漂白剤・殺菌剤の使いすぎに要注意。米国でも見直しの動き

  • 16,350

  • author satomi
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …
漂白剤・殺菌剤の使いすぎに要注意。米国でも見直しの動き
Image: Shutterstock

ドアノブを毎日ゴシゴシ殺菌している皆さま~。

コロナ対策で続けているなら、もうその必要はないかもしれませんよ?

2020年からの新型コロナウイルス国家緊急事態宣言を5月11日に解除した米国では、あんまり漂白剤や殺菌剤を使いすぎると、コロナが減るどころか喘息などで具合が悪くなっちゃう場合もあるので、「家では水と石けんで十分だ」と専門家や政府が注意を促しています。

新型コロナウイルスが広まった最初のころは、家庭でも学校・職場・店舗でも除菌・殺菌スプレーと滅菌ワイパーなどで、触れた部分をすべて清めるのがデフォでした。

しかし、専門家からは「接触感染のリスクは低い」との指摘が早くから成されており、過剰な滅菌・殺菌・除菌で皮膚や気管が化学物質に晒されることによる長期的な健康被害を心配する声も挙がっていたと、New York Timesは殺菌を推奨した自らの反省を込めて報じていますよ。

ダストや血中のQAC濃度が7割上昇

例えば2020年にインディアナ大とエモリー大が発表した論文「COVID-19パンデミック期に汎用された殺菌剤への屋内暴露の上昇」にあるのは、第4級アンモニウム塩(QAC)などの使用の拡大がもたらす喘息や呼吸系、生殖機能への悪影響の懸念です。

QACは台所・トイレ用洗剤やノンアルコールの消毒ワイパーなどに広く使われているもので、米国環境保護庁(EPA)がコロナ除菌目的で使用を推奨する400以上の殺菌剤のうち200以上に有効成分として含まれています。

そこで研究班が住宅からダストを採取して調べてみたところ、QACの濃度はコロナ前の中央値36.3μg/gからコロナ後は58.9μg/gまで急上昇しており、消毒がこまめな家ほど濃度が高いことが判明しました。

血中に含まれるQACの濃度も、コロナ前の 3.41ng/mLからコロナ後は 6.04ng/mLに急増しているほか、母乳への混入もその後の調べで確認されています。

でも、このQAC、怖い面もあります

生物の脂肪細胞膜を破壊して繁殖を防ぐメカニズムですので、人間を含めた生物の外膜の透過性が高くなって、長く使用すると皮膚の保護脂質膜が破壊されて有害物質の吸収を高めてしまうんだそうな。

菌を殺すのはいいけど、下手すると自分までやられちゃうってことですね。また、ダストに含まれてからも劣化がないとも論文には書かれています。

影響が出るころには手遅れということも考えられそうです(最近は薬剤耐性のある赤痢菌が急増中で、3月にCDCが警告を発したばかり。2015年には薬の効かない赤痢菌がゼロだったのに、今は赤痢菌感染全報告の5%が薬剤耐性をつけちゃってるらしくて、これもQACと関係あるんじゃないの?と言われてます)。

ブリーチで死亡する例も

ほかにもコロナで広く使われる消毒剤には漂白剤(塩素系、酸、過酸化水素など)もあって、これも皮膚や粘膜に触れるとやられます。QACと同じく、喘息を誘発する物質でして、消毒をこまめに行なう病院やホテル、住宅の清掃スタッフの職業病として喘息は認知されてもいます。

ブリーチが怖いのは、化学兵器に使われる毒ガスでもある塩素ガスが発生してしまうこと。

アメリカでは漂白クリーナーと酸系トイレクリーナーの錠剤をうっかり混ぜて死亡した女性もいますので、アンモニアや酸とは絶対混ぜないこと

一家にひと瓶ありそうなほど身近なものなので、日本政府もコロナの初期には「食器・手すり・ドアノブなど身近な物の消毒には、アルコールよりも、 熱水や塩素系漂白剤、及び一部の洗剤が有効です」と推奨してたりしましたが、取扱い要注意扱いになっています。

手洗いに関して米CDCは、「石けんと水で20秒。石けんと水がない場所では度数60%以上のアルコールを含む手指消毒剤を使用してください」と推奨中。

まあ、アルコール系も2020年には誤飲などの通報が前年比36%増加したらしいので絶対ではないけど、「ベビー用おしり拭きで拭いても除菌にはならないので水で洗ってください」とわざわざ書いていますよ。

家の掃除に関しては、内容物のわからない除菌グッズより、酢やベーキングソーダを使って軽く拭く方がまだ安心だと専門家は言ってるんだそうな。

いくら消毒しても感染するときはするものですし、飛沫や空気感染が主な感染経路と分かった今、触った面を消毒することにいかほどの意味があるのか。

もしかしたら、何の予防にもならないのに惰性で拭いたり吹き付けたりしているだけなのかも。化学物質に恒常的に触れることで生まれる身体のリスクのこともよーく考えて、天秤にかけ直す必要がありそうです。

食材に潜むサルモネラ菌を簡単に発見できる検査キットが誕生

マクマスター大学の研究者チームがサルモネラ菌の次世代型検査キットを開発。簡単でスピーディに検査できる。

https://www.gizmodo.jp/2023/04/new-salmonella-detection-kit.html