最近、ChatGPTのような生成AIに関するニュースや記事が増えてきました。ちょっと多すぎる感があるので、この記事では直近1週間ほどのニュースで「全体の動向につながってるな〜」と思ったものをピックアップしてご紹介してみます。
現状は大まかに以下のような感じかと思います。
● OpenAIのChatGPT・自社アプリにChatGPTを統合したMicrosoftが技術的には先行
● ChatGPTが短期間でさらに劇的に賢くなることはなさそう?
● OpenAI、Microsoft、Google以外による生成AIも登場している
● 国内外で生成AIに関するルール作りや、業務にどう取り入れていくかなどの議論が進められている
● 新たな問題も続々
Google Bardをプログラミングに活用できるように

Google版のChatGPTともいうべきチャットボットAI「Bard」がプログラミングコードの生成、デバッグやコードの説明に対応しました。C++、JavaScript、Ptythonなど、20以上のプログラミング言語に対応しているとのこと。
ただ…ChatGPTなどは既に対応済み、キャッチアップという感じですね。Google検索への生成AI統合を急ピッチで進め5月に公開する気であるなど、「追う動き」が目立ちます。
ちなみに、Bardは先週から日本でもベータテスト利用が可能になっています。日本語があんまり得意じゃない感じですけど…。
Bing AIが「数式」を綺麗に生成できるように

MicrosoftのチャットボットAIを搭載した検索エンジン「Bing」が、LaTexという論文によく使われる組版システムに対応しました。上の画像にあるように、一言伝えるだけで複雑で美しい数式を生成しています。
万人が使う機能ではありませんが、「うまく伝えられさえすれば複雑な作業が一発で終わる」という生成AIならではの長所をさらに引き出し、機能を充実させていっている感じですね。
生成AIを搭載したMicrosoft 365 Copilotが楽しみになります。パワポをちまちまいじらなくてもよくなったりするらしいですから。
ChatGPTがまた急激に賢くなることはしばらくない?

先日、OpenAIのサム・アルトマンCEOが「GPT-5のトレーニングはしばらくしない」という主旨の発言をしました。もしかすると、AI業界の急加速は少し落ち着くのかもしれません。
ChatGPTの注目度が爆上がりしたのは3月の中旬、ChatGPTでGPT-4が利用可能になったとき。それまでのGPT-3.5に比べて劇的に賢くなったんですね。
細かい説明を省いて超ざっくり言うと、GPT-NのNが大きくなるほど、ChatGPTは賢くなります。アルトマン氏の発言は「当座、ChatGPTの賢さをがっつり引き上げることはないですよ」といった感じに受け取れなくもありません。
イーロン・マスクもAIを作るって

先週話題になったこととして、「OpenAI・Microsoft・Google以外のAI」の話があります。
いちばん話題になったのは、イーロン・マスクが開発を発表した「TruthGPT」でしょう。これに併せてTwitterの利用規約が改定され、「ツイートが学習データとして使われるのでは?」といった懸念があがったりも。
もうひとつ話題になったのが、Stability AIが発表した大規模言語モデル「StableLM」です。オープンソースで個人利用などがしやすいのがポイント。まだテスト公開の段階で性能はそれなりという感じらしいですが、今後飛躍的に進化させるとのこと。
また、ここまでは言語を主に取り扱う生成AIの話題が多かったですが、Adobeが独自の画像生成AI「Firefly」を発表しているのも気になるところです。画像生成AIは著作権に抵触するなどの懸念があるのですが、Fireflyはこの点がクリアされているのが大きな特徴。画像を作るだけでなく、動画の編集などもできるようで、AI技術のクリエイティブ領域への応用を得意とするAdobeらしい実用性が高そうな生成AIです。
今はChatGPT、Bing、Bardあたりが話題の中心ですが、これらのAIが劇的な成長を遂げていく未来もぜんぜんありそうです。
EUが「生成AIを使ったら明記」ってルールを作るかも

Nikkei Asiaによると、EUはEU全体での生成AI利用に関するルールを、早ければ年内に定めるつもりとのこと。欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー氏は同メディアのインタビューに対して「AIで作られた写真や映画、歌などには、その旨表記する義務が生じるでしょう」と回答しており、使用を明示させる方向性で検討しているようです。
MicrosoftはOfficeとChatGPTを統合すると発表しているわけですが、そういった製品で書いた文章などにも明記の必要が出てくるのでしょうか? 具体的にどういったルールになってくるのか、気になるところです。
日本の地方自治体はChatGPT、使います?

先週、一部の地方自治体がChatGPTに関してどういうスタンスをとるかを発表しました。
神奈川県横須賀市はChatGPTを業務に活用していく方針を明かしました(プレスリリースそのものがChatGPTを利用して書かれていたり)。個人情報や機密情報を入力するつもりはなく、あくまで業務効率化を狙ったものであるとのこと。
その一方、鳥取県の平井伸治 知事は、「機械が出した言葉をそのまま使うなら、民主主義の自殺行為だ」として議会答弁・予算編成にChatGPTを利用するのを県職員に禁じていると明かしました。県の機密情報をChatGPTに入力するのは情報漏洩につながるのでは、とも指摘しています。
先日来日したOpenAIのCEOも気にしているようでしたが、「業務上必要な情報を入力するのが情報漏洩になるから」は導入を回避する大きな理由となってきていますね。海外でもサムスンなどで問題にされています。
プライバシーの問題を克服して効率化というメリットを活かせるか、また実際にそういった舵切りをするのか。こういった議論が日本でも真剣になされていくのではないでしょうか。
生成AI絡みの新しい問題もいろいろ

・ChatGPTやBardなどの稼働には膨大な量の水が必要、という指摘
・「AIのトレーニングデータにするなら有料で」という流れが加速中
こういった話題もあり、生成AIには清濁両面ある感じではやはりあります。影響が本当に広範で、状況がどんどん複雑化していっているように思います。
Source: Google, Microsoft, Nikkei Asia, NHK, KAI-YOU