去年11月にChatGPTが立ち上がってから、生成系AIが雨後のタケノコのように大発生しています。
最近までチャットボットは「人工無脳」なんて言われて、会話が噛み合わなくて当然、くらいの認識でした。でも、ChatGPTは違ったのです。人間では読みきれない膨大なデータを元にあらゆる分野の物事やその評価、言葉の使い方、質問への答え方までを学習していて、ユーザーからの問いに対し一瞬で何らかの答えを出してくれます。ChatGPTにいち早く出資したのはMicrosoftでしたが、その後GoogleやMetaなどあらゆるテック大手も自前のAIチャットボットを立ち上げ始めました。
OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏はABCのインタビューに対し、人工知能の未来は非常に明るく、「人類が今までに開発した中で最高の技術になる」と語りました。
「私は思うのです…我々が次々と開発しますます強力になっていくシステムは、日常生活や経済にさまざまな形で連携していき、人間の意志の増幅器になるのだと」
でも、本当に人間が主でAIが従なのか、いつの間にか主従が逆転していくんじゃないかと心配ではあります。とりあえず今どんなAIがあるのか知っておけば、万一支配される側に回ったときにも対応しやすいかもしれません。そんなわけで、今あるメジャーなAIチャットボットをご紹介していきますね。
すべての原点:ChatGPT

オルタナティブの紹介に入る前に、すべての始まりとなったChatGPTを振り返っておきましょう。
OpenAIが開発したChatGPTは人間のような語り口や知識の幅広さ、素早い反応が評価されています。「イーロン・マスクがバーガーキングのトイレにダッシュしたことをホメロス風の詩にして」みたいなプロンプトを入れて、どうなるか見てみましょう。ただChatGPTはクリエイティブであろうとしすぎるせいか、ときどき情報をでっちあげたり、間違ったことを言ったり、人を不快にするようなセリフを吐いたりすることもあります。
ChatGPTはもともと無料のパブリックベータとして公開されましたが、OpenAIは月20ドル(約2,600円)の有料バージョンも立ち上げました。有料版は接続が安定し、新機能も早く追加されることになってます。
後追いか、本命か:Google Bard

GoogleもOpenAIに負けじと今年2月、「Bard」なるAIチャットボットを限定ベータとして立ち上げ、Google検索と連携させました。ChatGPTと似たような感じで、ユーザーからの質問に答えて会話ができますが、やっぱり情報の真偽を確認したり、言っていいことと悪いことを判断したりが苦手なようです。
Bardは今ウェイティングリスト受付中ですが、Googleはフィードバックが多ければ多いほどプログラムの能力が向上すると言ってます。だとしたら、これからBardにはもっとアクセスしやすくなるかもしれません。
勉強のお供:Google Socratic

Googleはもう1つ、Socraticってチャットボットを持ってます。2020年にスタートしたらしいSocraticアプリは、学生の宿題を手伝うというコンセプトです。売り文句では、「つまづきを解消したい? Socraticが助けます! Google AI搭載のこの学習アプリは、高校・大学レベルの勉強の理解を助けます」とされてます。
Bingの救世主:Bingチャットボット

Bingなんて正直みんな忘れかけてましたが、MicrosoftがOpen AIの技術をそこに統合したことで、その存在感が急激に高まりました。Bingチャットボットは生まれたときこそ若干ゴタゴタしましたが、今はだいたいベーシックな検索アシスタントとして落ち着いたようです。つまり、旅行やディナーの計画といったコンシューマー系意志決定のお手伝いです。
でも、Microsoftは、Bingチャットボットは「事実に基づいて動く」ように作っているにも関わらず、「間違いを犯すこともある」と認めています。単に旅行プランの参考情報をくれるだけといっても、勘違いを堂々と(それも意外と頻繁に)混ぜてくるので注意が必要です。
いろいろ良い提案をしてくれても、結局いちいちファクトチェックしなきゃいけないとしたら、それって便利なんだろうか? その判断はユーザー次第です。
ボット界のナイスガイを目指す:Claude

ClaudeはGoogleが今年2月、3億ドル(約400億円)投資したAIスタートアップAnthropicが開発しています。Claudeのポイントは「ナイスガイ」を目指してること、つまり、他のチャットボットに比べて「有害な出力」を吐き出しにくく「話しやすい」ということです。
具体的にどんなアルゴリズムで素行を良く維持できるのかはわかりませんが、Claudeって名前はたしかに「尊敬できるつまらないやつ」…って感じがしなくもないかな。他のチャットボットと同じように、Claudeは今ユーザーを限定してのトライアル中です。
プライベート検索をお手伝い:DuckAssist

プライバシー重視の検索エンジンDuckDuckGoは、検索と連携するAIアシスタントとしてDuckAssistをベータリリースしました。DuckAssistの中にはOpenAIとAnthropicの技術が入っていて、情報源はWikipediaやEncyclopediaなど、行儀の良さがある程度担保されたリソースに限定しています。DuckAssistは、DuckDuckGoのブラウザの拡張機能として提供されてます。
DuckDuckGoのCEO、Gabriel Weinberg氏はブログにこう書いてます。
「DuckAssistは我々の検索結果において、ニュースやマップ、天気と同じような、ニュータイプのInstant Answerです。DuckAssistはDuckDuckGoプライベート検索に完全に統合したものとして設計し、従来の検索結果の外観を引き継いでいます。なのでAIが生成するコンテンツは新しいですが、DuckAssistの使用感は自然なものになると思います」
ボットじゃないけど:MetaのLLaMA

Metaも実は自社AIチャットボットを開発していて、ここ数年は「Blenderbot」が世に出てました。去年「Blenderbot 3」をローンチしたときは、「最先端の会話エージェント」だと自賛してたものです。でも、ユーザーからの評価は賛否両論で、陰謀論へのこだわりを指摘する声や、ベトナムの独裁者ポル・ポトを礼賛してたという証言もありました。この辺はChatGPTとかGoogle Bardと変わりません。
さらに最近の生成AIブームに乗り遅れまいと、Metaは自前の大規模言語モデルLLaMAを発表しました。でもMeta自身でそれをチャットボットとしてサービス化してるわけじゃなくて、今のところは研究機関にその技術を提供してる段階です。でも、今の流れ的には、そのうちMetaとしてのチャットボットを立ち上げる可能性も否定できません。
デジタルな友だち:Replika

Replikaは、本来人間にしか埋められないニーズを埋めるべく作られたAIチャットボットです。つまり、個人的な関係です。ReplikaのWebサイトには、「replika」とは人間と会話して話を聞いてくれるデジタルな友だちで、「あなたの目を通して世界を見て学びたい」んだそうです。「共感してくれる友だちが必要なとき、いつでもおしゃべりできる」のだと。
寂しいときは人間の友だちを作るべきじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうか。アプリのタグラインは「あなたを大切に思うAIコンパニオン」とありますが、うーん…もしReplikaを親友だと思ってる人がいたら申し訳ないんですが、AIが誰かを大切に「思う」ことは絶対にありえません、だってコンピューターのプログラムだから。とはいえ、AIチャットボットのおかげで心が救われる人がいるなら、人間である必要はないのかもしれません。
キャラとの会話を楽しむ:Character AI

2022年9月に立ち上がったCharacter AIは、ちょっと毛色が違うチャットボットです。いろんな毛色があるチャットボットというか、ユーザーが任意のキャラクターを作れて、それぞれ独自の性格を与えることができます。
他の人が作ったキャラクターとも会話できて、例えばイーロン・マスクのキャラクター(作者は第三者、多分)は、いわゆるイーロン・マスクっぽい会話ができるし、大昔の人物ともチャットできます。プログラミング用キャラとか、話に共感してくれるキャラもいます。またバーチャル環境に放つと、他の「キャラクター」と勝手にやりとりします。コアにはGoogleの大規模言語モデルのLaMDAがあり、会話も自然です。