先週末、ロシアの月探査機「ルナ25号」が月面に衝突するという残念な結末を迎え、同国が今もなお月面に着陸する技術を有していると示す機会は失敗に終わりました。
ロシアの宇宙機関「ロスコスモス」にテレグラムに投稿した声明文によると、ルナ25号との通信はモスクワ時間の先週土曜午後2時57分(日本時間同午後8時57分)ごろに途絶えたとのこと。
予備調査によって、同機を着陸前の軌道へと移行するはずのエンジン噴射で軌道から外れてしまい月に衝突してしまったとわかっています。
この知らせを受けてNASAの科学部門の元トップThomas Zurbuchen氏は、
どんな天体でも着陸するのは決して簡単で単純なことではないと思い知らされます。
他の探査機が数十年前に達成できたからといって、今日の成功を保証するものではありません。
と、X(元Twitter)に綴っていました。
Too bad to read this. None of us ever wishes bad onto other explorers. Hope this can be fixed.
— Thomas Zurbuchen (@Dr_ThomasZ) August 19, 2023
We are reminded that landing on any celestial object is anything but easy & straightforward. Just because others managed to do it decades ago, does not guarantee success today. 🚀🛰️🌘 https://t.co/aLZhN6Q0eQ
かつての宇宙大国
再び始まった月面開発競争の中でも重要であり続けようと努力するロシアにとって、月面着陸の失敗は大打撃となります。
ルナ25号は同国にとって47年ぶり、ルナ24号が1976年8月に地球に帰還して以来の月探査ミッションでした。アムール州ボストチヌイ宇宙基地から、現地時間の8月11日午前2時10分に打ち上げられています。
ルナ25号は元々、欧州宇宙機関(ESA)も協力するという計画でしたが、ESAはロシアのウクライナ侵攻を受けて同ミッションと後続のルナ26号と27号から撤退。
そのためロシアは、同機の欧州製の部品を国産の科学観測機器と交換せざるを得ませんでした。
月を巡る新たな競争
ESAからのサポートを失ったロシアは、宇宙飛行士たちを2030年までに月に降り立たせる競争において中国と手を組むつもりです。
NASAはアルテミス計画で月を目指していますが、中国も恒久的な月面基地の計画を含む月探査計画を展開中。
2021年には中国とロシアの共同プロジェクトである国際月面研究ステーション(ILRS)が発表され、のちにアラブ首長国連邦やパキスタンも加わっています。
中国は既に月面着陸に必要な技術があると三回の着陸成功で証明しています。しかし、ロシアがどんな形で貢献するのかはまだ具体的には分かっていません。
ルナ25号は成功していれば、月面に着陸できるというロシアの能力を示すだけでなく、冷戦中の全盛期からは衰退していた同国の宇宙開発力の復活も示せていたはずです。
次なる挑戦者はインド
それにルナ25号は、同じく月面着陸に挑むインドのチャンドラヤーン3号を追い抜くつもりでした。
7月14日に打ち上げられたチャンドラヤーン3号は、2019年9月にブレーキ用スラスターの不具合で月面に激突した前回から約4年を経て、インドにとっては2回目の月面着陸チャレンジに臨みます。
本日8月23日に軟着陸予定で、インド宇宙研究機関(ISRO)は現地時間17時20分(日本時間20時50分)ごろからライブ配信を行なうそう。
2ヵ国が争っていたのは、月の南極地方に場所を得るためでした。月の南極地方は飲料水や燃料、酸素の生成に活用できそうな大量の氷を示す証拠があるため、月面での駐留拠点を築きたい国家が大いに関心を寄せる地域となっています。
ルナ25号が退場した今、チャンドラヤーン3号が月面着陸に成功するか否かに注目が集まっています。
Source: Telegram, X(twitter), ISRO,