Steam Deck OLEDが出る前だったら良かったのに…!
LenovoがSteam Deckの対抗馬となるハンドヘルドゲーム機「Legion Go」を海外で発売、日本向けにも「近日公開」とされています。米GizmodoのKyle Barr記者がしばらく使ってレビューしてますので、以下どうぞ!
Legion Goには気の毒な感じがしてしまいます。といっても、Lenovo初のハンドヘルドゲーム機であるLegion Goは十分に強力です。初代Steam Deckより大きな画面、より長いバッテリーライフ、そしてより高い性能を兼ね備え、初代Steam DeckにもAsus ROG Allyにもない着脱式コントローラーだってあります。
でも、それは2年前の初代Steam Deckとの比較です。Valveが初代をあらゆる側面で進化させたSteam Deck OLEDを投入したことで、話がまったく変わってしまいました。Steam Deck OLEDの画面はLegion Goよりキレイだし、バッテリーライフも同じくらいあり、しかもはるかに軽いんです。
さらにLegion Goにはちょっとクセがあり、Steam Deck OLEDよりうまく動かせるゲームはあるものの、全部のゲームが最適化されてるわけでもないんです(『サイバーパンク2077』とか)。着脱式コントローラーや「FPSモード」は楽しいんですが、必須というものでもありません。
Lenovoが単にSteam Deckをコピーするんじゃなく、違う何かに挑戦したことは素晴らしいと思います。ただ、結果的にLegion Goは厚く重く、「Go」という名前とは裏腹に、モバイル性がやや犠牲になってしまってるんです。
Legion Goを持ち歩く場合、まずは重さが問題です。サイズという意味でも、Steam DeckやAsus ROG Allyより若干大きいです。大きなカバンなら大丈夫でしょうけど、たいていのリュックにはあまりうまく入らないと思います。良くも悪くも、Legion GoはコントローラーがくっついたゲーミングノートPCと思った方がいいです。
Legion Go
Lenovo初のハンドヘルドゲーム機は、Steam Deckの良きライバルですが、必ずしも狙い通りにはなってません。

これは何?:大きな画面と着脱式コントローラーを備え、ほとんどのゲームをミディアム設定以上でプレイできるハンドヘルドゲーム機
価格:700ドル(約10万6000円)
好きなところ:画面が大きい、柔軟な設定によりほとんどのAAAゲームがミディアム以上でプレイ可能
好きじゃないところ:「Go」という割に大きく重すぎる、コントローラーのボタンやトリガーの感触がイマイチ
Windowsがまどろっこしい

Image: Kyle Barr - Gizmodo US
Legion Goを立ち上げると、まずあらゆる点でWindows 11の制約を受けてることに気付かされます。Legion Goにはソフトウェアキーボードしかないのに、Microsoftアカウントにサインインさせられます。テキストボックスをクリックしてもキーボードが開かないことがときどきあるので、開くためのショートカットを覚えておかなきゃいけません。
Legion GoのUIは独自のLegion Space UIですが、要するにSteamとかEpic Games Storeといった他のランチャーをダウンロードして動かすためのポータルでしかありません。プラットフォーム横断で最近プレイしたゲームが表示されますが、Gamesplanet経由で割安になったタイトルがいくつか見られる以外、大したメリットはないです。
また、Windowsのおかげで、ゲームをやめるときもスリープさせるのが面倒です。ゲームの途中で電源ボタンを押しても、使ってないのにファンが回り続けます。バッテリーをムダに使いたくないので、ゲームを中断するときはいったん全部閉じるという手間が必要になります。
…と、いろいろとWindowsが足かせになってます。Windowsは最大のPCゲーミングプラットフォームですが、モバイルに合ったランチャーがずっと存在してないのは非常に問題で、Microsoft社員自らがそんなランチャーの可能性を示してもいます。
Steam Deckを上回る性能

Image: Kyle Barr - Gizmodo US
Legion Goは、AMD Ryzen Z1 ExtremeプロセッサーとRDNA 3 GPU、16GBのRAMと1TBのSSD搭載です。最近の2Dゲームはもちろん、かなり強力な3Dゲームでも各タイトルに合わせて設定すればちゃんと動かせます。
8.8インチのQHD+ディスプレイはやはり大きいし、リフレッシュレートは144Hzで滑らか。Steam Deck OLEDのシャープさにはかなわないものの、タッチスクリーンは初代Steam Deckよりはるかに反応が良いです。
画質・音質どちらも飛び抜けて良いわけじゃないですが、このサイズを考えれば十分です。でも、FPSゲームにはすごく良いんですが、2Dタイトルだとサイズはそれほど重要じゃなくなります。
144Hzのリフレッシュレートで、『バルダーズ・ゲート3』でミディアム設定では平均30FPSが出ていたし、『Halo: Infinite』みたいなグラフィックスが重いタイトルでも十分なレベルでした。もちろん『Hades』みたいな2Dタイトルは夢のようにプレイできるし、その場合バッテリーもより長持ちします。
ただ『サイバーパンク2077』みたいなゲームでは、プレイできるフレームレートを出すにはリフレッシュレート60Hzに下げる必要があり、その場合でもFPSを30以上にするのは難しかったです。最適化された「Steam Deck」設定のときも、それより低い設定でも同様の結果でした。それでも全体的に、ビジュアルやパフォーマンスという点で、Legion GoはSteam Deckを上回ってます。
また、Legion Goは効率も良くできていて、グラフィックス的に無茶なゲームでも、ファンの音はささやき程度にしかなりません。背面はかなり温かくなりますが、Steam Deckみたいに熱のせいで性能が落ちる感じもないです。Legion Goには熱制御関係のプリセットがいくつかあり、15Wのバランスモードだと、ファンの音とか排熱が気になりすぎることはありませんでした。
外せなくていいからもっと良いボタンを

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Legion Goの形状は、必ずしも手になじみやすくありません。そもそも、結構重いです。最新Steam Deck OLEDが1.47ポンド(669g)、ROG Allyが1.34ポンド(608g)なのに対し、Legion Goは1.88ポンド(853g)あります。
サムスティックは「ホール効果」を使い磁場で指の位置を認識するらしいんですが、Steam Deck OLEDとかXbox、PlayStationのコントローラーに比べると、つまようじみたいに小さいです。
Lenovoいわく、このスティックには耐久性もあるしドリフトもしないとのことなんですが、感触が心許ないです。ボタンも十字キーもフラットすぎるし、バンパーとトリガーボタンの感触には、SONYのDualSenseみたいなタイトさが足りません。
Lenovoが過去のゲーム機(とくにNintendo Switch)に学びながら革新しようとしてることはすごく良いと思います。コントローラーが本体から取り外せるので、キックスタンドモードか外部ディスプレイ接続にすると、重い本体を持つ必要がありません。コントローラーを外していてもレイテンシはほぼありませんでしたが、『バルダーズ・ゲート3』ではうまく認識されないこともありました。
ただ、Nintendo Switchは左右のコントローラーを別のプレイヤーが使うことができますが、Legion Goではそれができません。また、Nintendo Switchには当初から左右のJoy-Conをつなげて、グリップ型コントローラーにするアクセサリーが付いてきてますが、Legion Goにはそれもありません。
なので、Legion Goが「Switch Pro」になるんじゃないかという噂もありましたが、それは当たりませんでした。Legion Goはやや「ハードコア」なゲーマー向けで、コントローラーの1つを「FPSゲームに最適」な形に変身させられることになってます。
僕はこのFPSモードで『Halo: Infinite』をプレイしてみましたが、操作が難しく、スコアがひどすぎてチームメイトにボコボコにされるかと思いました。
ボタンが使えず、操作はすべてトリガー、バンパー、バックボタンでしなきゃいけません。キーボードがないので、ふだん慣れているFPSの操作は、普通のコントローラーよりもっと難しいです。
ちなみにRagnokなど、いくつかの会社でも同じようなデザインのマウスコントローラーを作っているので、こういうデザイン自体がダメというわけじゃありません。
バッテリー持ちは良いけどすごく長くはない
Legion Goのバッテリー容量は49.2Whで、ゼロからフル充電まで約80分です。電源につなぐとスリープからオンになるのがイラっとしたんですが、それはLegion GoというよりWindowsの問題かもしれません。
バッテリーのテストでは、『サイバーパンク2077』みたいに負荷のかかるゲームでは、だいたい2〜3時間プレイできます。『バルダーズ・ゲート3』みたいなものだと、4時間近く持ちます。初代Steam Deckよりベターですが、ROG AllyやSteam Deck OLEDとは同じくらいです。もっとライトなゲームなら、ファンの速度を最小限にすれば7〜8時間持つはずです。
Legion Glassesも試しました

Image: Kyle Barr - Gizmodo US
Legion Goと同時に、Legion Glassesもリリースされました。Legion Glassesは要するに有線外部モニターで、前から見るとサングラスみたいに見えます。すごく柔軟に使えるのはいいんですが、330ドル(約5万円)という価格の割には問題があります。
Legion Glassesのレンズ部分にはそれぞれ1,920×1,080のmicro-OLEDディスプレイが入っていて、リフレッシュレートは60Hz、スピーカーも内蔵されてます。
対応デバイスは、動作確認されてるものはLenovo製品中心ですが、DisplayPort出力できるUSB-Cポートがあれば使えるとされてます。対応するOSはWindows、Android 7以降、macOS 8以降で、iOSに関しては「iPhone 15 Pro Maxで使えた」という記事を見たものの、プレスリリースには記載がありません。
Legion Glassesを装着すると、視野の真ん中に画面が浮かび上がります。1時間くらいすると目が疲れてきます。僕は酔いに強いほうじゃないので、装着状態で頭を左右に動かしていると吐き気に襲われました。また、Legion Glassesは文字を読むのに適しておらず、何か読むには文字を拡大する必要があるし、画面の端の方はどんな文字でもぼやけて見えます。
Legion GoにLegion GlassesをつないでのFPSゲームは、ちゃんとプレイできました。目の前に巨大スクリーンができる感じで、視野がずっと広がります。とはいえ、何時間もこれでプレイできるとは思いません。
Legion Glassesのアイデア自体は良いと思います。でも、Legion Goだけじゃなくスマホとかいろんなデバイスでも試してみましたが、良質な低価格ゲーミングモニターの倍以上の値段の割には、良い使い道が見つけられませんでした。
お値段は妥当かな
1TBのSteam Deck OLEDが650ドル(約9万8000円)なのに対し、Legion Goは700ドル(約10万6000円)というのは、まあ妥当なお値段かと思います。Legion Goはすでに販売開始していて、Steam Deck OLEDと違って複数バージョンもないです。
でも、現時点では、Legion Goはまだ実験段階にあるような、もっとブラッシュアップが必要な感じです。Nintendo Switchみたいな着脱式コントローラーは良いと思いますが、FPSモードは(うまく使えるようになったとしても)ニッチすぎると思います。コントローラーがもっとエルゴノミックに、しっくり手になじむようにデザイン修正されればとも思います。
Legion Goは、ゲーミングノートPCの低性能な代替としては使えるかもしれません。でも、自分としては、これを持って地下鉄とか飛行機とか、手近に机やテーブルがない場所に行こうとは思わないのが正直なところです。