可聴域の外で「感じる」音まで変わる。「RME」のオーディオ機器

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  • author 今津甲
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可聴域の外で「感じる」音まで変わる。「RME」のオーディオ機器
source : RME

なぜスマホで音楽が聴けるのでしょう? いくらトレンドだからといって、あの中にCDやカセット・テープ、レコードが入ってるわけではありません。

入ってるのはデータ化された音楽。そのままでは人間の耳には聴こえません。データを音に変えるインターフェイスが介在しているからこそ、イヤホンで音楽を楽しめるのです。

そして。ポータブルアンプを使っての高音質イヤホン再生にはまっている人なら、インターフェイスのグレードによって聴こえてくる音がピンキリなのことを、痛いほど実感してると思います。

M-32-Pro-II-Rack
photo:RME

今回、製品取材に行ってきたRMEは世界的なシェアを持つオーディオ・インターフェイスの老舗。

コンピュータに音を録音する、ということが始まった'90年代から先鋭的な製品を送り出し続けてきた会社です。その設立者の1人であるマティアス・カーステンズさんが来日して新製品について語る、というのがその内容でした。

RME20years
photo : syntax japan

取材当日。カンファレンス開始を直前に控え、日本側のスタッフがザワついていました。

聞けば主役のマティアスさんが、人前で着るためのパンツが見当たらずホテルまで取りに戻ったとのこと。その話にかえって期待が高まりました。服装や髪型にまったく無頓着だったアインシュタイン同様、ずば抜けた才能の持ち主って身嗜みに無頓着なケースがたびたびあるわけで。

無事、黒のパンツを着用して出席者の前に現れたマティアスさん、同社の開発・マーケティングの責任者としてもう見事なぐらい製品への追及姿勢を見せまくりでした。「この機器はもっと何かできることがあるんじゃないか?」という姿勢です。

技術的な部分でのそれは、ボクの想像を二桁ぐらい超えたレベルで展開していました。周波数でいえば20hz〜20khzと言われる人間の可聴帯域のはるか上での話です。

「聴こえない所を改善しても無駄じゃね?」という意見もあるでしょう。

でも人間には“聴こえる”の他に“感じる”という感覚がある。CDよりレコードの方が味がある、とか言われるじゃないですか? それは再生する音域の上限が20khzに定められたCD と、実は60〜70khzまで高音域が伸びているレコードの、その差をボクらは感じてるからじゃないか、と思ってます。

若い頃と比べれば聴力が低下しているはずのベテランのミュージシャンやレコーディング・エンジニアが現役でい続けられるのもそこ。つまり、RMEがやっていることのある部分は、「感じる領域」の改善でもあるんですね。そこを徹底追及していることがよく分かりました。

RME_001
photo : syntax japan

今回紹介・解説された機器はプロ用が中心でしたが、オーディオ系に使えるものもありました。それがADI-2/4 Pro SEという機種。これ、ターンテーブル(以下TT)の音を直接入力できるんですね。

RME_ADI-2-4-Pro-6
photo : RME

TT自体の出力ってものすごく小さく、最低でも100倍ぐらい増幅しないと他の機器と繋いでも音にならない。

廉価なTTほどその機構を内蔵してたりしますが、100倍増幅って甘くない。レコードの良さを伝え切れてないものがほとんどです。

対してADI-2/4Pro SE経由の音はボクらが抱くアナログ盤の音のイメージを覆す、データとしてのレコードをあからさまにするようなサウンドでした。

ADI2

マティアスさんの解説を聞くとやはり、この新機能1つに対してもあきれるほど深堀して研究した成果であることがよーく分かりました。

LNI2DC
photo : syntax japan

そのあと、やはりこれもオーディオ系でも使える電源アダプター、LNI-2 DCについての説明が。

いわゆる、機器に差すだけのACアダプターの高品位型なんですけどね。にもかかわらずなんと製品の開発経緯などを記した18ページものマニュアルが付属している...。

こんなところにもこだわったマティアスさん、まだまだしゃべりたそうな表情で「今回はここまで」と告げ、若手開発者のマックスさんにバトンタッチしました。

M32pro
photo : syntax japan

彼が紹介したのはM-32 Pro IIという機種でした。これはフロント・パネルに32系統の入力信号の状態がそれぞれ可変するカラーで表示される、という未来的なデザイン。

RME_M-32-AD-Pro-II-D-perspective
photo : RME

一方、リア・パネルでは主要な端子が2系統づつ用意されているんですね。1つが不調になっても大丈夫なように。

私事ながら、一昨年『音楽を操るマニピュレーターの世界』という本を出したんですが、その取材で多くのマニピュレーターさんが言ってたのがまさに「まさかの事態に備えて、なんでも2系統用意する」ということでした。本機の使用例として、元祖21世紀型レイヴ・Tommorow LandのDJブースの映像を紹介していたのも、踊り好きの自分には刺さりましたね。

ここまでで予定どおり約2時間。これで終わりかと思いきや「みなさん、お腹すきました? もうひとつ見せたいものがあるんですが...」と言ってマティアスさんが再登場。これまでは本体の小窓でしか操作できなかったADIシリーズに対応したアプリを披露しました。

RMEapp
photo : syntax japan
Device-page
photo : syntax japan

ADI-2 Remoteは、コンピューターやiPadからADI-2シリーズを操作するためのリモート・ソフトウェア。このソフトウェアにより、ADI-2 DAC FSの全ての機能をコンピューターやiPadの画面から操作でき、設定のバックアップや、エクスポートとインポートができるため、異なるデバイス間で設定を共有することも可能になる。

これはボクもユーザーとして嬉しかった。思わず「製品は私たちの赤ちゃんであり、できる限り面倒を見ます」というRMEのウェブサイトに書かれていた言葉を思い出しました。

Source : syntax japan