宝石箱をひっくり返したかのよう…!
NASAは先日、妖しくも眩く光る宇宙画像4点を公開しました。これらの画像は同じ天体を異なる波長域で観測している天体望遠鏡のデータを複数合成したもので、宇宙画像ではお馴染みの天体でも異なる表情を見せています。
画像の生成にはNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、チャンドラX線観測衛星、スピッツァー宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡に加えて、欧州宇宙機関のXMM-ニュートン衛星などからの観測データが組み合わせられました。
宇宙望遠鏡や観測衛星はそれぞれ異なる光の波長で観測しており、 各データを重ねることで天体の色彩豊かな姿を鑑賞できるようになるのです。
XMM-ニュートンとチャンドラが取り込むのはX線で、ウェッブとスピッツァー(すでに引退)が観測するのは赤外線。ハッブルは主に可視光で撮影しますが、赤外線と紫外線も捉えます。
NGC 1672
下の画像はX線、赤外線、可視光で観測した、棒渦巻銀河「NGC 1672」。ウェッブ、ハッブル、チャンドラからのデータによる光景で、うっすらとしたブルーと紫がかったピンクが印象的。

腕が全体的に弧を描くような形状をしている渦巻銀河に対し、棒渦巻銀河は腕が銀河中心付近では伸びているため、そのように分類されます。
チャンドラからのデータが中性子星やブラックホールといったX線を放射する天体を紫がかったピンクで示し、ウェッブとハッブルのデータは渦巻腕を包み込む塵とガスを捉えています。
わし星雲の「創造の柱」
わし星雲の合成画像も、公開されました。この星雲は、「創造の柱」という巨大な柱状のガスがあることで知られています。
ウェッブは10月に初観測しており、その際にハッブルが捉えた有名な画像の新バージョンを生み出しました。
下の画像でもピンク色はチャンドラのデータ、生まれたばかりの星々を覆うガスと塵を示すくすんだ青色はウェッブのデータになります。

ファントム銀河「M74」
続いての画像は、地球から3200万光年離れたところで煌めく渦巻銀河。実はこれ、暗いことから通称ファントム銀河と呼ばれている「M74」になります。
チャンドラのデータ(X線)は、この幻のような銀河に散らばる高エネルギーな箇所を目立たせています。

NGC 346
NASAのチームは、小マゼラン雲にある星団「NGC 346」の観測データも重ね合わせました。
小マゼラン雲は星形成がピークだったころの銀河と似た状態にあるため、星形成に関する知見を得られる場所だと考えられています。
左にある紫色の雲は、星の材料をあらゆる方角にばらまく壮絶な星の最期「超新星爆発」の残骸です。

今後も異なる波長域で観測されたデータは、科学的に重要な領域を際立たせるために組み合わせられていくでしょう。
そうしてできあがった画像は、科学コミュニケーションにおいて不可欠なツールとなるのです。
Source: NASA JPL,