赤痢菌を体に入れる覚悟があるなら!
アメリカのエモリー大学が赤痢のワクチン開発のためのボランティアを募集しています。その報酬は$4,250(約56万円)ほど。いいバイト!って思いますが、注意したいのは、こちら「人チャレンジ試験(Human challenge trials)」と呼ばれる実験。健康なボランティアの人に、弱めた赤痢菌を経口摂取して状態を見るものなんです。
赤痢菌って?
まず赤痢菌ってどんなものなのかというと、赤痢菌に感染すると大腸感染症が起こり、腹痛と血が混ざった下痢が5日〜7日ほど続きます。でも死に至るようなケースは少なく、ほとんどの場合は水分を摂って安静にしていれば治るもの。しかし弱っている人や子どものようなまだ免疫系が未発達の人は発作、敗血症、溶血性貧血などの合併症を起こすこともあります。
昔ほど赤痢菌は危険なものではありませんが、感染経路は食べ物、水、おむつの交換、セックスなどで、衛生環境や医療環境のよくない場所ではいまだメジャーな病気です。世界保健機関(WHO)によると、世界中で起こっている細菌性下痢の一番の原因は赤痢菌で、下痢による死亡は1年に20万件以上に上りますが、原因の二番目が赤痢菌だそうです。アメリカでは年間50万件の赤痢菌感染が報告されています。
赤痢菌を体内に
症状の重い赤痢菌感染の場合は抗生物質での治療がされますが、近年は抗生物質が効かないケースも増えてきています。こういった状況から、エモリー大学がワクチンの開発に乗り出したという流れです。
現在は臨床試験第2番目の段階で、健康体で過去に赤痢に罹ったことのない18歳〜49歳のボランティア120名に参加してもらって実験をするところ。ワクチンは弱めた赤痢菌を使っていて、それを口から摂取します。ボランティアは少量の赤痢菌を体に入れるため、もちろん赤痢になる可能性もあります。
最大約56万円の報酬
実験は3つのグループにわけておこなわれます。1つ目のグループはワクチンを2セット、2つ目のグループはワクチン1セットとプラセボ(偽薬)1セット、そして3つ目のグループはプラセボのみを飲みます。その後に、3つすべてのグループが赤痢菌の入った飲み物を飲みます。その後全員11日間入院し、経過観察。退院後も最大で14回の通院と電話での診察がおこなわれます。
全部で8カ月の実験で、最大$4,250(約56万円)の報酬ということです。自分から赤痢になりにいく体を使った実験、果たしてこれは安いのか高いのか...。
人チャレンジ試験は治療薬開発に重要な役割を果たしますが、同時に議論もあります。人チャレンジ試験は、管理された状況下で治療が可能な病気に対してのみおこなわれるものとはいえ、慎重に判断したいものです。