東大発のスパイダー型空飛ぶロボ、新たな風を吹き込むかも

  • author Andrew Liszewski
  • [原文]
  • 朱宮令奈/Word Connection JAPAN
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東大発のスパイダー型空飛ぶロボ、新たな風を吹き込むかも
脚に装着された16のスラスターを使い、歩行も飛行も可能。Video: Moju Zhao/YouTube

UFOなんてもう、目じゃないですよ。夜も眠れなくなっちゃうくらいもっと怖~いものを東京大学の研究者が作ってしまいました。それはなんと…ゾロゾロ這って飛ぶ、スパイダー型ロボットです。

クモの動きをロボットで再現

超小型のクモがどうやって空を飛んでいるのかはすでに解明されています。超軽量の糸を、10フィート(約3m)ほど紡ぎだしてパラシュートのように使い、風に乗っているんです。こうやって飛ぶと、8本の脚で歩くよりよっぽど速く遠くに進むことができます。地形的に険しい場所も、飛んだ方が楽に移動できるんです。

でも、こんな動きをロボットで再現するなんて、できるのでしょうか?大きさや重さ、重力といった問題にすぐ突き当たってしまうはず。空を飛べるクモは、ほとんどがほんの数ミリ程度の大きさですからね。

人工的な「空飛ぶクモ」を作るならこんなに小さくはできません。ならば装備的な面で補う必要があります。

しかし、脚を個別に動かして這いまわるのに十分なサーボモーターやバッテリーを、たくさんの脚が生えたロボットに装備する、というだけでもかなり大変なんです…。ボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)開発の、きびきびとした動作が印象的な犬型ロボット「Spot」は、最も軽い装備でも重さは70ポンド近く(約32kg)あります。

動作に十分なモーターやスラスターを載せて、さらに飛べるようにするなら、機体はある程度重くなってしまいますし、航続距離を短めにするなど実用面での妥協も必要となってしまいます。

さまざまな動きができる理由

ではなぜ、東京大学のスパイダー型新作ロボットは、飛行も歩行もできるのでしょう?そのヒントは「名前」に隠されていました。ロボットの名前はSPIDAR。「SPherIcally vectorable and Distributed rotors assisted Air-ground amphibious quadruped Robot(球状に方向転換する分散型の回転翼で揚力や推力を得る、空陸水対応の4脚ロボット)」の頭文字になっているんです。

節のある脚には、軽量でパワーが比較的弱いサーボモーターが装着されています。この脚自体は、33ポンド(約15kg)の機体を支えて立てるほどしっかりとしたものではありません。脚が軽いことで機体全体が軽くなり、ジェットエンジンなしでも空中に浮かぶことができるわけですが、その反面、静止して直立することができません。常に上下に動いてなくてはいけないんです。

SPIDARの脚の動きは、各脚に4個ずつ計16個の、機動力あるスラスターで制御されています。これが、8部位にわかれた脚の回転、動き、位置調整を司っていて、すべてのスラスターを脚の動きに合わせて調整することで、SPIDARは立ち上がったり歩いたりが可能になります。ただ、現段階ではかなりゆっくりしか動けず、音も正直ちょっと大きめですね。

ロボット開発の新たな風となるか

一充電あたりの飛行可能時間は9分、歩行可能時間は18分。実用を考えると、稼働時間をもっと延ばす必要があるでしょう。ただし、デモ動画からもわかるように、SPIDARは現状、まだまだ改良の余地があるほんの試作段階です。

ロボットで多様な移動方法を実現させる、という方向性はなかなか興味深いですよね。

では世の中のロボット開発は今後、こうした方向に向かって進んでいくのでしょうか? 空は飛ばないSpotが、文字通り世の中をうまく渡り歩いているところを見ると、SPIDARが闊歩できる余地は市場にないようにも思えます。

でもこれが、ドローンの機能向上に役立つかもと考えたら?着地時に安全に降り立つ手段としてこの技術を使えるかもしれません。かなりポテンシャルありそうですよね。