北極海の氷の下にもマイクロプラスチック。藻類と生態系の脅威に

  • author Lauren Leffer - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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北極海の氷の下にもマイクロプラスチック。藻類と生態系の脅威に
AとCは、北極の海氷と藻類。Bは藻を顕微鏡で拡大し撮影
Image: Bergman et al. 2023

夏の北極海から海氷が消えたら、藻は、生態系はどうなっちゃうんでしょうか…。

北極海の海氷を思い浮かべてみてください。

一面に広がる氷の白と、少し覗く海の青。そんな美しい風景が広がるんじゃないでしょうか。

でも、夏になると氷の下には、ねばねばした緑色の物体が潜んでいたりします。藻の一種であるMelosira arctica(以下M. arctica)は、北極海の海氷の下部にくっついてカーテンのようにぶら下がっているため、上空から見えることはほとんどありません。

北極圏の生態系を支えるケイ藻

単細胞生物が長い糸や固まりのようになって形成しているこの藻はケイ藻類に属していて、極地の生態系にとって重要な役割を担っています。

M. arcticaは動物プランクトンのエサになり、動物プランクトンは魚やアザラシ、クジラなどあらゆる生物の栄養源になります。底生生物も、海底に沈んだ藻から栄養を採ります。

ある調査では、2012年の北極圏における一次生産量の約45%をM. arcticaが占めたそうです。直接的にしろ、間接的にしろ、藻類は食物連鎖全体を底辺から支えているんです。

今日もどこかでマイクロプラ

科学誌Environmental Science & Technologyに掲載された研究結果によると、こんな極地の氷の下にまでマイクロプラスチックがはびこっているんだそうです。うんざりです。

研究チームが採集したM. arcticaのサンプル中に、びっくりするくらい高濃度のマイクロプラスチックが存在していました。

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https://www.gizmodo.jp/2022/06/microplastics-found-in-antarctica.html

南極の新雪空気中、赤ちゃんのうんち、私たちの血液中、そして今回見つかった北極海の氷の下と、またしてもマイクロプラスチックがありとあらゆる場所にたどり着ける証拠を増やしてくれました。

高すぎるケイ藻のマイクロプラ濃度

研究によると、ケイ藻から採取した12個のサンプルすべてにマイクロプラスチックが見つかりました。

発見された約400個のプラスチック片を体積に換算すると、M. arctica1立方メートルあたり3万1000個のマイクロプラスチックが存在することになります。

この数値は、周囲の海水から検出された濃度の10倍以上に相当するのだとか。藻類と、藻類に依存する生態系はもちろん、気候にとっても悪影響を与えることになるかもしれません。

ドイツのブレーマーハーフェンにあるアルフレート・ヴェーゲナー極地海洋研究所の生物学者で研究論文の主執筆者でもあるMelanie Bergmann氏にとって、どこにでもあるマイクロプラスチックが海氷の下で見つかったことは、それでも驚きでした。

さらに彼女を驚かせたのは、M. arcticaにこれほど大量のマイクロプラスチックが付着していたことと、その濃度が周囲の海水よりもはるかに高かったことだったと米ギズモードにメールで述べています。

でも、藻類が粘着質だということを踏まえると、そんなに意外ではないかもしれません。

まるで移動するマイクロプラ回収装置

また、M. arcticaがぶら下がっている海氷にもすでにマイクロプラスチックが入り込んでいるんですよね(Bergmann氏の過去の研究によると、場所によっては1立方メートルあたり最大で数百万個の粒子が確認されたそう)。

海氷の凍結と融解のサイクルによって、海水と上空からマイクロプラスチックを取り込んでしまいます。その結果、海氷の汚染物質が藻類にたどり着いてしまうという流れになっているようです。

Bergmann氏は、春になって海氷が解けたときに、マイクロプラスチックが氷にぶら下がっているM. arcticaのねばねばした表面に付着するのではないかという仮説を立てています。

そして藻は海氷と一緒にマイクロプラスチックを拾いながら、海流に乗って移動していくわけです。ハエ取りリボンが空中を移動するみたいな感じですかね。

Arctic Marine System Diagram
北極の生態系にマイクロプラスチックが広がっていく様子
Image: Bergman et al. 2023

高すぎる海底のマイクロプラ濃度

生物学者の研究によると、北極の生態系でマイクロプラスチックの濃度が最も高いのは、海底の堆積物です。先述したサイクルによってM. arcticaに閉じ込められたマイクロプラスチックが海底に沈んでいると考えれば、つじつまが合いますね。

つまり、大きな藻に付着したマイクロプラスチックは重みで海底に沈んで、残りのマイクロプラスチックはそのまま浮遊し続ける可能性が高くなります。

こういった謎が解けるのは喜ばしいことですが、北極の生態系への影響を考えると、気分は藻にくっついたマイクロプラスチックのように底まで沈んでしまいそうです。

気候変動緩和を妨げる恐れも

おまけに、マイクロプラスチック汚染は、藻類自身にも悪影響を及ぼしている可能性があります。

他の藻類の実験で、マイクロプラスチックが光合成を妨げ、藻類の細胞にダメージを与えていたことが判明しています。しかし、Bergmann氏は「他のさまざまな藻類で同じことがどれくらい広く起こるのか、海氷藻類にも影響があるのかどうかはまだわかりません」と話しており、マイクロプラスチックの影響は種によって大きく異なるようです。

とはいえ、気候変動に伴って急激な変化を続ける北極のシステムに対するさらなるストレスは、ご遠慮願いたいところです。

また、マイクロプラスチックに覆われることによって藻類がうまく光合成できなくなると、炭素の吸収と隔離もできなくなり、結果として気候変動をスローダウンさせるのが難しくなります。

スケールは小さいにしても、北極圏のフィードバックループにとって顕著な影響を与えるかもしれないとBergmann氏は指摘します。

食物連鎖の生態系への影響に懸念

食物連鎖の土台になっている藻類を食べる生物は、ほぼ確実にマイクロプラスチックを体内に取り込んでいることになります。

現時点ではまだマイクロプラスチックの健康への影響は十分に解明されていませんが、初期の研究では人間にとっても野生生物にとっても恐らく良いものではなさそうな感じです。粘着質なM. arcticaの悪影響が生態系に少しずつ広がっているかもしれませんね。もっとあっさりした性質だったらよかったのに…。

今のところ、こういった懸念にはまだ不確かな部分があります。マイクロプラスチックが食物連鎖をどのように移動し、マイクロプラスチックを摂取した生物にどんな影響を与えるのかを解明するには、もっと多くの研究が必要です(Bergmann氏はプラスチックに覆われた堆積物の中の海底生物を調査したいと考えているとのこと)。人間のプラスチック依存の結果を科学がすぐに解明できなくても、きっと時間が解決してくれるはずです。

Bergmann氏は次のように指摘しています。

マイクロプラスチックの濃度が高くなるにつれて、その影響も大きくなっていくことでしょう。

特定の地域や種では、致命的なしきい値を超えてしまうかもしれませんし、すでにそうなっていると考える科学者もいます。


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