Pornhubにアクセスするのに身分証が必要な地域がある

  • author Lauren Leffer - Gizmodo US
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Pornhubにアクセスするのに身分証が必要な地域がある
Image: New Africa (Shutterstock)

ルイジアナ州法HB 142が1月1日付で発効し、アダルトコンテンツが3分の1以上を占めるサイトでは公的な身分証明書による年齢認証が義務化されました。

未成年の目からアダルトコンテンツを遠ざけようとする試みはこれまでもありましたが、まさにイタチごっこの繰り返しでした。ルイジアナ州で施行された今回の法律の実効性は、はたしてどうなのでしょうか。


ルイジアナ州ニューオーリンズでは、路上で堂々とお酒を飲むことができます。自分でパレードを行うことだってできます。でも、インターネットでアダルトサイトにアクセスするには、政府発行の身分証明書を提示しなければならない――そんな州法が発効しました。

どうやって年齢認証するの?

ルイジアナ州の州法HB 142では、アダルトサイトに対して「適切な年齢認証」を通じて訪問者を審査するよう義務付けており、違反した場合は法的に罰せられる可能性もあります。昨年の6月に可決され、2023年1月1日に発効した同法で、この「適切な年齢認証」の規定はかなり厳密です。

年齢認証といえば、これまでは「18歳以上ですか?」というダイアログで「はい」を押すだけ、あるいは生年月日をドロップダウンメニューから選択するだけというザル状態でした。流れのゆるやかな入江「バイユー」の名で知られるルイジアナ州に限っては、そんなゆるい時代は終わりました

ポルノを公開しているWebサイトは、政府発行の書式にのっとった身分証明書をデジタル化して提示するか、政府発行の身分証明書をそのまま提示する必要がある、とHB 142の規定では定められています。

あいまいな第3の選択肢もあります。「公的または私的な取引データに基づいて年齢を証明できる商業的に妥当な手段」を使うこともできるという規定です。つまり、理論上アダルトサイト(またはサードパーティーのサービス)は、ユーザーのクレジットカード、保険証、社員証、銀行その他の金融機関情報などを提示してもらえば、適切な年齢認証にできるということで、一部ではすでに実施されています。おそらく、ほとんどのアダルトサイトは、運転免許証の提示を優先するでしょう。

ルイジアナ州では、同州が公開している「LA Walletという制度とアプリによって、デジタル運転免許証が認められています。Pornhub、YouPorn、Redtubeといった人気のアダルトサイトが新しい年齢認証に利用するのは、このLA Walletになりそうです。

ユーザーは、Allpasstrust.comを経由して自分のLA Walletをこの3つのアダルトサイトのアカウントに紐付けることができます。アダルトサイト上のリンクをクリックしたときも、Allpasstrust.comに移動します。ルイジアナ州で活動しているある弁護士が投稿したこのツイートで、その様子を見ることができます。

この新しい法律について、Pornhub、YouPorn、Redtubeに問い合わせてみましたが、今のところ回答は届いていません。ルイジアナ州の運転免許証を持っていないユーザーが、同州でアダルトサイトにすんなりアクセスできるのかどうか、できるとすればどうすればいいのか、現時点では不明です。

アダルトコンテンツの定義

サイトに掲載されているコンテンツの3分の1以上が「未成年にとって有害な内容」であれば、そのサイトはアダルトコンテンツの発行者とみなされ、この新法の対象になります。

「未成年にとって有害な内容」という規定を、同法は詳細に定義しており、「~肛門への愛撫」や「排泄行為」といった性的もしくは卑猥な行為が具体的に列挙されています。身分証明書提示の要件をサイトで順守しなかった場合、その運営会社は未成年に有害な内容を配布した罪に問われ、罰金を科せられる可能性もあります。

今回の法律の根拠になっているのは、アダルトコンテンツが未成年に害悪をもたらすという考えです。HB 142の本文では、「ポルノ画像は公衆衛生上の危機を生み出し、未成年に対して好ましくない影響をもたらす」と書かれています。

早い時期からアダルトコンテンツを目にすると、子供やティーンエイジャーの精神的健康を損ねる可能性があるという研究結果はありますが、未成年がアダルトコンテンツにアクセスするのを検閲しようとした過去の試みは、ことごとく失敗しています

若者のほうがインターネットには詳しいので、コンテンツフィルターや保護者によるブロックを巧みに逃れる方法をいくらでも知っているからです。ルイジアナ州の今回の試みでも、結果は変わらないかもしれません。なにしろ、VPNを使うだけで今回の年齢認証規定は回避できてしまうのですから。

セキュリティ、プライバシーのリスクも

一方、アダルトコンテンツを見るために公式な身分証明書を提示するというのは、万一セキュリティ侵害があった場合には、成年にとっても深刻な結果をもたらしかねません

HB142では、年齢認証を実施する企業またはサードパーティーに対して「アクセスを許可したのちには(中略)いかなる身元情報も保有してはならない」と定めています。PornhubのWebサイトにも、処理中には一切データを収集しないという文言があり、「お客様の年齢認証によって、オンラインの行動が追跡されることはありません」とされています。しかし、年齢を厳密に認証したうえで、しかもプライバシーのリスク増大にはつながらない万全なシステムが成り立つとは、なかなか想像しにくいものです。

各州が運用しているシステムがオンライン攻撃に対して脆弱性を露呈することも、頻繁に起こっています。しかも、パスワードマネージャーログイン検証システムといったサードパーティーのシステムも最近、大々的なハッキングの被害を受けています。

にもかかわらず、インターネット上のアダルトコンテンツに関して公式な年齢認証規定を導入しているのは、ルイジアナ州だけではありませんフランス議会も、2020年に同様の法律を可決しています。その前年の2019年には、英国で年齢認証の法案が提出されました(ただし、プライバシーへの配慮から最終的には否決されています)。

米国では、ユタ州選出の共和党上院議員Mike Lee氏が、「SCREEN( Shielding Children's Retinas from Egregious Exposure on the Net、子供の目をネット上の愚劣なコンテンツから保護する法律)」という連邦法案を12月に提出しました。可決されれば、オンラインのアダルトコンテンツについて年齢認証が全国的に義務付けられることになります。それだけでなく、合衆国憲法修正第1条(表現の自由などが定められている)によるポルノの保護を弱体化しようとするもうひとつの法案も同時に提出されています。