処すべく改善策を検討しています」と回答を得ました。
マイクロソフトが開発中のAIではデータセットが常に進化しているため、いかにしてシステムが生成する内容を「抑えるか」が大きな課題となります。
諸刃の剣を扱えるか
OpenAIは膨大な数の低賃金労働者と契約し、大量の有害コンテンツをふるいにかけることで、ChatGPTをギリギリのラインで維持しています。今のところマイクロソフトが「プロメテウス」にどのような安全策を取り入れるかは不明。
少なくとも情報筋がThe Vergeに語ったところによれば、同社の幹部はAIが有害になる可能性よりも、Googleのような大手ライバル社に先を越されて生産性ビジネスを「破壊」されることを恐れているようです。