AIを「お金を稼げるか」で評価する。そんなのは現代版チューリングテストじゃない

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AIを「お金を稼げるか」で評価する。そんなのは現代版チューリングテストじゃない
Image: Shutterstock

AI、人工知能がどれだけ人間的かを判断するチューリングテスト。エニグマ暗号を解読した数学者アラン・チューリングが1950年に提唱したものです。ただ、現代の大規模言語モデルは、チューリングテストでは測れなくなってきています。そこで、現代のAI業界の第一人者の1人、DeepMindの共同創設者が提唱する「現代版チューリングテスト」は、どれだけ手っ取り早くお金を稼げるかというもの。

AIに10万ドル投資して100万ドルに増やせるか

現在Alphabet子会社のDeepMind創設者の1人であり、AI開発者のムスタファ・シュリーマン氏、この秋、を出します。その中でAI開発はAGIのような夢を追うのではなく、短期開発に集中すべきだと論じており、そこに登場するのが上記の「現代版チューリングテスト」です。初期投資の10万ドルを増やすことができる人は賢い人物であり、それこそがインテリジェンスであるというのがシュリーマン氏の意見です。

ただし、シュリーマン氏いわく、このテストで判断するのは、AGI(Artificial general intelligence:汎用人工知能)ではなく、ACI(Artificial Capable Intelligence:有能人工知能)。いわく、資本主義においてAIが評価されるのは、人間への共感力ではなく、経済判断力であると。

「共感」が欠けていたら、何が作れても微妙なのでは?

AIの賢さをお金で判断するとはまたエクストリームな意見です。現在、Auto-GPT(ざっくり言うと、ChatGPTに作業を連鎖的に行なわせて大きな目標を達成できるようにするツール)のようなプログラムは、新製品のアイディアを出し、ビジネスプランの草稿を作ることはできるでしょう。

ただ、AIとは本質的には反復が基本であり、生成したコンテンツが現実で文脈としてどう解釈されるかまでは理解は及んでいません。また、その生成物はトレーニングデータが元になっていることから、一見斬新なイノベーションに見えたとしても、プロンプトを満たす最適解にすぎません。

そういうと、AIエバンジェリストは、人間の創造も根本的には反復ではないか!というのでしょうけれど。しかし、人間の創造は、人間が求めるもの、必要とするものを理解してうまれてくるものであり、そこには少なくとも共感があります。

AIが作った売れる物=いい物なのでしょうか。それが人の生活を豊かにするのでしょうか。AIの目標が1万ドル稼ぐことで、そんなことでいいの?


いや、まてまて。Auto-GPT(ChatGPTに大きな目標を達成するよう、さまざまなタスクを自動で考え連鎖させるツール)などを使ってビジネスプラン作り、売れそうなものを作ることはできるのかもしれません(難しいと思いますけど)。

でも、それが正義でいいの?ということなんです。

データから判断した売れそうなものは、人間のニーズを理解して作られたわけではありません。なぜなら、今のAIには人間に共感する能力がないから。

チューリングテストは自然言語が長く目標とされてきましたが、見た目は自然でも共感できないんだったら、そこに中身はないでしょう。だからって、お金で判断しよ?なんて極論すぎます。共感のない製品でお金儲けて、100万ドルになりましたからインテリジェンスですって…。

AIが作った売れる物=いい物なの? それが人の生活を豊かにするの? AIの目標が1万ドル稼ぐこと、それでいいの?

共感できないくせに友だちのように自然な振る舞いをするAIよりは、お金稼ぐのが上手なAIの方がマシでしょなんて脱力するようなこと言わないで…。