不老不死や寿命を伸ばす方法は、人類誕生と共に生まれた人間の夢であり空想です。しかし、今、ロボット光学や人工知能モデルの進化により、その夢はかつてないほどリアルに近づいてきました。トランスヒューマニズムですね。
AI研究者や起業家は、このファンタジーをなんとかビジネスにしてお金を稼ぐ方法を模索中。すでに愛する人の魂をこの世に留めておけるような人のAIレプリカも開発されています。
後述するHereAfterやDeepbrain AIなどの企業が開発しているのは、ディープフェイクやチャットbotと同じ技術を使った人間のレプリカ。愛する人が亡くなる前に、または自分が死ぬ前に、個人的な記憶やデータをとって、デジタルレプリカを作っておこうというアイデアです。
トランスヒューマニズム系団体のDigital Immortality Nowも、記録やデータを収集する方法やプロトコルを開発し、いつの日かさらに賢くなったスーパーAIを用いて、他界した人をデジタル復活させようと考えています。
死んだ人間をデジタル復活させるのとは別に、人間によく似たロボット開発技術も進化しており、このロボットがあれば、他界した人間の記憶が身体を持つ世界も想像できます。2013年創業の香港拠点のロボットメーカーHanson Roboticsは、すでに人間と話しコミュニケーションをとる人間そっくりなロボットを開発しています。まさに不気味の谷のお手本です。
今はまだ不気味の谷かもしれないけれど…、一般的ではないかもしれないけれど…それでも愛する人を「保存」したいという人向けに、AIの力であの世から復活させる系企業を集めてみました。
HereAfter

あなたが死んでも、家族や友達がずっとあなたと一緒にいられるヴァーチャルレプリカ。それを作ろうとしているのが、AIスタートアップのHereAfter。
ヴァーチャルレプリカ作りは、まずヴァーチャルインタビュアー(チャットbot)によるあなたの人生に関するいろいろな質問に答えるところからスタート。その後、人生で特に印象に残った思い出などについて話すオーディオデータ、写真などを提出。これらのデータから、HereAfterはヴァーチャルレプリカを作成します。
現在の生成AIモデルを活用した死後もデジタル化して生きる系スタートアップは、たいていHereAfterの手方と同じです。
Hanson Robotics
性格も見た目も特定の個人に似せためちゃくちゃリアルなロボットを作るため、AI言語モデルと人間そっくりなロボット技術を組み合わせようとしているのがHanson Robotics。
Hanson Roboticsいわく、ロボットは、周りの人と目を合わせるなどのアイコンタクト、顔の認識、関係性構築のためのごく自然な会話が可能だそう。
Hanson RoboticsのロボットSophiaは、アメリカの人気トーク番組、ジミー・ファロンの『ザ・トゥナイト・ショー』に出演。ジョークを飛ばし、ロボットver.じゃんけんを披露して、笑いもとっていました。
ReMemory

AI技術を用いれば、ヴァーチャルコピーを介して、愛する人の死後もずっと永遠に会話ができるというReMemory。
ヴァーチャルコピーを作りたい!という人は、死ぬ前に7時間ほどのインタビューを受けておきます。さらにいろいろなデータを収集し、ディープラーニング技術でコピーを作成。コピーは家族の誕生日や記念日などにメッセージや動画を送信できます。家族が400インチの巨大スクリーンがあるメモリアルショールームにて、ヴァーチャルコピーと話すことも可能。
Digital Immortality Now

ロシアのトランスヒューマニストAlexey Turchin氏は、今はまだない未来のAIを使えば永遠の命は可能であるという考えの持ち主。いつか来るその未来のため、今のうちに準備しておくのが彼のスタンスです。
彼が運営する企業Digital Immortality Nowを通して、個人のデータを記録、収集するフレームワークを開発。これが「未来の復活」で役に立つ日がくるとのこと。
Turchin氏の「アップローディング・プロトコル」は、個人の記憶をテーマにアートを作成し、周りの人との日々の関わりや会話を動画で記録、さらにDNAサンプルの収集まで行います。
将来的には、スーパーインテリジェンスAIがこれらのデータ、記録を用いて故人を復元。個人の身体が物理的に朽ちたあとも、魂だけは永遠に残るという考えです。
Promobot

リアルな見た目のアンドロイドを作るPromobotは、地球にいる人なら誰でもそっくりなロボを作ることができます。
ロボットは600以上もの表情を用いて、リアルな人間のコミュニケーションを真似しようと努力中。Promobotいわく、すでに35カ国以上でロボットが導入されており、コンシェルジュやコンサルタント、ガイドさんとして活動中とのこと。
永遠の命のイメージとは多少異なりますが、一部のトランスヒューマニストからは、理論的にはPromobotで自分にそっくりのロボを作り、自分の声や性格を学習したAIモデルを使ってコミュニケーションがとれれば、それもありっちゃありというポジティブな意見もあるようです。
CD Project Red

人気ゲーム『サイバーパンク2077』を製作したポーランドのゲーム会社CD Project Redは、Respeecherという企業の技術を使い他界した人気声優の声をゲームで復活させました。
大手映画スタジオも、AIクローンやディープフェイク技術を使い、故人俳優を模倣し映画内で使うなどしています。こういった技術を知らない人にとっては、ある意味、声優や俳優は永遠に生きているということに。
Alcor

SF好きなら1度は見聞きしたことがあるコールドスリープ。低温で人体を凍らせ、何十年何百年と眠らせ、復活させるときには温めるってやつです。これをリアルでやろうとしているのがAlcor。
Alcorいわく、余命に限りがある人の最後の1週間くらいからスタッフを派遣。心臓が停止し、法的に死亡が確定されたその瞬間から仕事開始。脳など重要な内蔵を守るため、死亡から2時間以内に人工的に血液循環システムと呼吸システムを復元。氷水に身体を浸け、血液を取り除き、臓器保存液と入れ替えます。
保存液注入後、身体はアリゾナにあるAlcorの専用施設へ移動(Alcorのサービスを希望する人は、なるべくこの施設の近くで最後を迎えるのが推奨されています)。施設到着後、血流に抗凍結剤を入れ、内蔵にダメージを与えないよう完全に冷凍するのを防ぎます。
その後、身体は-196度の部屋で冷やされ、数百年ほど「待つ」ことが可能。Alcorは、これで死を一時的に止めることができると考えているそう。とはいえ、冷凍保存された身体を蘇生させるのは、現在のところ不可能。