THE NORTH FACEなど「プロテイン繊維」ウエアが量産体制に

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THE NORTH FACEなど「プロテイン繊維」ウエアが量産体制に
Image:GOLDWIN

先日開催されたゴールドウインの2023年秋冬コレクション発表会にて、Spiber株式会社と2015年から共同で開発に取り組んできた、構造タンパク質「Brewed Protein™ (ブリュード・プロテイン™)繊維」を使用した初の量産品コレクションを発表しました。この革新的な素材を用いたアイテムたちが、その量産体制の拡充から大規模な販売が可能となり、2023年の秋より待望のグローバルローンチとなりました。その詳細をレポートします!

Brewed Protein繊維とはいったい何?

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タンパク質のメカニズムを理解するうえで、地球上に5万種類以上いるクモの糸を研究することは非常に参考になると、Spiber株式会社の取締役兼代表執行役・関山和秀氏。

スポーツアパレルの多くは、石油を原料として製造されたポリエステルやナイロンなどをはじめとする合成分子材料を使用していることから、マイクロプラスチックの排出による自然環境への影響が課題となっています。ゴールドウインはそんな環境問題の改善を目指し、2015年からSpiberとアパレル製品への展開に向けた構造タンパク質素材の共同開発に取り組んできました。

Spiberは2007年9月に創業したバイオベンチャー。植物由来のバイオマスを原材料に使用した微生物の発酵プロセスにより開発・生産している構造タンパク質「Brewed Protein ™」素材は、シルクのような光沢と繊細さを持つフィラメント糸、さらに上質でなめらかな肌触りのカシミヤやふんわりとしたウールのような紡績糸にも加工できる画期的な繊維です。

たとえばカシミヤ繊維と比較した場合、温室効果ガスの排出量の大幅な縮小と土地や水の使用量の削減が期待できたり、また、石油由来製品によるマイクロプラスチック排出の課題解決も見込めます。そんな従来の動物由来、植物由来、合成素材に代わる次世代の素材として期待が寄せられているのが、この構造タンパク質「Brewed Protein™」繊維なんです。

新たな価値の創出を、アイコニックな定番品で!

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構造タンパク質「Brewed Protein™」繊維を使用したコレクションアイテムの数々。

そんな「Brewed Protein™」繊維を使用した製品開発の第一弾となったのは、「THE NORTH FACE」から2019年8月にリリースされたTシャツ『Planetary Equilibrium Tee』。その後、同ブランドから同年12月にアウトドアジャケット『MOON PARKA』を発売。2020年11月には、ゴールドウインのオリジナルブランド「Goldwin」からニットウエア『The Sweater』を。そして、ゴールドウインが展開するプロジェクト「Goldwin 0」から昨年秋にシェルジャケットとフリース、また今年3月にデニムジャケットとパンツをリリースしています。

これまでにリリースした製品は「Brewed Protein™」繊維の生産量が限られていたため、全てが抽選販売という数量限定の販売方法でした。Spiberが2022年春より生産を開始したタイの量産プラントでの「Brewed Protein™」ポリマーの量産が拡大し、共同開発の開始から8年目にしてついに、5ブランドでのコレクション発表に至ったということです。

今回の発表で登場したアイテムは5つ。

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左/THE NORTH FACEの「Nuptse Jacket」11万円(税込)、中/Goldwinの「Cross-Field 3L Jacket」12万1000円(税込)、右/nanamicaの「Balmacaan Coat」19万8000円(税込)。価格はすべて予定。

「THE NORTH FACE」からは昨年デビュー30周年を迎えた代表的アウター『Nuptse Jacket』。「Goldwin」からは、オリジンであるスキーウエアをルーツにもつ『Cross-Field 3L Jacket』。「nanamica」からはクラシックな仕立てとディティールに機能性を付与した『Balmacaan Coat』。

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右/THE NORTH FACE PURPLE LABELの「Sierra Parka」17万6000円(税込)、左/「WOOLRICHの「Future Arctic Parka」19万8000円(税込)。 価格はともに予定。

「THE NORTH FACE PURPLE LABEL」からは、アウトドア用ダウンパーカの原型ともいえる名作を現代にアップデートした『Sierra Parka』。「WOOLRICH」からは『Future Arctic Parka』がそれぞれリリースされます。

5ブランドそれぞれが持つアイコニックな定番品の完成されたデザインを活かしながら、「Brewed Protein™」繊維を採用することで、まさに新たな価値と可能性が拡がっているといえそうです。海外展開している「Goldwin」と「nanamica」は、海外直営店でも販売。また、「THE NORTH FACE」と「WOOLRICH」 においては、海外の事業者と連携し、グローバルでの販売を予定しているそうで、プロダクトラインナップについても今秋の製品発売に向けて情報が随時アップデートされるとのことなので、期待が高まりますね。

9月にはポップアップストアもオープン!

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プレゼンテーションで登壇したゴールドウイン代表取締役社長・渡辺貴生氏(左)とSpiber取締役兼代表執行役・関山和秀氏(右)。

株式会社ゴールドウインの代表取締役社長・渡辺貴生氏によると、ゴールドウインでは2030年までの新規開発商品のうち10%をこの「Brewed Protein™」使用製品にシフトする目標を掲げていて、Spiberとの共同開発を通して、自然と人間の関係性についてさらに見つめなおし、機能と環境性が両立した全く新しい素材のあり方や製品のあり方、そして経済のあり方を常に考え続けるとのことでした。

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今回の発表会ではパネルディスカッションも行われました。左から元アスリートでゴールドウイン社外取締役の為末 大氏、Spiber取締役兼代表執行役・関山和秀氏、ゴールドウイン代表取締役社長・渡辺貴生氏、ファッションデザイナー・中里唯馬氏、慶應義塾大学医学部教授・宮田裕章氏。

今回のコレクションアイテムはグローバル展開も予定していますが、国内では2023年9月、丸の内ビルディング内に「Brewed Protein™」繊維を使用した全製品を販売するポップアップストアのオープンも準備しているそう。この革新的素材から窺える未来が直接肌で感じる機会に、ぜひストアに足を運んでみては?

Source: ゴールドウイン