塗るだけでOK。
肩に塗るだけで精子がみるみる減る魔法のジェルが2023年米Gizmodoサイエンスフェア大賞に選ばれました!
人口協議会、米国NICHD(国立子どもの健康と人間発達研究所)、ハーバー-UCLA医療センターのランドキスト生体医療イノベーション研究所などの取り組みが評価されたかたちです。世界の人口政策、家族計画などにも効果を発揮しそうですね。
テーマ
女性用避妊薬はいろいろあるのに、男性用はないの? 安全かつ可逆的(やめると元に戻る)であることを条件に探してみよう!
探して見つかったもの
肩に塗るだけの避妊薬「NES/Tジェル」。
黄体ホルモンの一種「ネストロン」と合成テストステロンから成り、ネストロンには精子の数を減らし、精巣および血中の両方で天然テストステロンレベルを減らすはたらきが、合成テストステロンには、その状態をキープしながら、血中ホルモン値を安定させて副作用(血中テストステロンが減ると性欲と性機能も減退する)を抑えるはたらきがあります。
開発理由
「男性用(避妊方法)は永久に後戻りできないパイプカットか、失敗率が高いコンドームの2択で、ほかの方法がない。満たされないニーズに応えようと考えた」(人口協議会名誉研究員で、開発プロジェクトを率いる主要メンバーでもあるRegine Sitruk-Wareさん)
「着手した当初から状況は大きく様変わりしている。研究に携わる男性陣が、自ら責任をかって出た成果」(ハーバー-UCLA医療センターのランドキスト研究所主幹調査員のChristina Wangさん)
受賞理由
各種アンケートを見ると男性用避妊薬に対する関心は男女ともにあるんですが、開発はいばらの道で、効果に期待が持たれたものの副作用のリスクが予想よりはるかに高いと後に判明したものもあれば、RisugやVasagel(精管ジェル注入の非ホルモン剤)のように、有望と騒がれて臨床で失速するものもあるし、ホルモン経口薬と非ホルモン経口薬はまだまだ研究初期段階。
近い将来登場する男性避妊薬はNES/Tジェルだけとは限らないにしても、次世代のオプションのなかでは一番乗りになりそうだと判断しました。
今後
研究チームは今春にでもFDAに最新のデータを発表し、これまでの成果をもとに予定より早く第3相試験に進む許可を得たいと考えています。 早く臨床が終わって明るい成果が示されれば、それだけ市販時期は早まりますもんね。
あとひとつのハードルは、研究資金を援助して製品化まで面倒を見てくれる製薬会社を探すことですけど、Sitruk-Wareさんの話ではすでにいくつかのパートナーから打診があって話し合いを進めているとのことです。
研究チーム
NES/Tジェルの開発事業をリードするのは人口協議会という、主に途上国の人口抑制策やエイズHIVの研究に注力しているNPO。さらに米国NICHD(国立子どもの健康と人間発達研究所)、ランドキスト研究所をはじめとする各研究所からも協力と資金援助を得ています。第2B相試験ではチリ、英国、スウェーデン、米国など世界中の研究所の医師と研究員が協力しました。