ウサギとカメみたいに、AI開発も一休みしてくれるといいけど。
コロラド州選出の連邦上院議員で、民主党の大統領予備選に立候補するも敗退したマイケル・ベネットが、新たな法案を提出しました。
この法案は、ChatGPTなどのチャットボットに対する世論の懸念と規制を求める声が高まる中、政府の専門家らによる「AIタスクフォース」を創設し、AIの破壊的なリスクの特定や、市民の自由やプライバシーに起こり得る問題の軽減を目的としています。
複数の省庁協働で政策提言をとりまとめ
ベネット議員のAIタスクフォースは、現行のAI規制の抜け穴を特定し、新たな政策提言を迅速に行なうことになるとロイターは報じています。
タスクフォースのメンバーは、国防総省や国立標準技術研究所をはじめとする複数の行政機関から選出される予定とのこと。
AIに明るい政府官僚からなるドリームチームは、18カ月間協働し、政策提言をとりまとめた報告書を発表するそうです。
1年半という期間は、政府のプロジェクトとしては短い方ですが、過去2年間で大規模言語モデルが成し遂げた技術革新のスピードに比べると、カタツムリ並みに感じますね。
ちなみに、ChatGPTのデビューは昨年11月でした。半年でここまで進化するとは…。
ベネット議員はロイターに対し、タスクフォースの取り組みについて次のように述べています。
「政府内の誰にとっても新しいAIの問題に取り組もうとすれば、臨機応変で反復的なアプローチが多くを占めることになるでしょう」
懸念される子どもへの悪影響
この法案は、ベネット議員がOpenAI、Google、Snap、MetaのCEO宛てに、ChatGPTのようなチャットボットが子どもたちにもたらすリスクを指摘する書簡を送った約1カ月後に提出されました。
書簡の中でベネット議員は、児童保護サービスとの面談を前にした児童に、チャットボットがあざを隠す方法を教えたことを例に挙げています。
また、31歳の男性にこっそり会いに行こうとする13歳の少女に、チャットボットが両親のだまし方をアドバイスしたというおぞましい例もあります。
ベネット議員は、書簡の中でチャットボットのリスクについてこう指摘しています。
「若年層のユーザーは、認知や感情、知性が発達する初期段階にあるため、影響を受けやすく、衝動的で、事実と虚構を見分ける能力に欠けます。
このような背景を考慮に入れると、時に言葉の暴力を振るい、欺瞞(ぎまん)を助長し、自傷行為を促すことまであったチャットボットに若い世代をさらすリスクを理解するのは、難しいことではありません」
国土安全保障省はAIのあらゆる利用例を精査
AIタスクフォース創設に関心を寄せているのは、ベネット議員だけじゃありません。
国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官は、AIによる薬物や人身売買の被害者の発見、水や電力網の安全確保など、幅広い利用例への知見を提供するための独自チーム立ち上げを発表しています。
あまりにも幅広すぎて具体性に欠けるような気もしますが、長官にとってはそれも狙いの1つなのだそうです。
長官は独自チームの役割についてこう述べています。
「20年近く前に9.11調査委員会が結論づけたように、あの悲劇的な日に計画されていた破壊につながる点と点を結ぶ作業や準備を怠る原因になった『想像力の欠如』に陥ることはもう許されません。
私たちは未来を見据え、想像もつかないようなことでも想像し、どんな脅威に直面しようと、省庁と国が瞬時に対応できるようにしなければなりません」