2カ月寝たっきりのバイトで、身体を擬似宇宙空間に

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …
2カ月寝たっきりのバイトで、身体を擬似宇宙空間に
Image: The European Space Agency

人類の宇宙飛行のために身を挺して貢献してくれる方、ベッドにゴロンと寝転がっていてください。

欧州宇宙機関(ESA)がフランスで行なう実験プロジェクト「BRACE(Bed Rest with Artificial gravity and Cycling Excercise」は、名前の通りベッドで寝ながら人工重力と自転車運動する実験。

ベッドで寝る実験と人工重力と自転車運動のイメージが繋がりませんが、公式ページに行くとなるほど…。これ、楽な仕事じゃなさそうです。

寝ながらチャリ漕いで回転する…

プロジェクトに参加する12人のボランティアは、水平から6度傾けたベッドの上で(足を高い方にして)60日間、全ての時間を過ごします。すべてのじかん、です。シャワーもトイレもすべてこの状態で行ないます(基本ルールは、少なくとも左右どちらかの肩がマットレスについている状態)。

傾斜のあるベッドでずっと寝ていることで血液や水分は頭の方に集まります。また寝たきりの状態が続くことで、最終的には筋肉が萎縮していきます。

つまり、これ、宇宙空間に長期間滞在する状況を再現しているのです。

ボランティアは3つのグループに分けられ、1つ目のグループはまったり寝ているだけ。

2つ目のグループはエクササイズバイクで運動します(もちろんこれも寝たまま)。後者のグループは、宇宙飛行士が筋力を落とさないために宇宙で行なうワークアウトルーティンも実施。

そして3つ目は、ぐるぐる回転するマシンの中でエクササイズバイクを漕ぎます(もちろん寝たまま)。ベッドで寝ていることでつくられた重力を感じさせない擬似宇宙環境を、ぐるぐるマシンの回転で相殺。回転で発生する人工重力が運動にどのようなメリットを与えるかを見極めていきます。

宇宙を見据えたエクササイズは地球でも役立つ

ESAのリサーチャーAngelique Van Ombergen氏は、公式サイトにて以下のようにコメントしています。

国際宇宙ステーションで宇宙飛行士が実施している1日2時間のフィットネスルーティンに人工重力を加えることで、どのような価値があるのかを明らかにしていきたい。

ベッドで寝たきり状態を擬似宇宙空間とする研究は過去にもありましたが、ヨーロッパで、しかもエクササイズバイクを導入するのは初めて。

一方で、スロベニアのヨージェフ・ステファン研究所でも似た研究が進んでおり、そちらは人工重力と振動エクササイズを組み合わせることになっています。

Ombergen氏いわく、これらの実験結果は宇宙旅行だけでなく、高齢者や筋骨格疾患のある人への治療法にも役立つのだそうです。