まだ黎明期のプロジェクトから、超アナログな何かまで。
WWDCはデベロッパーのためのイベント…なんだけど、そのわりにはアプリ開発者にとってストレスフルなイベントでもあります。というのは、Appleが発表する新機能やアプリ、ハードウェアによって、既存のアプリを使う意味が薄れたり、場合によっては存在自体脅かされたりしてしまうからです。
今回の発表でも、これはその筋にはショックだろうなってものがいくつかありましたので、以下に見ていきましょう。
Meta Quest ProとMicrosoft Hololens

最近発表されたMeta Quest 3みたいなVR専用デバイスは、機能的にも価格的にも、AppleのVision Proとは真っ向からの競合じゃなさそうです。でもMicrosoftのHololens 2はVision Proと同じ3,500ドル(日本価格42万2180円)からだし、MetaのQuest Proも1,500ドル(同15万9500円)と、ハードルの高い価格です。

Vision Proの発売は来年とはいえ、ハンズオンした人からはかなりの高評価です。しかもAppleが今まで育ててきた巨大なデベロッパーコミュニティがあるので、その中にはきっと、スマートなゴーグルに数十万払える理由を作り出す人たちがいることでしょう。
日記アプリ

テキストの日記を書くだけなら、何らかのテキストエディタがあればこと足ります。でもApp Storeには、文字での記録からスクラップブックまでいろんな機能を満載したサードパーティの日記アプリがたくさんあります。たとえばDay Oneがそうだし、プラットフォームを横断するならDiariumも良いです。
でもiOS 17にはネイティブアプリ「ジャーナル」が登場し、そこからiPhoneが把握するユーザーのさまざまなデータにアクセスできてしまいます。しかもそのデータを元に、日記に書くネタまで提案してくれます。
とはいえローンチ時点では、今までの蓄積のあるサードパーティ日記アプリと同じくらい使いやすいかっていうと、そんなことないと思います。でもジャーナルもだんだん機能拡張していくと思われ、そうなるとお金を払って他社アプリを使う意味がわからなくなっていきそうです。
ステッカーアプリ

メッセージアプリでスタンプ的なものを多用する人にとって、iOS 17にはうれしいお知らせがあります。メッセージに貼り付けるステッカーの素材として、写真の中の人物や動物やいろんな被写体を切り抜いて使えるようになるんです。しかも作ったステッカーは純正iMessageだけでなく、いろんなサードパーティアプリでも使えます。
これでステッカーがバンバン送られてくるのかな…ってげんなりする人もいるかもしれませんが、誰より恐怖を感じてるのは、既存のステッカー作成アプリの開発者じゃないでしょうか。
スマートホームハブ

今、Google Nest Hubみたいなプロダクトは、何がしたい存在なのかよくわからなくなってきてます。デジタルフォトフレームの拡張版なのか? ハンズフリーで使えるデジタル料理本なのか? スマートホームデバイスのリモコンなのか? Googleはその問いにPixel Tabletで答えようとしています。
でもAppleは、iOS 17の「スタンバイ」機能でもうその答えを出してしまったかもしれません。iPhoneを充電中に横向きに置くと、Google Nest Hubライクなデバイスに早変わりして、天気予報や写真のスライドショー、インタラクティブなウィジェットも使えるんです。
固定電話の留守電

固定電話なんて、スマホよりさらに前、携帯電話の時代に終わってた、と思われるかもしれません。でも固定電話の留守電が便利だったのは、電話にすぐに出なくても、電話の相手が話し始めてから電話に出るかどうか判断できたことです。
そんな固定留守電の良い部分が、iOS 17でiPhoneに加わります。「ライブ留守番電話」機能は、留守電が録音されると同時に文字起こししてくれるので、それを読んで電話に出られるようになるんです。
名刺

皆のポケットにすごいコンピューターが入ってる現代でも、紙の名刺は連絡先の簡単な共有手段として有効です。それでもiOS 17におけるAirDropの進化で、名刺の終焉がまたひとつ近づいた感があります。
「NameDrop」機能を使うと、iPhone同士を近づけるだけで連絡先共有ができるようになるからです。
iPhone 8、8 Plus、iPhone X

秋頃にくるiOS 17がサポートするのは、iPhone XS・XS Max・XR以降の世代です。
なのでiPhone 8と8 Plus、iPhone Xは、iOS 17がリリースされる今秋以降もずっと、iOS 16を使い続けることになります。すぐ使えなくなるわけじゃなく、機能自体はし続けます(6年も使ってればバッテリーライフは落ちますが)。
初代iPad Proと第5世代iPad

2015年、AppleはスーパーサイズなiPad・初代iPad Proを発表しました。Apple Pencilも登場し、これによってiPadは単なるメディア消費デバイスから真の生産性ツールへと進化しました。
そんな初代iPad Proにも、最後のときが近づいています。iPadOS 17がサポートするのは、第2世代以降のiPad Proと、第3世代以降のiPad Air、第5世代以降のiPad mini、そして第6世代以降のiPadなのです。
Tile

AppleのAirTagは、連携するiPhoneが何億台も存在してるって意味で、最初からTileみたいなサードパーティより有利でした。ただAirTagは、1ユーザーにしかヒモ付けできないという制限事項もあったので、ペットに付けたAirTagは家族の誰かひとりしかトラッキングできなかったりしました。
でもiOS 17ではついに、AirTagを最大5人で共有できるので、家族全員でペットをトラッキングすることも可能になります。
Worldcoin

ChatGPTの開発元・OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AIと人間を見分ける方法として、Worldcoinプロジェクトを立ち上げました。暗号トークンと引き換えにあらゆる人間の目をスキャンして虹彩データを記録し、ユニバーサルベーシックインカム制度の基盤にも…っていう壮大な計画です。
でも今のところ、Worldcoin用に目をスキャンするOrbデバイスがスキャンできた人は、記事翻訳時点で183万人程度のようです。それに対しAppleが発表したVision Proは、50万円という価格的に誰もが買えるってものじゃないですが、目の虹彩を使った新認証手法・Optic IDを搭載してます。Optic IDが他のAppleデバイスにも搭載されていくかはわかりませんが、仮にiPhoneで使われるようになったら、Optic ID登録者数がWorldcoinを超えるのはあっという間になりそうです。