ちまたで噂になるものの、まだその姿を見た者は極端に少ないあいつのすべて。
最近何かと話題のChatGPTに引きずり出されるように土俵に上がったBard。マウンテンビューのGoogle社が生み出した最新のAIチャットボットですが、「なんでこんなに騒がれてないの?」って思っている方も多いかと思います。そこで今回は、現時点で「Bardについてわかっていること」をざっくりまとめてご紹介します!
Bardって何?

Bardも「オリジナルのテキストを生成することができる人工知能ツール」です。 対話型のサービスで、質問に答えてもらったり、クリエイティブなプロンプト(質問や命令)を音声やテキストで入力することもできますし、詩や歌、エッセイ、小説、コードなどを書いてもらうこともできます。
Bardはどうやったら使えるの?
Bardの使い方はとても簡単。
・(まだの人は)Googleアカウントを作成
・Googleアカウントにログインしてbard.google.comにアクセス
・「Join waitlist」ボタンを押して、「Yes, I'm in」を選択
これでウェイトリストに登録完了です。後日アクセスが可能になるとメールで通知が送られてきますので、そのリンクを辿るかbard.google.comにアクセスすると、ご覧のスクリーンショットのようなプロンプト入力画面に進めます。

回答には「いいね」「よくないね」のボタンがあって良し悪しのフィードバックができるほか、ぐるぐる矢印を押すとリセットされてまた別の質問ができますし、「View other draft」を押すと別のバージョンの回答も出てきます(回答は3通りまで表示される)。くわしく知りたいときには検索ボタンを押してもOK。
Bardは日本でも使えるの?
Bardは3月21日に米英2か国で試験版がリリースされたばかりで、日本ではまだ…と下書き書いて寝て目が覚めたら日本もいきなり対応国に加わってました! 突然すぎるでしょ!
ちなみに、どうしても使いたい非対応国のGoogleファンはこんな風にVPNで国を変えて許可をもらったりしているみたいです(規約に触れないか心配) 。
Bardで日本語は使えるの? どういう風に使うの?(5月12日更新)

5月11日から日本語で問題なく使えるようになりました(以前は日本語で使えると言いつつもイマイチ会話が噛み合いませんでしたが)。

気になったことを「ここにメッセージを入力してください」と書かれた欄に入力して送信すると、Bardは少し考えたあとに回答してくれます。
複数の回答案を出してくれる

回答の上部にある「他の回答を表示」を押すと、回答案が複数表示されます。最初に提示された回答がイマイチだと思ったときに、別の回答案に変更できます。
ChatGPTにはこういった機能はなく、Bard独自の機能だったりします。
自分がした質問を後から修正できる

Bardの回答が微妙に感じた場合は、質問の仕方を修正して別の回答を出してもらうこともできます。
自分がした質問の隣にある鉛筆のアイコンを押すと、自分の質問を修正できます。「更新」ボタンを押すとBardは新しい回答を出力します。
この際、修正前の質問に対する回答は消えてしまいますので、必要であれば保存しておきましょう。
Bardの回答を保存する2つの方法
Bardには「回答を保存する方法」が用意されています。手動コピーが基本のChatGPTよりも使いやすいかもしれません。
(1) 回答をコピーする

回答の右下にあるボタンを押すと、回答をクリップボードにコピーできます。メモアプリなどに保存したい場合に使えます。
(2) Googleドキュメントに保存する

回答左下に3つのボタンがあり、いちばん右を押すと回答をGoogleドキュメントに保存できます。いちばん「GoogleのAIなんだなぁ」と感じたところかも、これは便利です。

回答に含まれる表もきちんと保存できるので、とても便利です。
「チャットをリセット」すると「Bardの回答」はすべて消える

画面左上のハンバーガーボタンを押すと、環境設定やヘルプ情報などにアクセスできます。
この中で注意が必要なのは、「チャットをリセット」すると後から過去のBardの回答を参照する方法がまだないことです。参考になる回答があった場合は、リセット前に必ず保存しておきましょう。
「Bardアクティビティ」では何ができるの?

「Bardアクティビティ」からは情報の管理に関する設定が可能です。
・「Bardアクティビティ」がオンだと、Bardはユーザーが入力した情報を保存します。保存されるのが嫌な場合はオフにしておきましょう。
・「自動削除」は質問などの履歴を一定期間(18ヶ月)の後に削除するか否かを決める項目です。デフォルトではオンになっています。絶対に削除されたくない場合にはオフにするといいでしょう。
自分がした質問は残っている

「Bardアクティビティ」を下にスクロールしていくと、「自分がした質問の履歴」が表示されます。対応するBardの回答は閲覧できません。
Bardは間違えないの?
間違えます。ChatGPTが架空の学術論文・著書のタイトルと作者、リンクを捏造して脚注に並べ立てているのが見つかったように、Bardもリリース初日に公開されたプロモーションビデオでやらかしてて株急落でしたし、「Bardはいつ事業撤退になるの?」と聞いたら「利用が少なくて、もう事業撤退になりました」と答えたりの間違いがデビュー早々ありました。
i asked bard when it'll (inevitably) be shut down by google
— juan (@juanbuis) March 21, 2023
turns out it's already been shut down due to lack of adoption 🤔 pic.twitter.com/1bovfcpksb
「いや、答えているのだからまだ生きているんだよ…」とみんなBardのメンタルを心配していたら、ChatGPTもそっくり同じ間違いの回答をしていて、ChatGPTもBardも「Bardはもう閉鎖になった」の大合唱となりました。
Bardの評判は? ChatGPTと比べてどうなの?
Bardはクリーンでシンプル。回答は的確で短いです。対するChatGPTはUIの完成度が高く、回答は絵文字多め。ミスが決して許されないディフェンダーと、ミスしながらでも楽しくして一歩でも先に未来を見たいチャレンジャーの違いを感じます。
MKBHDがBard対Bing AI(ChatGPTで使われているGPT-4をアレンジしたモデルが使われている)の比較動画で言っていた一番の違いはソース(出典、参照リンク)が表示されるかされないか、というところでした。Bing AIは原則ソースが明記されますが、Googleはたま~にで毎回ではないんですね。
ならBing AI(やChatGPT)のほうが役立つかというと、それも微妙で、ChatGPTもウソを並べ立てるときソースも捏造するときがあるので心してかからなければなりません(英紙The GuardianのもとにはChatGPTで調べものをしている研究員から記者に「昔の記事が削除されて読めない」という相談もあった。いくら探しても見つからなかったので「おそらくChatGPTの創作だろう」と社の人がツイートしている)。
そういう一部の例外を除けば、出典は大いに役立つ機能です。先の「Bard終了」の誤回答の出元もHackerNewsのコメント欄に6時間前に投稿された「そして1年後。『GoogleがBard事業終了』」という冗談が外部メディアの記事に引用され、そこから冗談抜きに『』内だけ事実としてAIに引用されていたことが、ChatGPTの誤回答から判明しています。
どちらがどちらをコピーしたのかまでは表面上わかりません。3月末には「Google BardがChatGPTをトレーニングに使っていると知ってGoogleトップのAI研究員がOpenAIに転職した」という話がThe Informationによって報じられたばかりですので(Google広報は利用の事実はないと否定)てっきりGoogleがコピーしたものとばかり思い込んでいましたが、The Vergeによれば「ChatGPTがGoogle Bardの誤回答をコピーした」とのこと。ChatGPTが登場したときには「トレーニング用データが少し古くてWebの最新情報は引用できない」と言われていましたが、その差も縮めてきたことが伺えます。(編注:表向きには“引用できない”のままなんですが…)
ライバルを意識するのはお互い様。答えに詰まったときには、頭のよさそうな人の回答をカンニングしたくなるのはAIも同じ。 こういうことは充分起こりうる前提で使うことが大事かと思われます。
Bardは無料?
基本無料で利用できます。
今後追加される見込みの機能
とりあえずChatGPTがBingに組み込まれたように、検索エンジンにBardを組み込むのが最重要課題で、まごまごしているとAndroidの雄=サムスンのデフォㇽト検索エンジンの座をBingに明け渡してしまうことになります。それだけは絶対避けたいところ。
あとは、一般の人たちに「ChatGPTにできてGoogle Bardにできない」と言われていることすべてに対応してくるものと思われます。それが証拠に、上の5本対決の動画でMKBHDが挙げた「サイトの表示がおかしいときのデバッグ」についてはBardも4日からできるようになっていて、これにはMKBHDもビックリという顔。
Bardの仕組みは?
Bardを動かしているのもChatGPTと同じ「大規模言語モデル」と呼ばれるアルゴリズムです。これに大量のテキストデータを読み込ませることで、とってもリアルで「まるで人が書いたような」文章を生成することができる自然言語処理ツールになっています。
ベースにしたのはGoogleの「LaMDA(Language Model for Dialogue Applications、直訳:対話用言語モデル)」 。ChatGPTもGoogleが開発した「Transformer」がベースですので、そう遠くない親せきです。
Bardの問題点は?
世界が熱狂するChatGPTに比べると、Bardはごく限られた人数の人が利用しているだけですので、あまり大きな問題は表面化していません。強いて挙げるなら…
・ChatGPTのワクワクがなくてboring(面白みがない、真面目すぎる)
・人間の仕事を奪ってしまう(優秀なことの裏返し)
・事実誤認(Hallucination)。例)ネットのジョークを真に受けて、始まる前に自分は終わったと思い込んでいる
ことぐらいでしょうか。みんなに「ボアリング、ボアリング」と言われている点について記者に回答を求められたら、Googleの人が「それでいいの。狙ってボアリングにしてるんだから」と笑っていました。Google的には、そんな世間の評価は一番どうでもいいことなのかもしれません。
Bardは今後どうなる?(5月12日更新)
ChatGPTの世界的ヒットを見てサンダー・ピチャイCEOはコードレッド(会社存亡の危機)を宣言し、2年前に一線を退いた共同創業者のラリー・ページ、サーゲイ・ブリンにヘルプを要請。今は2人も久々に現場に復帰して文字通り全社体制でAI開発レースに取り組んでいます。
今年はだいたい20以上のAIプロジェクトの発表を予定しており、一部の内容は5月のI/Oカンファレンスで明らかになっています。
2023年4月10日:公開
2023年5月12日:「Bardで日本語は使えるの?」「Bardは今後どうなる?」を更新